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エピローグ 道程(そのみち)は永遠に終わらない

 結局なにがなんやらさっぱりわからないまま、俺たちのキャラバン行は終わった。

アクシデント(ここでいうアクシデントとはイノシシ襲撃のことだ)もありはしたが、訓練そのものに問題はなく、俺たちは魔法師団に入隊を認められて、明日からは全員が正式に師団のメンバーとなる。

もちろんリオンは別だが、結局サポートスタッフとして一緒に過ごすことが多くなりそうだ。



そして、ここに一つの別れが訪れようと……していなかった。

フラッペの奴はまだいるのだ。

その理由がまたろくでもない。


「いやあ、今回いろいろ余計な力使いすぎてな。特にフェアリーアイはめっちゃ疲れるねん。回復に時間かかるから、もうしばらくあんたのそばにおらしてもらうわ。あと五人くらい闇と契約した転生体始末に成功したら、無罪放免で釈放したるから、もう少しつきおうてや。うちに恩売っといたらお得やで。特典に転生体犯罪者として追い回されへんサービス券半年分つけたるから」


これである。

しかもサービス券たった半年ぽっちかよ。

まあフンの始末もしなくていいし、餌もいらないので手間はかからないから、別にいいんだが。

「うちを文鳥かなんかと一緒にすんなや」

口の悪さと、なにかというと足蹴りくれるこの手癖、いや足癖の悪さは問題だが。まあいいか。


 それよりも気になっていたのだが。

「ん、なんや?」

「ユナのことはなんで許したんだ?」

俺は単刀直入に聞いてやった。

するとフラッペは「はん?」と小馬鹿にしたように肩を竦める。

「なんやそのことか。あの娘は白や。思い出したんや、前世の記憶を持たずに転生するケースもあるいうことをな」

「なんだそれ、記憶喪失にでもなったのか。いや待てよ……?」

「あんたにしては察しがええやないか。そう、それや」

「いや……どうなんだ? 全然わからんが」

「……またうちの見直し損や。あんたほんまになんの役にも立っとらんし目的もなにも達成してへん。ただおるだけや。自分が三枚目やて自覚あるか?」

「それは俺が悪いんじゃない、全ては巡りが悪いだけだ。俺は今でも誰もが振り返る美形だし、二枚目でモテモテの男よ」

「今通り過ぎた女の子、あんたの顔見てわろとったで」

嘘だろ? 俺は慌てて振り返り、今すれ違った女の子の様子を盗み見た。

「そういうとこがまんま三枚目やいうねん……まあええわ」

ふらふらと俺の肩から離れたフラッペは、宙を舞う。

「あの子は最初から記憶を持たずに転生したんやろうな。多分、物心つくよりも前に亡くなったんやろ。赤ん坊の頃に死んだら、そら記憶なんか持ってなくても当然や」

俺はその言葉に目を丸くして、フラッペのほうに振り返った。

駄目だ、あまりの酷さに泣きそうだ。

「そんな悲しい話があるかよ……そりゃひでえよフラッペ。どうにかならんのか」

「うちがなにできるいうんや? あの子を前世に送り返しても、もう一度最期の瞬間を味わわせて結局消滅させるだけやで」

「オノノの中の人もそうだったのか。それはそれで悲しいな」


俺の言葉にフラッペは肩を竦めたが、今度は俺を馬鹿にする視線はなかった。

「あんたのその優しさがなんで内面に反映されへんのか、ちょっと不思議になるわ。けど前も言うたけど、転生は人の願いの産物や。あの娘がそれを願うたからこそ今がある。その事実はあの子をいつか真理に導くやろ。どういう形になるかは、うちにもわからんけどな」

「そうだな、そうなるといい。そして俺も悠久なるハーレム計画を……」

「それはただの欲望や。願いちゃう」

また呆れ顔を見せるフラッペ。本当に浮き沈みの激しい奴だ。

「どう違うってんだ。同じだ同じ。俺の目的は高貴にして至高。曹操だって十人以上愛妾がいたけど、別に好色なわけじゃなくて子孫を残すためだって偉い人の本にも書いてあったぞ」

「あんたの子孫がわらわらこの世界に残るおもたらぞっとするわ。大体あの一件以来リオンはふてくされてるし、マリミ二人とエンダからは距離置かれてんやろ?」

「それを言うな。ふん、俺には揚々たる未来が開けているんだ。あんな連中などいなくても、また新しいハーレム要員をかき集めて……」

「その中にまた転生体おりそうやな」

「じょ、冗談じゃねえ。そんなおっかない話今はやめてくれよ」

「ええやないか、こっちとしては大助かりやで」

フラッペは嬉しそうにふらふら俺にまとわりついて、イヤガラセをしてくる。

俺はそれをハエを追い払うように手を振って牽制するが、もちろんそんなことで動じる奴ではない。


「頼むで、あんたはこれから転生探偵タカシや。美人のパートナーフラッペちゃんが一緒やから、しっかり働いてや」

「うわあ、なんだその設定。霊界探偵並にすぐ死に設定化しそうだな。大体誰が美人だ誰が。乳がちょっと腫れてるだけで性格は完全にババアじゃないか。さっさとお前死んで、別の若い美人に心臓移植されてしまえよ。そのほうが俺も嬉しいわ」

俺は一気に言ってから、一息ついて、少し声を大きくして叫んだ。

もちろんそれは人に聞かれて、変な人に思われない程度には絞った声だったが。


「そもそも俺はタカシじゃねー、ティクシーだっつうの!」


懸命に追う俺、逃げるフラッペ。

この追いかけっこはどう考えても勝ち目が無さそうだ。いつか寝込みを襲ってやろうか、本当に。


そんな俺に、遠くから手を振っているのはリオンとヒロの奴だ。

そのそばには装甲兵三人集もいる。

相変わらず薄着かと思ったら、今日は軽装鎧をまとっているのは、明日の叙勲式の予行演習だろうか?


 そしてさらにそのそばにユナもいる。

可哀想なユナは、相変わらず無表情でぽつんと立っていた。

胸もまだ小さいし、背も伸びきっていない、お尻もぺったんこだ。

とにかくこまっしゃくれたがきんちょである。

その顔を見ると俺の胸はきゅうっとみ○ぎくんのように痛んだが、どうせそれを本人に言ったところでまた罵られるだけだろうから、俺もあえて無視してやろう。

「なあ、あいつが赤ちゃんの転生体ってことはわかったけど、じゃあなんで俺にあんな風に懐いているんだ?」

「それは多分……あの子の中の本能が転生体であるあんたに自分と同じ、他の人間からは感じないなにかを感じ取ったんやろ。実は脳死後にあんたの心臓が移植されて助かった子供とか、そんな直接的な縁があるわけではない思うわ」

「そんなアニメもありましたな。しかしツンデレすぎんだろあいつの愛情表現は」

それが今のユナと俺との関係だというのなら、それはそれで仕方ないのかもしれない。

相手は赤子だしな。

まあ今は子供でもそのうちということで、あいつとの関係は現状維持を認めてやろう。


俺はそんな連中に手を振って走り寄っていく。

探偵なんぞごめんだが、ハーレム計画のためにも、もう少しフラッペにつきあってやる。

脅されているし追い払いようがないから、しょうがなくな。


 これが今の俺にとっての現実、俺が生まれ育った世界なんだ。

願いが俺をこの世界に導き入れたと言うなら、俺はこの世界をたっぷりエンジョイしてやるまでさ。

待ってろよ、まだ見ぬ美女たち。

「また邪なことを考えている」

「あー、痛いのはやめてー!」

「浮気は駄目だぞータカシ」


騒々しい日々はもうしばらく続きそうだ。

と言うことは、まだしばらくは俺も三枚目を返上できんということか。

これって幸せって言えるのか……? 二枚目の俺、かんばーっく。




 おわり

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