第4話 廃城
ハンが家を出てからしばらく経った。現在の気温は12度。防寒着を着ていれば寒さを感じない程度だ。顔にかかる冷たい風が、ハンには心地が良かった。
道中考えていたことは、もう誰1人として失いたくはない。ただそれだけであった。
「ここか。待てよ、人が全く見当たらない」
目の前には寂れた門に、無理矢理こじ開けられたであろう南京錠がぶら下がっていた。
門は、ひと1人通れるあろう隙間だけ開けたまま放置されていた。門が取り付けられている外壁には表札が掛けられていた。薄汚くよごれており、読むことができないほどに黒ずんでいた。長く伸びた通り道は、先にある大きな廃れた城をより大きく感じさせた。
城から複数の男たちが、絶望に陥れられたような顔をして、門の出口に向かって歩いてきてぼそぼそと何か呟いていた。
「俺は、もう終わりだ…」
「どうしてこうなっちまったんだ…」
「もうあの生活には戻ることができない」
3人の男達は揃って同じような状況に陥っていた。それは、紛れもなく目の前に聳え立つ城が原因であることは明らかであった。堂々と構えていながらも何か異様な雰囲気を漂わせているその城では、賭事が行われていたのである。予想通りではあったが、賭事1つで絶望をしている大人を目の当たりにした時、ハンは武者震いをしていた。
――必ず大金を得て、無事家に戻りルキの病を治す。
ハンは心の中でそう誓い、聳え立つ大きな城へと足を運んでいった。