22:決意は固く
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夢と希望を詰めた宝石
新たな戦いが始まる
「うむ。アクロンはムク山という場所で採れるのだが最近魔物に荒らされているらしくてな、採れなくなってきているわけだよ。それを退治してくれたら考えてやろう」
要は邪魔者排除を頼まれたキョウ。戦いは出来るもののそこまで強い敵と戦える自信は無い。
それでもキョウは
「わかりました……僕にやらせてください」
と引き受けた。
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「じゃあ、キョウさんがムク山に行ってそれを退治して頂けるんですか?」
「はい。出来るだけ頑張ってみます!」
商人と約束を取り付けセレネの家まで帰ってきたところをアリアとエミルが迎えてくれた。
「うちの娘のために……なんて感謝したら良いのか……」
「いや、そんなこと。僕が力になれるなら」
別にそんな趣味は無いが正義の味方風を気取った。目的が無い、暇つぶしとかそんな適当な理由では無いが別にそこまで肩入れする必要が無いのは確かだ。
魔界に来て最初の街で出会った女の子。キョウがそれに不思議な出会いを感じたわけでも無かった。けれども何故か助けて上げたいという気持ちが浮き上がってくる。
やはりあの時に思ったことがまだ自分自身に響いているのだろう、キョウは思う。
打ち明け話で聞いた、自分と同じで自身ではどうしようも出来ないという〝劣等〟をセレネから感じるからだろうか。
「出発は明日にします。それまでちょっと休憩させてください」
そう切り出し借りている部屋に戻った。昨日は出された夕食を何とか食べ切ったが今日は食べれるだろうか。魔物の前にどうでもいい不安が頭をよぎった。
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トントン、とドアを叩く音が聴こえる。
「ぁい……」
と気のない返事で答えた。いつの間にか横になって寝ていたらしい。体にはいつからあるか分からない毛布がかかっていた。
キィ、とドアが開く。そこにセレネが何か持って部屋に入ってきた。
「お疲れですか……?良かったら、これ。野菜ですけど……キョウさん、あんまりお肉は好きそうじゃないんで」
夕食?寝すぎたのかと時計を見るとそんな時間はとっくに過ぎ1時に入ろうとしていた。
「う……寝すぎたかぁ……」
そう言うと料理を机に置いたセレネが不安そうな顔をした。
「キョウさん……そんな疲れてるの、って私のせいですよね……?」
「や、そんなことないよ。ただ寝るのが好きなだけなんだよね……うん」
妙に間が空いてしまった。まあセレネ関連で色々話したりとか動いたりとかしてるから否定は出来ないのだがそんな事は言えないので否定する。
「聞いたんです……キョウさんとお母さんが話してるとこ。明日ムク山に行くんですよね?」
どうやら配慮は無駄になったようだ。全て分かっているのなら話は早くてそれもいい。
「聞いてんたんだ……。明日、行ってくるよ山に」
ますます不安そうな表情を浮かべるセレネ。
「ホント、私なんかの為に……ありがとうございます」
「気にすんなって。俺がやりたいと思ったからだよ。セレネはなんも悪くないだろ?」
「そういって頂けると嬉しいです……」
「……」
間が空く。気まずい雰囲気になる。
「じゃあ、もう1つだけお願い出来ますか?」
セレネが空気に耐えきれないのか口を開いた。
「おう、いいよ」
「足でまといで荷物持ち位しか出来ませんが……私もその魔物退治に連れて行ってくれませんか?」
決意の篭った声が部屋に響いた。
「……。本当に言ってる?多分、ていうかマジで危ないと思うぞ?」
「構いません……。自分のことなのにキョウさん1人に押し付けるのは嫌なんです」
どうやらセレネの決意は固いらしい。
「ん……。いいよ、一緒に行こう」
話が終わった頃には暖かそうだった料理は冷めていた。全て野菜を食べ感謝の言葉を述べる。魔界の野菜だったら食べられそうだ、とか関係ない事で頭を巡らせる。
それで明日の不安をかき消した。




