第2話 決意
「ハン兄、おかえり」
布団に横たわっていた黒髪で灰色の瞳の少女は、起きあがった。
ハンとルキは、物心つく前から両親がおらず、顔も名前も知らない。唯一の肉親であった祖母に2人は育てられた。その祖母も数年前に身体の衰弱によって亡くなってから、2人は助け合って生活してきたのである。
ところが、2週間前にルキの体調が豹変したのである。
~2週間前~
「ハン兄、洗濯物干してくるね」
「外は暑いからな、気をつけろよ」
ルキは洗濯物を大きな籠に入れ、戸を開けて外に出ていった。
家の中は、鍋の煮立った音、薪に火が付き燃えている音が響き渡っていた。
ドタン…!
聞きなれない音が外から聞こえてきた。籠を落とした音だろうか。聞きなれない音ではあったが、ハンは昔どこかで同じような音を聞いたことがあったのだ。
――人が倒れた時の音…ルキ…!
ルキは、現在歩くことすらままならないに状態になってしまっていた。
「ルキ、あともう少ししたら体良くなるからな。もう少しの辛抱だ」
ルキの病気を治すためには、医療都市カーレに行かなければならない。都市カーレでは、最先端の医療技術だけではなく、多くの医師が在籍している。
しかし、カーレに行くまでの交通費や手術費など、多くの費用がかかる。もちろん、ハン達にはそれを払えるほどの金は持っていない。
そこで、ハンは思いついたのである。
――今から大金を手に入れるには、あの場所に行くしかない。