第6話 幼馴染
開場に入ると、大きな歓声や指笛など非常に活気に満ち溢れていた。しかしその一方、歓声に紛れて泣き崩れ、叫喚する人の声も聞こえた。ハンはその光景にたじろぎながらも、足を進めた。
ハンが歩き進めていると、身に覚えのある背格好の男が目に入った。そこでは、コインの裏表で勝負を決める『表裏一体ゲーム』という賭けが行われていた。ハンは、その男に近づくと再度確認をした。
――190㎝以上ある体格に、濡羽色の瞳。間違いない、ライだ。でもライがなんでここに?
ライという名の男は、最後の勝負をしていた。相手は如何にも賭けに強そうな見た目をした全身に金色のネックレスや時計を付けた男だった。その男は、男に勝負で負けた大量の人間のチップを腰にぶら下げながら、ライを不敵な笑みをしながら見つめていた。
「坊主、もう諦めろ。お前は既に俺様に5回も負けている。俺がこれほど易しい大人じゃなきゃ、今頃人生のどん底だぞ。」
金色の男は、目の前で呆然としているライに向かってチップを寄越せと言わんばかりに、腕を出していた。
――もうあの状態のライでは絶対に勝てない。賭事は、如何に冷静でいられるかが重要なんだ。
ハンにとってライは最近めっきり会うことはなくなっていたが、唯一の幼馴染であり、唯一何でも話すことができる友達であった。お互いに両親がいないことで、同じ境遇であり仲良くなることができた。その友達が今、目の前で最悪な状況に陥っていることをハンには見過ごすことができなかった。
「おじさん、俺と勝負しようよ」