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とあるトラベラーに訪れた災難あるいは終わりなきシンキング

作者: HM

稚拙な文書でありますがどうぞよろしくお願いします。

やあ、そこの君。そう、そこの君だよ。旅行者かい?

ここはいい国だろう。なにせ平和な国だからね。

ねえ、君。この国のことが知りたくないかい?知りたいだろう?

……知りたいって?

もちろんだよ、いいとも。

この国は平和な国だ。平和が愛されている。平和なことが自慢なんだ。

平和で皆が穏やかに過ごしている。

……平和しか無いのかだって?

何だって!おい、君、平和の価値がわからないのか?

平和とはとても尊く、何物にも代えがたく、どんな物よりも価値あるものだ。

争いを嫌い、憎み、その上で皆が仲良く、手を取り合い、肩を組み合い、

そして絆を育む。

そうして出来上がるのが平和だ。その平和を生み出すのがどんなに難しいことか。

僕たちの国はその平和を実現したんだ!

そしてこれからもずっと平和であり続ける。

それがどんなに凄いことか君には分からないのか?

……ん?平和についての大切さは充分分かったって?

分かってくれたならいいんだ。

声を荒げて悪かったね。平和の大切さがわかってくれて嬉しいよ。

僕たちが平和をここまで大事にするのには理由があるんだ。

君はここに来る時に見たかもしれないが、この国の隣にも国があっただろう?

この国にはね、ずっと昔、その隣国に戦争を仕掛けられたんだよ。

きっと、大勢が死んだんだろうさ。とても悲しいことだよ。

……戦争はどうなったのかって?

互いに和平を結んだらしいよ。戦争の無意味さを互いに理解しただろうからね。

だから僕たちはもう二度とそんな悲劇は起こさないように平和を愛するのさ。

……戦争を起こした国が憎くなかったのかって?

罪を憎んで人を憎まず。

昔の人はきっとそれがわかっていたんだね。素晴らしいじゃないか。

その証拠に今はその隣国とは大の仲良しさ。

隣国はわざわざ僕たちの平和のために色々な助言をくれるんだ。

自分たちには全く関係ないのにね。ありがたいことだよ。

おっと、ずいぶん話し込んじゃったね。この国のことが分かってくれたかな?

……そうか!それは良かった!この国の良さが伝わってうれしいよ。

それじゃあ僕はこの辺で。



よう、あんた。そう、そこのあんただよ。旅人だろう?

うちの隣にある国にはもう行ってきたか?

……そうか、先にそっちに行ってきていたのか。

それなら話がはやい。

普通はよそ者にはしないんだがな。ある話を聞かせてやろう。

俺らの国と隣国にまつわる話だ。

……ああ?何で旅人である自分に話してくれるかって?

おいおい、人の親切に水差すなよ。

酒をたらふく飲んで気分がとてもハッピーだからさ。

特別に話してやるんだ、感謝しろよ。

よし、それじゃあ話を始めるぞ。

あんた、隣国へ先に行っていたなら、奴らに国の話を聞かされたんじゃないか?

それも頼んじゃいないのに自分からペラペラと。

あんたも見ただろう?それを話しているその時の奴らの誇らしげな顔ときたら。

俺が実際に見た時は笑いをこらえるので必死だったぜ。

まあいい。それでその平和についてだ。

一応聞いとくか。あんた、奴ら、俺らの国についてなんて言ってた?

……何?助言?

いいかい、あんた、その助言っていうのも真っ赤な嘘なのさ。

実際は奴らの国は俺たちの国の属国も同然なのよ。

その助言っていうのは俺たちの国からの命令みたいなものさ。

あの国は昔から平和好きでな。

戦争してた時も、争いは良くない、平和が大事っていう連中が

ごまんといたって話だ。

自国の危機なのにな。

一部の連中は危機感を覚えて自国の平和のために戦っていたっていうのによ。

実際、そいつらの戦いはすごかったらしいぜ。まさしく英雄様たちってやつだ。

その英雄様たちのおかげで戦争にうちの国は負けそうになっていたのさ。

そんな時だ、苦し紛れに俺たちの国は和平を申し込んだのさ。

普通、この和平は受けえねえよな。

このままいくと確実に自分たちの国が勝つのに。

これがまたおかしくてな。

何を血迷ったか、あの国はその和平を受けやがったのさ。

英雄様たちは反対したみたいだがおかげで国を追われ、

皆散り散りになったって話だ。

おかげでうちの国は負けを免れたわけだ。

しかもその後ゆっくりと信頼を得てあの国を都合良く操り、

利益を得るようになったのさ。

話はこれで終わりだ。どうだ?面白かっただろう?

こんな話めったに聞けるものじゃないからな。

隣の国のおかげでうちの国は国民全員贅沢三昧だ。おかげで争いもほとんどねえ。

この国、あんたも楽しめるだろうよ。まあ、ゆっくりしていけよ。

じゃあ俺はもう行く。

おっと、そういえば英雄様の一人だったっていう噂がある爺さんがいるらしいぜ。

とある国のスラム街にな。

あんたも一度見てみたらどうだい?

それじゃあな。



誰だ?こんなみすぼらしい老人に一体何の用だ。金などないぞ。

……旅の者?

旅の者が儂に一体何の用だ。

……話を聞きたい?何?英雄?儂が?

その話、一体誰から聞いた?

まあいい、どんな事を吹き込まれたか知らんが儂を英雄と呼ぶな。

……なんのために戦っただと?

決まっておるわ!儂は、儂らはなあ、平和のために戦ったのだ!

戦争に負ければ儂らの愛するものたちは必ず蹂躙される。

多くの嘆きと悲しみが訪れ、苦しみを強いられることになる。

儂らは愛する者たちの、国の、日常の、平和を守るために戦ったのだ!

多くの敵兵を殺した。奪わせないために奪い続けた。

そうしてわしらは英雄になった。

儂らの行いを非難するものも多くいたがその非難も尤もであった。

ゆえに儂らはそれを自ら誇示はしなかったが誇りではあった。

儂らの手は汚れてもそれが儂らの平和につながると信じていたのだ。

もう少し、あと少しで手に出来る筈だったのに。儂らの願いは届かなかった。

平和を乱す者たちだと、平和を奪う者たちだと言われ国を追われ、

すべてを失った。

儂たちはバラバラになった。もう生きているのは儂だけかもしれん。

……なぜ、あの国は平和を望んだ儂たちを追い出したかだと?

彼らには,戦いを望む儂らより和平を申し込んできた国が

平和の使者だったのだろうな。

結局争いが無ければ何でもよかったのか?

儂は、儂らは一体何のために英雄になったのか?

話すことなどもう無い。これ以上この老いぼれに用はあるまい。

もう行け、旅の者、おぬしの旅はまだこれからも続くのだろう?


お読みいただきありがとうございました。

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