第1話 誤字報告するZEEEE!
やあ! こんにちは!
わたしは、パンツ。このお話の語り部さ!
語り部パンツ。良い名前だろう?
実はわたしは語り部の他に副業があるんだ。大型トラックで人を轢き殺してやるのさ!
万が一死に損なっていたら銃で撃ち殺すんだよ! BANG!
ふっふっふ。わたしの前にはみんなイチコロさ。さっくりと異世界に送ってやるんだよ!
とまあ、わたしのことは、まあいいや。
今日はね、エライヒトが「校正王になる!」って意気込んでいるから、それについて語るね!
校正といえば、まず、誤字脱字のチェックだね!
タイプミスや変換ミスは結構多いんだ。
『患者』が『間者』になったり『行った』が『言った』になっているとかだね。
文脈で明らかに修正できるものは問答無用で直していくぜ! ってエライ人が言っていたよ。
紛らわしいのが『魔導師』『魔導士』『魔道師』『魔道士』みたいなのだね。
これは最初に出てきたものが正しいことにするらしい。
魔導師と魔道士は違うものとして存在している場合は、早めにその区別を出してね! ワケわかんなくなるから!
その説明のところは気を付けて変換するように!
じゃないと、書いている本人も後で何が何だかわからなくなっちゃうよ!
次に修正対象になるのは表記ゆれだね。
「~できる」「~出来る」
あたりが、一番メジャーなところかな。
あ、この「あたり」「ところ」もだね!
平仮名表記と漢字表記が混在していると見苦しい、と感じる人がいるよ!
まあ、遣い分けもあるんだけどね。
可能の意味の「できる」は平仮名。
完成の意味の「出来る」は漢字。とかね。
貰う・頂くあたりも漢字と平仮名の表記が入り混じりやすいから、要チェックリストに入っているよ!
三番目は、「いらん世話だ!」と言う人もいる言葉の誤用や間違って覚えてしまっている言葉の修正だよ。
独壇場は間違いで、独擅場が正しい、とかだね。
他には『荒らげる』とか『トライアルアンドエラー』なんかだね。
『荒げる』『トライアンドエラー』なんて書いていたらダメだよ!
ねえねえ、いま、『UZEEEEE!』って思ったでしょう!
このあたりは、言葉を大切にしないヒトほど「伝われば良い」なんて言うんだけど、そういう人ほど本気で伝わらない「自分独自の意味」で使うんだ。困ったものだね!
言葉ってのは人に伝えるために生まれて、発展してきたものなんだ。
小説っていうのは、人に読んでもらうために書くんだ。
だから「自分はわかる」じゃなくて、多くの人がわかる、ことを心掛けなければならない。
シクシク泣いているシーンで号泣なのは、もはやお約束としてもだよ。
喉の奥に物を詰まらせて吐きそうになっているのを嗚咽とか、それは新しい表現じゃないよ。教養のないバカっていうんだ。
「おぇーっ」ってやってるから嗚咽とか小学校低学年じゃないんだからさ。
困るのは、喧々諤々だね。
正しくは喧々囂々、または侃々諤々だ。意味の違いはわかるかい?
喧々囂々は喧しく言い合っている様で、侃々諤々は議論が活発になされている様だ。
違いを簡単にいうと、議論が進まないのが喧々囂々で、議論がどんどん進むのが侃々諤々だ。
それを混ぜられると、議論が進んでいないのか進んでいるのか判然としない。
物語の流れとして議論が進んでいるかは大きな問題ではない、というならば、別の言葉を用いるべきだ。
『大音声が飛び交っていた』とかにしたほうが直接的でわかりやすいだろう。
ちなみに、大音声の読みは「だいおんじょう」だ。
そして、最後は正真正銘の余計なお世話、言葉の選び方が美しくないから直しちゃる! ってやつだ。
これは受け入れてくれないことも多い。さすがにね、そこまで口出すなと。
どんなのかっていうと、例えばだ。
『俺は拾った剣で突きを放ち、剣をゴブリンに突き刺した』
とかって、「なんか表現がくどくね?」って思うよね? え? 思わない? うるさいな。とにかくこういうのが典型的なやつだよ。
いやね、マジで、こういう文章を書く人って、すごく多いんだよ!
後ろの【剣を】は要らないし、突きを放ったなら、突き刺すのは当たり前すぎるから、どちらかが不要だ。
こういうのは、文字や単語の修正にとどまらず、その文章をまるごと書き直してしまうこともあるんだってさ。




