18:家族のハナシ
2つの銀と黒が織り成す世界
残された能力に生み出す期待
キョウはアリアにお礼を言われたがなんと返せば良いか分からなかった。まあ娘が誰かに助けられたのだからそういう反応をするだろうとは思っていたのだが。
「いや、そんな感謝される様なことは……」
するとすかさずセレネのお父さんも入ってきた。
「いえいえ。本当にありがとうございます……名前、言いそびれましたが私はエミルと呼んでください」
「エミルさんと……アリアさん、ですね。早速なんですが少し聞きたいことがあるんですけどいいでしょうか?」
この街に来る途中に決めた目標のため切り出す。もしかしたらセレネを傷つけるかもしれない。少しセレネには席を外してもらおうかな、と提案をしようと思ったが既にセレネは居間には居なかった。
――あれ、自分の部屋にでも行ったのか?
まあそれならそれでいい、と話始めるキョウ。
「実はセレネさんの事なんですけど」
「はい……なんでしょうか?」
「セレネさんの能力、えっと……」
言葉に詰まる。本人が秘密にしていた事だ。少し後ろめたい気持ちがある。
「もしかして……死霊術の事、ですか?」
アリアが反応する。やはり能力と言われると思うところがあるようだ。
「はい……あのっ。セレネさんのそれを見たっていうか体験したっていうか……ですね」
アリアが目を見開いた。エミルは驚いた表情でアリアの顔を見た。
「なんて事。じ、じゃあキョウさんに大変なご迷惑を……セレネがかけて……」
「いえそんな迷惑なんて!!大丈夫でしたから落ち着いてください」
まあ実際多少の迷惑は被ったけど。けれどもそれよりまずいロープぐるぐるの事なんて言えない。そんなことを言ったらどんな目で見られるかわかったものでは無い。
「それで、です。セレネさんの能力についてお伺いしたいんですが。単刀直入に言ってあれの制御は不可能なんでしょうか?」
アリアとエミルはそれを聞くとまた驚いた表情をした。分からない、といった顔だ。
「あの……大変申し訳ないんですが。娘の力の制御を知ってどうするおつもりでしょうか?」
エミルが声に出す。部外者がいきなり家族の問題に首を突っ込む。あってはならない事だがキョウにもちゃんとした事情があった。
「セレネさんは死霊術を制御して冒険してみたい、それが夢だと。目標だと聞きました。自分みたいなやつが手助けになるか分からないけど……何か出来ることがあればと思って……」
アリアはキョウの言葉を聞いているうちに俯きだし言葉が終わる頃にはテーブルに涙が零れていた。
「そう……ですか。私たちではどうしようも無かった問題を。娘を助けてくれたあなたがまた助けてくれるのですか……?」
「はい。こんなやつですが出来るだけ頑張ってみたいと思います」
アリアとエミルはキョウの言葉を聞くと手を取り合い涙を流していた。




