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眠れない夜 見えない心理(ココロ)

19:00


あれから夕方の6時頃まで彼女は眠っていた。


「ごめん…ずっと寝てたね、私」


- 構わないさ、初めから寝ることを想定していたからね


「ナオさん、独りにしちゃったね…」


- うん?高い部屋に入らなくて良かったろ?


そういうと彼女は少しはにかんだ。


- お風呂入りたかったら、入っていいよ。ホント普通のお風呂だけどね


「ううん、いい。普通のお風呂だったら、家に帰ってから入るよ」


彼女は笑いながら言った。二人で帰り支度を始めた。彼女はまた僕にお尻を向けて着替え始めた。今度はショーツがパステルブルーだと驚いたのだろうけど、同じオレンジだった。


デニムのショートパンツを脱ぐと、ジーンズに片足ずつ突っ込んですっとジーンズを上げた。


おかしなことに気が付いた。彼女は身長が164cmだと聞いていたが、素肌の手足の状態で全身を見るとスタイルが良いというよりは小柄に見えた。


…誰かに身長のことを言われたのかも知れないな。


一緒に部屋を出て、ホテルも出て、駅へと向かう道に出た。彼女の方から腕を組んできた。


- 何で腕組んでくれるの?


「うん?ご褒美だよ?優しいナオさんへのご・ほ・う・び!」


- 別のものが良かったかな…


「…本当にスケベなんだから…それしかないの?」


- 何も言ってないだろ?


次はブラとショーツの色を合わせて欲しいと言いかけたが、心地よさげなの彼女の気持ちを壊したくはなかったので黙っておいた。


帰る道の両側で飲食店が賑わっていた。調度お腹も空いていた。


でも…


…勇気を持って彼女に聞いてみた。


- ご飯でも食べて帰るか?そこの中華料理屋、美味しいんだよ


「うん、ありがとう。でも家でご飯用意してくれてるから…」


- そっか。じゃあ、またの機会に


…彼女は何も返してこなかった。恐らくは僕が気付いたことを知っていたのだろう



23:00


彼女の方からLINE通話が掛かってきた。


- 普通のお風呂入った?


「スケベって死ぬまで治らないんだね?入ったよ」


サービスでオレンジのショーツを見せつけたリンはスケベではないのか、と言いたかったが、怒らせるだけなので止めておいた。


「ご飯食べた?」


- うん?ああ、一人だったから最寄り駅のラーメン屋で餃子とチャーハン食べたよ


「あ、ごめん…」


- 何でリンが謝るの?


「何も聞かないんだね…」


- リンが話してくれるのを待ってる


「うん…」


- リンが話したい時でいいよ


「今でも?」


- もちろん、今でも


「昔付き合ってた人にさ…高校の時…」


- 三角座りしてた時か


「うん…初めて出来た彼氏だったんだけどね。

 小柄な子がタイプなんだって言われてさ…

 初めてだったのに…それはないよねって感じでさ…」


「で、その彼のこと凄く好きでさ。ダイエットとか凄く頑張ったんだけど、

 その時には今の身長あったからさぁ…身長なんでどうにもなんないじゃん…」


「その頃、読んでたファッション雑誌には170cmのモデルさんは40kg台が普通、とか書いてあったの…もうどうしようもないな、と思った…」


…しまった、と思った。


この話はそばにいる時に聞くべきだと思った。でも彼女は話を止めてはくれなかった。


「で、せめて細くなろうと思ってたら…私肩幅あるでしょ?」


否定する隙も与えずに彼女は続けた。


「調度、この手足の細さだとさ、小柄に見えることに気が付いたんだ…近くに来たらわかっちゃうけどね…」


「それから、調子に乗ってダイエット続けてたら、ご飯が食べられなくなってたんだ…」



小柄に見えることに気が付いたはいいが…普段は誰にも見せられない。それで長袖、ジーンズか…



- うん


「私のカラダ、気持悪いでしょ?」


- 俺がうん、って応えるとでも思ってる?


「…」


- 病院には?


「行ってない…行きたくない…」


- 今、何が食べられる?


「日によって違うよ。ご飯とパンは食べられる時と食べられない時がある。お菓子もそう。

 サラダチキンなら食べられる。あれは太らないから…」



彼女はいつのまにか泣きだしていた。僕に何が出来るのだろうか?



- わかった。ちょっと調べるから。食べられるものを食べよう


- 悪い…時間をくれ


「…うん、ごめんね、ありがとう」


- 眠れそうか?


「わからない…ごめんね…」


- リンは何も悪くないよ


「うん…」


- 12時になったら、話すのは止めよう。いつも通り寝落ちしよう


「わかった…ありがとう…」



聞きたいことは山ほどあった…現在いまの体重、生理がちゃんと来ているのか、嘔吐しているのか?でも怖くて聞く勇気がなかった。


そのあとは、全く関係ない話をした。主に心理学の話だった。カウンセラーになりたかったこと。だけと希望する学部に入れなかったせいで今は工学部にいること。


12時になったら、彼女は約束通り、何もしゃべらなくなった。注意深く寝息を聞いていたが、多分彼女は起きていた。


2時間彼女の吐息を聞いた後、その夜はLINEの回線を切った。


…カウンセラーね…またあいつに頼るのか。





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