表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
4/4

第4話:崩壊

 階段の踊り場で一息つく三人。

「おそろしい代物だな……」

 まだ耳をふさぎながら晶がつぶやく。

「商品化したら面白そうですね」

 あごに手を当てながら秋彦がつぶやく。

「あと二個あるけど?」

 両手に持った西村が微笑む。

「捨てろ!」

「まあまあ兄さん」

 なだめる秋彦。

「それよりも兄さん、そろそろ二階です」

「そうだな」

 耳から手を離した晶は、膝をついて床に耳をつけた。西村が不思議そうに覗き込む。

「何してるの?」

「しっ」

 秋彦が口に人差し指を当てる。

「兄さんはああやって、床に落ちた小銭を探しているのです」

「そうなんだ、大変なんだね」

「デタラメをいうなバカ。納得するなボケ。黙って集中させろ」

 しばらく後、床に突っ伏していた晶が立ち上がり、服のほこりを払った。

「大分先の方で三人分の足音がするな。多分そこだろう」

 西村が感心したように晶の方を見た。

「すごいね、小銭からそういうことが分かるんだ」

「わかんねーよ。大体なんだよ小銭って」

「主に10円硬貨や100円硬貨のような物を指します」

「お前ら俺を馬鹿にしてるだろ」

「とんでもない。私はともかく西村君に悪意はないでしょう」

 晶が秋彦を睨む。

「じゃあお前には悪意があるのか」

「まあまあ、兄さん。お詫びに援護しますから」

 そう言って秋彦は懐から拳銃を取り出した。西村が少し驚いた表情で秋彦を見る。

「どうしたの、それ。本物?」

「ええ、あなたが向けられていた奴ですよ」

「使った事あるの?」

「もちろんです。こう見えてもゴルゴ13の生まれ変わりと言われた事が」

「まだ生きてるじゃねーか!! 大体それ漫画だろ!」

 我慢しきれなかった晶の声が校舎内に響く。

「しっ」

 秋彦が口に人差し指を当てる。

「静かにしないと向こうに気付かれます」

「誰のせいだと思ってるんだ!」

「小銭?」

「お前は小銭から離れろ!」

 軽いコミュニケーションを済ませた三人は、階段から廊下を覗いた。

「兄さん、足音がしたのはどのあたりですか?」

「距離から考えて、ここから三つ目の教室だな」

 三人は足音を忍ばせて廊下を歩く。目的の教室まで後少しの所で晶が振り返った。

「ちょっと様子を見てくる、ここで待ってろ」

 そういうと晶は教室のドアに近づき、身体を寄せた。

「大丈夫かな、晶」

「兄さんなら大丈夫でしょう」

「何で?」

「兄さんはこういう時のために改造手術を受けているのです。小銭に執着するのも費用が大変な事に関係がありまして」

「ふーん」

 そこへ晶が戻ってきた。

「中には黒板の近くに一人、教室の後ろの方に二人。それと後ろの二人の足元に誰か倒れてたぞ」

「その寝ているのが人質でしょうか」

「まあ、俺たちとおなじ制服着てたしな。間違いないだろ」

 西村が晶をじろじろと眺める。

「変身するの?」

「はあ? 何が?」

「やっぱり小銭?」

「お前は何を言っているんだ」

 秋彦が拳銃を握りなおした。

「それじゃ、私が黒板の方を担当します。兄さんは後ろの二人をお願いします」

「ん、ああ分かった」

「僕は?」

「ここで待ってろ」

 二人が教室の後ろのドアに張り付く。

「それじゃ、1、2の3で行くぞ」

「分かりました」

 晶が教室のドアに手をかける。

「1、2の……さんっ!!」

 ドアが開くと同時に、晶は目にもとまらぬ速さで窓際の二人に突進した。

 一人は腹部に一発食らって宙を舞い、もう一人は首に飛び蹴りを決められて壁まで吹き飛ぶ。最後の一人は、こめかみに飛んできた銃のグリップが命中してゆっくりと倒れた。

「まあ、こんなもんか」

「そうですね」

「あれ、もう終わったの?」

 そういいつつ西村が入ってきた。

「ああ。そうだ西村、こいつが矢野か?」

 そう言って倒れている人を指差す晶。

「あ、うんそうだよ」

 西村は倒れている矢野に近寄り肩をゆすった。

「ほらほら、おきておきて」

「うーん……あ、おはよう西村君、今日は入学式だね」

 目をこすりながら体を起こし、伸びをする矢野。

「入学式、今日はもうないみたいだよ」

「えっ、何で?」

「……何だこの大ボケ小ボケは」

 二人の様子を見ていた晶が呟いた。

「それよりも早く逃げませんか。この校舎には爆弾が仕掛けられているそうですし」

 周囲を見ながら秋彦が言う。

「そうだな……おいおまえら、逃げるぞ」

「そうだね。行くよ矢野」

 廊下に向かって歩き出す四人。そのとき矢野は、床に落ちていたリモコンのようなものを見つけた。

「あれ? テレビのリモコン?」

 床から拾い上げて手にとる矢野。周りをきょろきょろと見回して、黒板の横にテレビを発見。

「えい」

 リモコンのボタンを押した。

 上の階で突然爆発音が響き、振動が晶たちをよろめかせた。

「なんだ!?」

 突然の大音響に驚く晶。

「爆弾の爆発ですね」

 あわてない秋彦。

「何でいきなり……」

「テレビがつかないけど、これ壊れてるのかな?」

 リモコンを押しまくる矢野。あちこちで炸裂する爆弾。揺れまくる校舎。

「ななな、なんだー!?」

 叫ぶ晶。

 矢野は西村を呼び止めてリモコンを見せてみた。

「西村君、このリモコン壊れてない?」

「これ? ちょっとわかんないなあ。秋彦、これ見てくれる?」

 西村は矢野から受け取ったリモコンを秋彦に渡した。

「ん? これはテレビのリモコンではないようですね」

 リモコンを見ながら秋彦が言う。西村は不思議そうに聞き返した。

「そうなんだ。それじゃこれ何だろう?」

「おそらく爆弾の起爆装置でしょう」

「ふーん。それじゃテレビが付くわけないよ。ばかだなあ、矢野は」

「えへへ」

「えへへじゃねえだろ大馬鹿野郎ー!!」

 叫ぶ晶。

「さっきから何してんのかと思ったら……」

 頭をかきむしる晶。そこへさらに爆発音が響き、天井から瓦礫が降ってきた。

「秋彦! 爆発を止めろ!」

「無理です」

 あっさりと言う秋彦。

「ともかく、早くここから逃げるべきですが……この強盗の方々はどうしますか?」

 秋彦が指差す方を見ると、三人の強盗はまだ床に倒れていた。

「……見捨てるわけにも行かないしなあ。俺が二人抱えるから、もう一人は秋彦頼む」

「分かりました」

 晶は二人、秋彦は一人を肩に担ぐ。晶はリモコンを眺めている西村と矢野に声をかけた。

「おい、おまえらさっさと逃げるぞ」

「え? 何で?」

 真面目に聞き返す矢野。ちょっと固まる晶。

「……西村」

「何?」

「矢野はおまえが責任を持ってつれて来い。いいな」

「うん、わかった」

 西村は力強くうなずいた。

「それじゃ行くぞ!」

 晶を先頭に駆け出す四人。爆発とともにゆれる校舎。瓦礫が落ち、壁が崩れる中を走り抜ける。

 階段に差し掛かるところで晶が振り向いた。

「全員いるか!」

「矢野がトイレに行ったけど」

「何だとー!!」

 叫ぶ晶。

「アホかあいつは! 西村! おまえちゃんとつれてこいよ!」

「いや、でも急にトイレ行くって駆け出していって……」

「くそ! 秋彦! トイレはどこだ!」

「あそこです」

 そう言って秋彦が指差した先が、轟音とともに吹き飛んだ。

「………」

「………」

「どうすんだよ……」

 呆然と晶。

「うーん。多分大丈夫だと思うよ」

 普通に西村。

「はあ?」

「いや、説明は後でするから、早くここから出た方がよくない?」

「そうですね。このままだと校舎の中に生き埋めです」

 落ちてくる瓦礫がだんだん大きくなっていた。

「……意味はわからんが仕方ない、行くぞ」

 再び駆け出す三人。階段を駆け下りて1階へ。もう少しで出口という所で廊下が瓦礫の山で埋まり通れなくなっていた。

「うわー。どうしよう?」

 瓦礫を見上げる西村。

「こうする!!」

 大人二人を抱えたまま回し蹴りで廊下の横の壁を破壊する晶。

「それでは出来るだけ校舎から離れましょう」

 出来た穴からさっさと出る秋彦。校舎から出て走りつづける三人。裏庭のあたりでようやく一息ついた。

「校舎が……」

 晶がつぶやく。

 晶たちが今日から通うはずの場所は、見る見るうちに崩れていき瓦礫の山になっていった。

「うわー。どうするんだろ」

 西村がつぶやく。

「これは……矢野君はちょっと絶望的ですね」

 肩にかついだ強盗を地面におろしながら秋彦が言う。

「そうとも限らないよ」

 妙に自信ありげに言う西村。

「……そういえば、さっきもそんな事言ってたな」

 肩にかついだ強盗を放り投げながら晶が言う。

「あいつはどんな危険な時も、命にかかわる怪我をしたことないんだ」

「というと?」

「この間誘拐された時も、乗ってた車がダンプと正面衝突してね」

「……ほう」

「車はめちゃくちゃ、犯人二人は即死、僕は全治一ヶ月だったけど、あいつはかすり傷だけ」

「……それはまたものすごい悪運の強さだな」

「そうそう、だからさ”何してんのー”とか言いながら出てくるんじゃないかな」

「何してんのー」

 その声に全員が振り向くと、そこには傷一つ無い矢野がいた。驚いた晶が尋ねる。

「おまえ……どこに居たんだ」

「え? 体育館のトイレだけど」

「そういえば、途中に体育館への渡り廊下があったような」

 特に動じてない秋彦。

「なんか心配して損した気分だ」

 ぼやく晶。そのとき矢野が何か持っていることに気付いた。

「何持ってるんだ?」

「ああこれ? トイレで見つけたんだ」

 そう言って晶に渡す矢野。秋彦と西村も何事かと近づいてきた。

「筒と時計? 何だこりゃ」

「時限式の爆弾ですね」

 さらりと言う秋彦。

「時限式……爆弾……?」

 くり返す晶。

「え? 時計じゃないの? いろいろ押しても何も鳴らないから変だと思ったんだ」

「いろいろ……押した……?」

 くり返す晶。秋彦が晶の手の中のそれを覗き込む。

「残り15秒といったところですか」

「15秒……どうするよ、おい……」

「それはもちろん、兄さんの強肩に期待します」

「……投げろってか」

「ここに置いて走って逃げるよりは安全かと」

 爆弾を見てため息をつく晶。それをちらりと見たあと、晶が手に力をこめる。

「うおりゃああああ!」

 全力で晶の手から離れた爆弾は、あっという間に離れて小さくなっていった。

「伏せろ!!」

 次の瞬間、空で爆発が起こり、大音響と閃光があたりと包む。地面に横たわった晶達を爆風と衝撃が襲うが、十分な距離があったおかげでたいした事は無かった。

「さすがですね、兄さん」

「はー……やれやれだ」

 晶はうつ伏せから仰向けになって寝転んだ。起き上がった矢野がまわりを見わたす。

「警察の制服着た人がいっぱいこっちに向かってきてるけど、何?」

 晶がうんざりした顔で言う。

「面倒くさいことになりそうだな」

 たくさんの警察官、多くのマスコミ、崩壊した校舎。

 ちょっとした災難に、晶は空を見上げてため息をついた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ