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第3話 旅立ち
「ルキ、俺は明日、朝から出かけるから留守番の方、頼むぞ」
ルキは声を出さず、頷いた。
今賑わっている祭りから隠れて、賑わっている場所があることをハンは知っていた。
都市ミラルから外れた、以前は人が住んでいたが、今は人が住んでいない荒廃した街があった。しかしどうしてか、時折大人が多く集まっているという情報を聞くのである。
ハンにはそこで何が行われているか確信していた。
1ヶ月に1回のみ国に隠れて行われる定期的な集まり。
向かう先は、今では人が行き来せず整備がされていない街。
そこに向かっている者は、煮え滾るような野心に溢れる顔をした大人たちや今から楽しいところに行くかのように高笑いをする大人たち。
明日は長い1日になるだろうと思い、ハンはいつもよりも早めに眠りについた。
ルキは声には出さなかったものの、ハンが何をしようとしているのかを察して、心配で眠りにつけなかった。
「いってきます」
まだ眠りについている自分の妹の前で決意を固め、扉を開けた。
この先に待っている未来が、過酷で多くのものを失ってしまうことになることとも知らずに。