11:仲間はいつでも事件から
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銀色の透き通り
事件はどこへ向かうのか
キョウは後ろの女の子を見る。余程怖い思いをしたのかその睫毛は少し濡れ震えている。
「大丈夫……かな?」
弱々しくて守ってあげたい、そんな姿を見ていると不安になりもう一度聞いてみる。
「はい…… 本当にありがとうございます」
――綺麗な声だ……ホントに
小さな鈴の音がキョウに答えた。
「わ、わたし! セレネって……いいます」
「セレネ……か。いい名前だね」
初対面によくありがちな会話を紡いでいく。セレネは何故追いかけられていたのか、そんな疑問など今すぐぶつけたいのは山々だが相手は小さい女の子。しかもまだ動揺しているのか息が切れているのか肩を上下にせわしなく動かしている。
「ちょっと休憩しよっか? セレネ……ちゃん。走ってたしね?」
決して男に追いかけられたから疲れてるよね、なんてワケありそうな事情は言わない。女の子には優しく、それ以前にか弱き者には優しくだろう。
「はい……」
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――なるほどね……そんな事もあるのか……
キョウはセレネの話を聞いた。流石、妖艶な光を出し誘惑し続ける美と賭けの街と言わしめる事情がセレネにはあった。
「私この前までイブンティアにいたんです。そこでお母さんとお父さんの仕事の手伝いしてたら突然怖い男の人達が来て…… 私をここまで連れてきたんです。それで“今日からここで働け”って言われて、何かの部屋に置いていかれたんです。それで、怖くて……」
セレネは言い終わると泣き出してしまう。その先は言わなくてもキョウにも分かった。少女にとっては何かの部屋だろう。だがこの街でここまでの女の子を放っておく訳が無い。あらかた風俗紛いの悪影響を及ぼす店だろう。怖くて無我夢中で逃げだすなど容易に想像がつく。
「よく無事でいられたね、しばらく一緒にいよう……」
泣きじゃくるセレネをなだめ、近くにあったベンチに座らせる。
――あの魔物、許せないな
怒りが込み上げる、何故かは分からない様で分かっている気がする。恐らくセレネと自分は似ているからだ。
キョウもそうだ。訳が分からないうちに魔法陣の上に乗せられ気づいたら魔界で女の子をなだめている。魔界に来て3、4日位経ったのか分からないが色々大変だった。
「あの……お兄さんは、なんて呼べば?」
「あ、俺? キョウっていうんだ。そのまま呼んでくれていいよ」
「そのままは……キョウさん、って呼ばせていただきます」
―さん付けなんて、何か恥ずかしいな……
人間界にいた頃は名前など友達に呼ばれた記憶がほとんど無かった。劣等には価値が無い。
その時、可愛らしい音が隣から聞こえた。音は少女のお腹から聞こえた。余程恥ずかしいのか耳まで赤くなり俯く。キョウは思わずクスッと笑いそうになったが堪え、
「お腹減ったなぁ…… お昼ご飯でも食べに行こうか?」
と誘ってみる。セレネは俯いたまま頷いた。
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「ごちそうさまでした」
「ごちそうさまでした……」
声が重なる。全く違う世界と言えども食に対する感謝は同じのようだ。お昼はパンらしき物に肉を挟んだものだった。2人分で残った50エルピッタリだ。
――うわ、変な味するわ……
キョウは食べた瞬間に異変に気づいた。変に酸味が効いていて美味しくない。不味い。お腹が余程空いていたのかセレネは焦るように頬張っている。それどころかキョウが1口でやめたパンを見て
「キョウさん……お腹空いてない?食べてあげよっか?」
と言ってきた。お腹はきっと空いているのだろうがこんなものを食べて大丈夫なのだろうか、と心配になってくる。
「お、おう…… 無理は……すんなよ?」
「大丈夫だよ?これ、美味しいもん」
とセレネ。キョウは思わず顔をしかめた。
腹ごしらえを終えるとやる事が無くなった。結局散策しようと思ったけどセレネをあまり人目につかせたくなかった。また事件に巻き込まれるのはキョウもセレネも一緒だ。だから「俺の泊まってる所来ないか?」と誘ってみた。別にそういう誘ってみたではない。セレネは意図を汲んでくれたのか「はい」と答え、キョウはプリンの家に連れていく。
歩いて数十分でプリンの家に着いた。夜のご飯までは時間があるがまあいいだろう、とキョウ。
人様の家にそう簡単には上がれない、とセレネ。
「ここの家そんなに嫌か?ま、確かに汚い所あるし何か中から怪しい光が漏れ……痛い!?」
中からプリンが聞いていたのかキョウの頭をゲンコツで殴る。
「汚くて怪しい光漏れてて悪かったね……キョウは居候なんだから掃除してくれても良かったんだよ?」
「はいはい、ごめんなさい 汚いけど我慢しますよ〜」
プリンとキョウの言い争いが始まった。この2日間でとても気が合ったのか結局寝ずに話していたりした。
そんな2人を見たセレネがクスクスと笑いだす。
「キョウ、笑われてるよ?」
「まさか。プリンの方だろ?」
セレネはそんな2人を見て
「キョウさんとプリン……さん?結婚してるみたいです!!」
プリンはそれを聞くと頬を赤らめ「そんなワケないでしょ……」と聞こえるか聞こえないか位の声で言った。
結局家の前でそんなやり取りをしているとセレネも張り詰めた気が緩んだのかプリンの家に入り中でくつろぐことにした。
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セレネには秘密があった。
親にも言ったことの無い秘密。
この人になら言ってもいいかもしれない。
このいわくつきの身体について打ち明けたい。
いよいよ魔界での旅に新たなる仲間が……




