第7話 違和感
見知らぬ青年が急に勝負を挑んできたことで、金色の男は一瞬苛立ちを見せたかに見えたが、自分の餌になる人間が増えたと思い、また不敵な笑みを浮かべた。
「おぉ、威勢がいいのは嫌いじゃぁない。でも、この坊主が終わってからな」
「いや、こいつはもう負けだ。すぐに俺と変われ」
そう言うとハンはライの肩に手を置き、下がるよう促した。ライは後ろにいる人間が誰だか分らなかった。振り返り、黒髪で灰色の瞳に首筋に“*”の形をした痣をした青年を見るとライは驚いた表情をするとともに、瞳に涙を浮かべた。ハンは、自分たちが知り合いであるとばれたらまずい、とアイコンタクトでライに伝えるとライのチップを金色の男に放り投げた。
「ルールは今さっきのでいいよね?」
「あぁ、いいぜ。俺が飛ばし、順番に裏か表か判断する。3回予想を先に当てたほうが勝ち。お前が先行でいいぜ。これは先行が圧倒的に有利なゲームだが、俺は優しいから毎回先行を譲っているのに勝っちまうんだけどなぁ!準備はいいか、負けた時は潔くチップを置いて行けよな」
男は、不気味な笑みを浮かべながら、腰に付けている大量のチップをちらつかせた。
「俺が勝ったら、そのチップ全部ちょうだいよ」
ハンが発した言葉で、周りの観衆がどよめいた。10年以上ともにいるライですらその発言には驚きを隠せなかった。
「っだーはっは!本当に威勢のいいガキだな。いいぜ。その代わり負けた時はどうなるか楽しみにしとけよ」
ハンは男が自分に向けて話していることは気にも留めずに集中し、考えを巡らせ始めていた。
――この方法で運だけでここまで勝てるのはおかしい。何か仕掛けがあるんだ。この勝負は根本的に何かがおかしい、それはなんだ。何か引っ掛かる。
この勝負の不明瞭なところが引っ掛かったままハンは勝負に向かった。ライはこの金色の男が何かイカサマのようなことをしていることは、何となく気付いていた。そのカラクリがハンに分かるのかと心配そうな面持ちで、勝負の開始を待っていた。