第2話:侵入
つつがなく登校するはずだった学校の敷地に不法侵入してみた晶と秋彦。
校内の土を踏みしめた二人は、まず自分達より先に侵入した生徒の姿を探した。
「さっきの奴はどこだ?」
「あそこで手を上げているのがそうじゃないですか?」
秋彦が指差す先には、校舎の角のあたりで黒い覆面をして銃を構えた男の前で、両手を上げているさっきの制服が見えた。
「何だありゃ」
「絵に書いたようなホールドアップですね」
「とりあえず助けてみるか」
「頑張ってください」
手を振る秋彦を残して、晶は黒覆面の男の視界に入らないよう移動、すぐ後ろの木陰に滑り込んだ。
黒覆面と制服の声が聞こえてくる。
「何だ、お前は?」
「あー、その、えーと」
「……面倒だな。とりあえず死んどけ」
黒覆面が銃の引き鉄にかけた指に力を入れる。次の瞬間、黒覆面は晶の回し蹴りをわき腹に喰らい、くの字の格好で真横に飛んでいった。2メートルほど飛んだ黒覆面は地面で2、3回バウンド、おかしな格好で横たわったままぴくりとも動かない。
秋彦は黒覆面に近づいて脈を取った。
「まだ息がありますね。手加減したんですか?」
「当たり前だバカ。殺してどうする」
秋彦は黒覆面の手から拳銃を取った。
「まだ使えそうですね。もらっていいですか?」
「ふざけんなバカ。危ないもん拾うな」
その様子を見ていた制服は、適当な事を言っている二人に近づいてきた。
「あー、どうもありがとう」
晶と秋彦は制服の方に向き直る。制服の男は身長165cm位で、少し癖のある髪によく動く目が印象的だった。
「そうだお前だ。何やってんだ」
晶が制服の顔を見上げて指差した。
「何って、友達を助けに」
秋彦があごに手を当てて訊ねる。
「友達ですか」
「そう、友達」
「というと、人質になっているという生徒は」
「僕の友達」
「友人? では今朝は一緒ではなかったのですか?」
「うん、今日は朝イチに一緒に学校にきてたんだけど、急にあの強盗団が入ってきてね。僕は逃げたんだけど矢野は、あいつ矢野っていうんだけど強盗団に"先生ー"とかいって走りよってって」
「………」
「それであっという間に銃を突きつけられてた。もう大変だったよ」
晶が自分の額に指を当てる。
「……その強盗団はスーツでも着てたのか」
「いや、なんか黒っぽい服で覆面してた」
「それを教師と間違えただと!?」
「かなりの剛の者ですね」
冷静に批評する秋彦。
「それでね、友達を見捨てたまま逃げちゃうのは何か嫌だから助けにきたんだけど」
「無茶だな」
晶がばっさりと切り捨てる。
「素晴らしい友情じゃないですか兄さん」
「考えて行動しろと言ってるんだ」
「ところで君達は何でここに?」
制服がたずねる。
「先に不法侵入している人を見て、負けてられるかと侵入、ですよね兄さん」
「ああそうだよ、どうせ俺も考えてねーよ」
腕組みしてふてくされた晶が、ふと何かを思い出したように制服の方を向いた。
「そういえばお前は誰なんだ」
「僕? 僕はこの学校の新入生で西村っていうんだ。よろしくね」
「私達もこの学校の新入生なんですよ。奇遇ですね」
「今日入学式なのに奇遇もあるか。生徒か新入生しかいないだろ」
晶を無視して秋彦がしゃべり続ける。
「そうそう、自己紹介が遅れまして。私は佐々木秋彦と言います。こちらのかわいいのは兄の佐々木晶です」
「かわいいとか言うな」
二人を見ていた西村が両手を叩いた。
「そうだ、矢野を助けるの手伝ってくれない?」
「はあ?」
「いいですね。高校の思い出作りによさそうです」
「だから考えろって言ってるだろ」
「矢野がつかまっているのはこっちだよ」
「いいか、状況をよくみて判断しろって言ってるんだ」
「腕がなりますね兄さん」
「お前らはアレか、人の話聞けない病か」
こうして三人はこっそりと校舎に忍び込んでいった。




