1: 転生したら無双なんて甘えですよ?
初投稿です。温かい目で見て貰えると嬉しいです。今後もよろしくお願いします!!
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今、激しい光の中にいる。
魔法陣は光の輝きを増している。
――死にたくねえ
――死にたくねえよ
――死にたくないんだ
〝人類救済のため〟なんて言っても結局自分が召喚の生贄、犠牲になり生贄として捧げられるのは誰しもが嫌だろう。
天界、人間界、魔界に別れていて自分が生まれ育った人間界の教育では「人が死ぬ時、転生し天使になれる」と教えられる。5、6歳の子供も知っている常識。
しかし誰も転生した後の事は教えてくれない。
――天界なんてあるのか
――天使も見たことないのに
生贄としての役目を果たし今死のうとしているのにまだ不安が消えない。
数百人の生贄の1人として捧げられたキョウ=クレルは今終わろうとしている命で考えた。
7年前から人間界と魔界とは対立状況にある。対立した初めは魔界の侵攻を食い止めていたが、つい1年前位に侵攻を防いでいた人間達も倒された。
人間と魔物は生まれながらにして能力を持つ者がいる。人間界では約70%の人が能力を持っている。
魔物は雑魚でも基本的に身体能力上昇を持っている。身体能力上昇を使えば、雑魚魔物でも武装した人間より強くなる。
つまり70%しか居ない人間の能力者+30%のただの人間達が、魔界に負けるのは時間の問題だった。
〝困った時の神頼み〟とはよく言ったものだ。
魔界の侵攻を終わらせるために人々は文献でしか見たことの無い天界の天使、神に生贄を捧げた。要は神や天使が人間側に加勢して、魔界側を退けてこの侵攻を防いでくれることに賭けたのだ。しかしながら天使や神の存在は人間界全土でいると共通認識されていたが誰一人見たことなど無かった。
今、キョウが捧げられているこの魔法陣は天の神を呼ぶために作られたものだ。キョウを含む数百人は存在するかも分からない神の為に命を捧げた。命を勝手に捧げられた。別に誰も自分の意思でここにいる奴はいないはずだ。
――天使なんているのか
考えれば考えるほど不安が増す。
――早くしてくれれば楽になるのに
キョウは召喚の詠唱はまだ終わらずこの時間がとてつもなく残酷だと思った。いつ終わるか分からないこの時間はきっと他の人間にとっても同じように不安なのだろう。
しかしこの残酷な時間がまだもう少しだけ続いて欲しいとも思った。存在するか分からないものを信じるよりかは人間でいたかった。
――もう人間だろうが魔物だろうが…
もう一度生きたい。1番はこの召喚術が何故か突然中止になり生贄から解放される事だ。
別に悪いことはした覚えは無い。なのに突然拉致されて魔法陣の上に乗せられて勝手に殺される。
「理不尽だろ…」
そうキョウは呟くが召喚術士達の声は一層大きくなっていて周りどころか自分でもよく聞こえない。
「天界にて下界を見下ろす神々よッ!!!!」
そろそろ召喚術も大詰めなのだろう。神を降臨させそうなお決まりっぽい言葉が聞こえてきた。これで神が降臨した時、それと引き換えに自分達の命は終わる。
キョウは改めて周りを見た。泣いている者はいない。何か話している者もいない。皆ただ下を向いているだけでその顔には感情と思しき代物は無かった。奥の方では顔を上げ口を開けている者が見えた。その顔はまるで死ぬ寸前であるのに笑っているようにも見えた。
「今こそ下界に降臨されたしッ!!!!!!」
そんな言葉が聞こえてきた。召喚の儀式は後2、3秒で終わるのだろう。2、3秒しか無いからもう考えることをキョウはやめ、目を閉じ微動だにせずそこに立った。
―魔法陣は見たことの無いくらいの輝きを放ち、人々はそこに倒れていった
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―普通の人間なら目が覚める事は無い。目が覚めるなどまず有り得ない。しかしキョウという少年は類を見ない程の強運だったのか何かの因果があるのか再び目を覚ます―
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「………」
意識がある。瞼が重い。体がだるくて動かせそうにない、動きたくないが動かなくてはいけない。魔法陣はどうなったのか、召喚はどうなったのか、自分はどうなっているのか確かめるために枷を手足に付けられたような重さがあり、瞼の上にも石が乗っているのかという位だが動いて、目を開け見なければいけない。
そう思い続けて1、2分経った頃にようやく目が開いた。目に飛び込んだのは空だった。
「空が見えた…」
素直な感想が飛び出す。まだ目がぼやけていて空の色がよく分からない。それでも次は周りを見渡したいと思い次は体を起こす。ようやく視界が慣れてきたのか色が少しずつ分かるようになってきた。
「なんだよ… これ…」
キョウの目に飛び込んだのは一面が紫と黒の様な色で構成された大地だった。ならば最初に見た空はどうなのか。疑問に思いすぐさま顔を上げる。魔法陣に乗るまでは外にいた為に天気は覚えている。晴天ではないが雲はほぼなく太陽が出ていた。ならば今はどうなのか。
「なんだよ… これ…」
黒がかった紫しか見えなかった。そこに太陽はなく雲もなく光は差し込んでおらず、まるで樹海のように霧が立ち込め湿気が高く、生暖かい風が吹き込んできた。
「魔法陣の影響か!!」などと言えたならばこの不安も全て消えていっただろう。しかしその言葉は思考にはあっても口には出てこない。脳は理解しているのかいないのか機能していないようにも思えてくる。
そしてもう1つ不安がふつふつと湧いてきた。体がほとんど動いていないことに気づいた。何故ここまで体は石のように重いのか。その原因は外見を見れば、皮膚を見れば一発で気づくことだった。
キョウの体は人間界では見たことの無い肌の色をしていて血管は赤黒く、ハッキリと浮き出ていた。そしてそれを見るキョウの目の色は黒目が消えて赤く、血のように赤に染まっていた。
目の変化には気づけなくても体、特に皮膚の変化はハッキリと分かった。自分を見てまるで聞いたことのあるゾンビの様になり生きているのか死んでいるのかも分からない。
「召喚は… 俺は… いったい…」
キョウはそこに近づく影にも気付かず呆然と座り込んでいた。