21:チャンスは転がっていますよ?
ユニーク850突破しました!!
まだまだ初心者ですがこれからもよろしくお願いしますm(*_ _)m
根気、辛抱の時間
過ぎていく時間と結末
正確な時を刻んでいる時計を見る。これがあるだけで何故だがとても落ち着く。商人が出てくるのは決まって毎日16時。人間界と全く同じ24時間というのはとても都合がいい。
「あと1時間か……」
特にすることも無く提供された一室の床に寝転ぶキョウ。ずっと歩いてきたから疲れているのはあるがそれでも何かしていないと、という気分になる。
思えば具体的な目標を何ひとつ決めていなかった。セレネから聞かれた時に特に思い浮かぶものもなかった。でも今はやりたい事もないし……どうしようかな……と困るキョウ。考えるのは一旦辞め少し仮眠をとることにした。
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「ん……ぁ……」
睡眠はとらなくてもいいと言われたもののやはり人であったが故に惰眠を貪りたいと言うものだ。手元の時計を見ると4時を指していた。
「ぁ……やば。もう……4時!?」
急いで立ち上がり家の外まで出ていく。道を走り出した頃にアリアとエミルがお願いします、という表情で見送ってくれた。
「話だと……〝壁〟までは5分走れば……」
――本当に5分なのか?
プリンが適当だったのか、イマイチ時間に関しては信用しきれていないキョウ。だが今はそんなことを考えている暇は無いから全力で1本道を走る。
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そこそこ大きな壁が見えてきた。エステルと比べればそこまででは無いがそれでも街の中にあるというのはとても不自然な大きさの壁だ。
門は既に開いていて商人と思わしき魔人達が次々と出てくる。小さめのリュックを背負った者や馬型の魔物の上にいるもの。もっと金持ちそうな人は馬車の様な物に乗っていた。
「小さめのグレーのリュックに……グレーの帽子の人は……」
アリアから教えて貰ったアクロン商人の特徴を探す。4時というのをアリアが分かっていたのは大きいがそれ以上に商人の情報も助かった。それにしても意外と商人達は多くてほとんど見た目は違うけれども見つけにくいのは確かだ。
――門は10分しか開かない。あと5分……
半分の時間が過ぎたがまだ目的のアクロン商人は出てこない。もしかしてもう出て行ったのか?と不安に駆られるキョウ。
その時、門から出ようとする大勢の人の中に一瞬だけグレーの何かが見えた。よく目を凝らして見る。
「どこだよ……グレー、グレーは……!」
――見えた……
今度はしっかりと見えた。間違いない。グレーの帽子にグレーのリュックよく見ると全身グレーの服を着ていてかなり太っている。
キョウは見失わないように太ったグレーに走り近づいていく。
「あの、すみません!!アクロンを売ってる商人さん、ですか……?」
太った魔人は一瞬怪訝そうな顔をした。
「ふん……私はアクロンを売っているが……。外の住人が私に何の用だね?」
外の住人という言葉が聞こえた。それは差別に他ならないだろう。この街の現状がよく表れた言葉だった。
「いや、いきなりなんですけど。アクロンを、ですね。その買ったりとか貰えたりっていうのは……」
キョウの言葉を聞き商人は笑いだした。
「お前達が宝石を?ふん、金もないのに無理に決まっている……」
そこまで言うと商人はいきなり悩みだした。思わず舌打ちしそうになったキョウは堪えて商人に聞いてみる。
「あの……どうしました?」
少しイラつきで語尾が上がっているとか声が低いのは気のせいだと信じたい。
「いや。お前に提案があるが。それをやってくれれば渡さない事もないと思っただけ……」
「え、ホントですか!?どんな事なんでしょうか?」
嫌味を言われないうちに食い気味に聞いた。きっとこれはチャンスに違いない。
アクロン、セレネの夢をかけた勝負が始まろうとしていた。




