20:どの世界でも変わりませんよ?
ついに20突入!!
宝石『イブンティア』
街の繁栄と暗い影
キョウはアリアの話を聞いていた。正直困ったことになったと思った。自分の力でどうこうなる問題なのか、と。
アリアからの話は〝イブンティア〟という街についてのことだった。
1つは、イブンティアにはとても大きな貧富の差がある。この街は円形でその外側には貧民、つまり農業従事の人々が暮らしてセレネの家もここに属する。
そして円形の中心部は富裕層が住んでいること。その富裕層達は宝石を商売・貿易道具として財を成している。
そしてもう1つ、あるイブンティアの富裕層の中にアクロンという宝石を売っている商人がいること。そのアクロンとは無色透明で力を抑える効果があると言われている。要はどんな物理的、魔力的な力でも吸収する効果があるらしい。
それによってセレネの暴走は止められるかもしれないという。
「じゃあフェリさんもアクロンを付けていた、って事なんですか?」
「恐らくは……」
「だったらそのアクロン商人のところに行けばいいんですね」
キョウがそう問いかけるとアリアは顔を曇らせた。
「いえ、それが出来ないんです……」
「え?」
「富裕層には会えないんですよ……」
変わったルール、貧民は富裕層にすら会えないのだろうかと思った。
だがその考えは的中した。
「富裕層の元へは行けないんです。中心部には壁があって厳重な警備がされています。だからその商人に会うにはその人が壁の外に出る以外できないんです」
「じ、じゃあいつ会えるかは全く分からないってことですか!?」
「……」
沈黙は肯定の意だろう。ずっと中心部の門を見張ってなければならない。ほぼ行き詰まったといっても過言ではない。
「でも!門が開く時間は分かっています」
――そりゃ良かった……
門が開く時間が分かっている事にのみ安堵した訳では無い。魔人は睡眠が必要無いと言ってプリンは寝なかった。空を見るとずっと、どこまでも暗い紫が立ち込めている。つまり朝と夜の概念がないと思っていた。が時間の概念があるのは助かった。
たまたまこの家の時計が目につかなかっただけだろう。キョウは安堵の台詞を口にしてそれとなく時間についても触れておいた。
「いやぁ、時間が分かってるんならまだ良かった……ずっと空はこんなんだから時間とか分かりづらいですよね?」
「ええ、ホントですよね……今の王が来てから色々変わりましたよ……。税もずっと厳しくなり何よりずっと空が同じ色。時計が無いと分からなくなっちゃって」
「今思ったんですけど……農作物って育つんですか?」
ふと思った疑問。作物を育てるのに必須であるはずの光が無いのに農業など出来るのか、キョウは口にしてみた。
「一応は。こんな紫じゃない頃はもっと別のものを育ててたけど今はねぇ……」
――へぇ……凄いな
人間界よりも文明は発達しているのかもしれない。魔界は魔界で頑張っていることもあるらしい。
「キョウさんは時計、持っていらっしゃらないの?」
「えぇと、はい。実は家から出る時に忘れてきてしまって……」
「なら、私の懐中時計持っていってください」
キョウは渡された時に「懐中時計!?」と驚いた。まるで人間界と同じものがそこにはあった。が、よく考えると人間界の物には思い当たる節があった。
かつて金髪の転移者がいたらしい。ある魔女が話してくれた。その転移者がもし人間ならこういうものを落としていったり教えてもおかしくはない。
「ありがとうございます。この時計貰っていきます!!任せてください。絶対にその商人は見つけてみせます」




