序章
私は自分の性格に嫌気がさす。
困っている人がいれば放っておけない質なのだ。
今となっては、あの時放っておけたならば、
私は幸せになれたのではないかと思う。
困っている人を見つけたら助けてあげなさいと
どこぞのヒーローも口を揃えて教えてくれた。
だが、困っている人は、こう考えるんだ。
「めんどくさい事はあいつにやらせよう」
「あいつは便利な奴だ」
「失敗しても責任はあいつだ」
そういった考えが伝染し頼まれごとは増えた。
そうして自分の事に手が回らなくなった私は
学業、スポーツ、恋愛ありとあらゆる
自分の事をドブに捨てたのである。
私は今、月給13万サービス残業あり、休み月1日から2日の農業法人に就職している。そして今年、20歳の誕生日を迎える。
今日も11時間ほど働いてクタクタだ。
私の19年間はなんだったのか
少しでも自分のために動けたのだろうか。
私の生きた年数が不毛のように感じた。
幼き頃に戻れるのであれば困っている人を
助けろとかほざいたヒーロー達を桜島の火山灰で
生き埋めにして桜島の肥やしにしたい。
そして、自分の事だけをしていたい。
幸せになりたい。
私は幸せになりたいという意気込みを
誰かに聞いて欲しいと思い、友人の川畑に
電話した。
5回ほどかけ直してつながった
「もしもし俺だけど」
「次から3回かけ直したら諦めような、どうしたねん」
「俺、今まで散々だったけどさ今から幸せになれるけ」
少し間があった。川畑は高校の頃からの付き合いで
川畑から見て私は不憫だったそうだ。
「無理だな、お前が生きてる限り」
こいつとは速攻縁を切りたいと思った。
「そんな事120も承知の助だわ」と
私は怒鳴りつけ電話を切った。
だが川畑はわかっているみたいだ。
私も結局そう思うのだ。
深夜寝る前に川畑の留守電に
「ちんこの髄までしゃぶり尽くす」と残して
布団に入った。
「120も承知の助だけど、このまま終われねぇんだよ」
私は今日も布団の中で明日の幸せを願った。