第18話
合宿でしばらく投稿できず、すみませんでした。
今月中は毎日は無理そうですが、暇を見つけて投稿しますね。
来月からはまた連日で投稿する予定です。
「おい、いつまで寝ておる?」
さわは、気づくとあの白い空間に寝そべっていた。そして目の前には予想通り、美しい人がいる。リードはこの人が、女神だといっていた。
「お前、何か聞きたいことがあったのではないのか? 我も暇ではないゆえ、早々に言え」
確かに昨夜、眠る前に祈った。会える予感もしていた。
それでも美しい人を前に、さわは緊張していた。
「口が利けぬのか? 声の属性を捻じ曲げはしたが、奪ってはいないはずだが?」
女神が顔に手を当てて、はてと不思議そうに話す言葉が、さわを一瞬のうちに覚醒させた。
「あなたが、私の声を変えたの?」
目を見開いたまま、ぽつりとつぶやいたさわに、女神は答える。
「あぁ。あのままでは『世界が救えぬ』ゆえな」
「何で、声を!!」
女神の衣をつかんでさわは叫んだ。
「前のままでは不都合ゆえ」
女神は、さわの手を汚らしいもののように振り払ってそう言った。
「不都合って……私の声が?」
「そうだ。お前の声は世界の浄化には向かぬゆえ、逆の作用を付加させた」
「浄化?」
「あぁ、むすめが救いを望んだ。むすめの血を引く子供たちを、我は救わねばならん」
女神は恍惚とした表情でそういった。まぶしそうな顔で空を仰ぎ見たようにも見えた。
「むすめの血?」
しかしそんな女神の様子にさわは気づかない。女神が話す言葉ひとつひとつを追うのに精一杯だ。
「そなたは無知よな」
そんなさわの問いに、女神は嘲笑を浮かべた。
「して、なんのようだ? お前は声が出ない理由が聞きたかったのか」
さわとの問答にも飽きてきたのか、めんどくさそうに言葉を投げた。
「どうしたら、自分の世界に帰れますか?」
さわは問う。
「世界を救ったら」
女神は答える。
「声は、戻るのですか?」
さわは再び問う。
「あぁ。世界が浄化されれば戻してもよい」
女神は答える。
女神の言葉はまるで抽象化されており、女神の答えは答えであって、さわの望むものではなかった。
意を決して、さわは問う。
「世界を救うとは、いったいなんなのですか? 浄化とは一体なんですか? 私はなにをすればよいのですか?」
さわは問う。
「そなたは、歌えばよい。サラネストのために歓喜の歌を。ラクテイのために絶望の歌を」
「歌う? この、醜い声で……?」
「そうだ。むすめが望んだ世界が、もうすぐ実現する」
女神は笑った。
笑って、笑って、狂ったように笑っていた。
ベガやリードのいる世界で、神としてあがめられる女神はそのとき、まるで「人間」のようだった。
神々しさもない、ただ高らかに笑う女神が、さわは怖かった。
怖くて怖くて、ぎゅっと目を閉じた。
そして自分自身が、あの白い空間から去ったのを感じた。