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急がば回れ、焦りは人を狂わせる。

うーん、と凝り固まった身体を伸ばしながら、大きく息を吸い、久しぶりな外の新鮮な空気を身体に取り込む。


見慣れぬ外の景色に若干の戸惑いを覚えながらも、今は身体が解放感を喜んでいるので、身体を慣らしていくのを優先する。


「なははっ、二日も寝てりゃ外の世界も恋しくなるか?三年も引き篭もってたのが嘘みたいじゃないかっ」


先程ハジメを存分にからかった為か、ケラケラと楽しげな表情を浮かべたまま冗談を口にするカケルに、ジト目を向けながらも現状を把握する為にカケルと話をする事に。


「カケル、とりあえずここ何処?というか、メグから聞いたけど魔法使えたんだって?使ってみてどんな感じだった?あ、そういえば」

「はいストォップ、いきなり全部は答えられないからっ。」


湧き出てきた疑問をカケルにぶつければ、即座に反応したカケルに落ち着け、と言わんばかりにストップをかけられる。


「悪い、とりあえず現状を軽く教えてくれ。」

「おけおけ、ここは俺らの拠点の一つで昨日ゴタゴタした所為で廃ビルから拠点を移したんだ。それに伴ってタモツとリュウが一旦チームを離れた。」


色々と追いつかないが、話の続きを促す。


「それでハジメには申し訳ないけど、スタンピードへの介入は中止。あー、あくまで一時的にって事だからそんな恐い顔するなよ。」


話を最後まで聞けば、自分が眠っていた間に自衛隊や警察が検証班のメンバーを拘束しようと動いたらしく、激昂し抵抗したリュウは逮捕され、元自衛隊所属だったタモツはリュウを助ける為に、かつての繋がりを頼りに色々と動いているらしい。


思う事は色々とある。

かつてスタンピード掃討作戦を実行し、そして失敗した自衛隊が何故今さらという思いはあるし、仲良くした記憶は一切無いが、それでも仲間な二人の安否も気になる。


(なんで警察が?これまで見逃されていた様な感じのあった検証班を取り締まらなければならない事態になったとか?)


思わず浮かんだ嫌な予想に、まさかね、と思いながらカケルを見遣れば悟りを開いたかの様な、どこか虚空を見つめる瞳に察してしまう。


「まさか、検証班を真似た連中が出てきたのか?」

「あぁ、それもわざわざスタンピードを起こして犠牲者多数の悲惨な状況を招くっていうオマケ付きでな。」


最悪である。

ハジメが勇気を出して最前線へ赴いたのは、凡人でも戦える事を証明する為だったのに、愚かな連中の起こした事件によって、ハジメの描いた未来には暗雲が立ち込めたのである。


「それで、現状スタンピードにはどこが対応してるんだ?」


起きた事を嘆いていても仕方ないので、とりあえずは目の前のスタンピードを解決して両親を安心させたい、と思ったがゆえに聞いてしまった。


幾度もの失敗に心を折られ、足掻く事を辞めてしまった連中のふざけた所業を。


「スタンピードには現時点では手を出さない事に決まった。これは国が決めた方針みたいだから、覆る事はないっぽい。周辺の住民は避難勧告が出てるみたいだけど、逃げるにしても県外に伝の無い人達は行き場所が無いみたいで、避難はほとんど進んでないみたいだ。」

「...父さんと母さんはどうなったか分かるか?」


浮かぶのは、いつも優しい母の姿。

自衛隊の作戦が失敗した際に、厳格な父が初めて見せた弱々しい姿。


「行く場所が無いみたいで、変わらず家で過ごしてる。」

「そうか、すまんカケル少し時間をくれ。」


沸々と湧き出る思いは激情へと変わっていく。

ふざけるな、税金で運営されてるくせに、自衛が必要になった時には一度や二度の失敗で諦めて家を捨てて逃げて下さいだとっ!?


心が折れたなら好きに逃げ出せばいいさ、だが俺の道を邪魔してくれるなよ。


引き篭もりの俺が勇気を出して外に出たんだ。

こんな状況になったおかげでようやく踏み出せたんだ。


ただ滅びを待つ様な連中は、消えてしまえ。


「...ジメ、ハジメっ!」

「へ?ああ、どしたの?」


慌てた様な感じで声を掛けてきたユイに思わず素っ頓狂な返事を返してみれば。


「なに考えてたの?すごい恐い顔してたよ?」


慌てて顔に手を当てて表情筋を揉みほぐす。

そんな仕草を訝しげながらもユイが魔法理論を解き明かそう、と声を掛けてきた。


こんな時でも変わらない研究バカなユイに心がほぐれていくのが分かる。


「だな、決まった事をうだうだ考えても仕方ないし今やれる事をやるか!」

「大丈夫よ、魔法が自在に使える様になったらスタンピードなんてイチコロでしょ」

「もう大丈夫そうだな、現状は俺とハジメしか使えない魔法を検証班らしく色々と検証していこうかっ!なははっ!!」


焦っても俺一人で出来る事なんてたかが知れてるんだから、一緒にいてくれる特別な奴らを頼りながら進んで行こう。


「それじゃあまず、魔法についての俺の見解を教えようじゃないか、ユイ君よく聞きたまえ。あと意見がある場合は挙手するように!」

「なんで名指しなのよっ!?」


賑やかさを取り戻した検証班は、現状を変えようと知識という力を共有し蓄えていく。


遠くない未来のスタンピードとの激突に備えて。



ニートのダンジョン攻略記、物語は進んでいく。

徐々に加速するスタンピードの脅威とともに。

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