西中さんの娘さん
工場の入り口で
こっそり遠目から西中の娘さんを見る清十郎たち
娘さんは男達に囲まれてチヤホヤされていた。
甘く囁く男a「ねえ、さっちゃん、また綺麗な景色の見えるホテル行こうか」
甘く囁く男b「僕とも行こうよ。僕が愛してるのは君だけなんだからさ」
弄べそうな男c「ずるいよ、みんな勝手に抜けがけしてさ、さっちゃん! そんなのより、僕の手料理を食べに家においでよ」
どうやら、さっちゃん(西中さんの娘さん)は、アンドロイドの男をはべらせて楽しんでいるみたい。
自分の意のままに操れるキャラを作り趣味の世界にドップリ浸っているみたい。
(さながらリアルダッチワイフ、あるいはリアルリアルドールだ。清十郎も若い頃にお世話になった)
『さっちゃん リアルダッチワイフ リアルリアルドール 』 でネット検索をしたら、販売サイトが出てきた。そこには宣伝文句として
現役小学生監修、仮想現実愛玩ロボット
「貴方を一途に愛すホストキャラ 1つ500円」
清十郎はともかく、竹内と安井の目は輝いていた。
安井「わたしは、あの黒髪少年の柳葉君欲しい」
竹内「わたしは金髪セクシーボイスの長谷川君がいいわ!」
安井と竹内は販売サイトから、購入の手続きを済ませた。さっちゃんの財布に1000円が入金された。
入金されて間もなく、安井と竹内にメッセージが届いた。内容はアイテムの受け渡し場所についてで、直接工場に取りに来る場合は即納入できるのだそう。
ちょうどすぐ目の前が、さっちゃんの工場らしい。竹内と安井は駆けていった。
「さっちゃんさん、先ほど購入した安井です。」「わたしも、今早速買った竹内です」
「わあ、びっくりしたー」
イキナリ話しかけられ困惑気味のさっちゃん、だが直ぐ笑顔になり「わあ、こんなに早く取りに来てくれるなんて、今までのお客さんで最速記録更新ですよ!」
さっちゃんは業界では結構名が知れた職人さんで、これまでに1000人のホストドールを作って販売してきた。小学生ならではの視点がマニアに受けて、3ヶ月程前にこの工場をファンから譲り受け、本格的に製作販売を始めたという。
3ヶ月前といえば、ちょうど学校に本格的に行かなくなった時期だ。たしか西中さんがそう言ってた。
竹内
「小学生なのに凄いの作るんだね」
安井
「こんな凄いの作れたら、楽しいだろうな〜」
さっちゃん、を褒めまくる2人。さっちゃんも照れている様で……
清十郎は思きって聞いてみた
「こんなに沢山作ってて学校の方は大丈夫なの?」
さっちゃんは少し怖い顔をして
「学校行っても意味ないから」と答えて、愚痴る様に語り出した。
内容はさっちゃんのお母さん(西中)が清十郎達に教えた事とそう違いないなかった
違うのは
さっちゃんは将来家業を継ぐのが嫌だが、、でも学校行って学業頑張って、親を養わないといけないのも嫌で、絶望して引きこもりしてる。
これらは多分、親である西中さんには語ってない。
親に気を使っていて語らない。のと、その気遣いの気持ちに気づかないまま、学校に行かせようとする親の態度が腹が立つそう。
『親は自分の事を解ってないし、ちょっと考えれば子供の気持ちくらい気付けるでしよ!』それが、さっちゃんが親を拒絶する理由だった。
さっちゃんは親に慰めて欲しい訳でも、家業を捨てて欲しい訳でもない。
ましてや家業のせいでイジメられたことを何時までも気にしてる訳じゃない。
さっちゃんは同性の母親だからこそ、娘の気持ちが分からない筈がなく、母親なら娘の気持ちが分かって当たり前。その様に思っていた。
さっちゃんは母親に失望したが、失望した姿を見せたら親不孝してる様に思えて、ずっと気を使う日々を送っていた。親の勝手な都合で許可してないのに部屋に入ってきて、作り笑顔をしないといけない。24時間対応で子役をやってたら、いつしか親に顔を合わせるのが億劫になり、部屋に引きこもる様になったら、ますます干渉的になってきて、まるで、さっちゃん自身で親を不幸に貶めてる様に思えてきて罪悪感で苦しでいた。
学校に行かない理由、さっちゃんは言わなかったが多分
学校に行けば、ただ親を甘えさせる行為の様に思えて、怒りで行く気がしないのだと思う。
さっちゃんはその頃、親の存在を感じるだけで吐きそうになったらしい。足音や気配、送られたメールの文字を見るだけ、着信音を聞くだけで、どうしていいかわからずパニックしたそう。怒りで殺意まで芽生えたとかで、精神を保つ為にVRの世界でストレスを発散させていたらしい。
その発散の延長に、たまたま現金収入が発生し、もしかしたら自立できて親との縁を切る事が出来るかもしれないと期待している。
さっちゃんは一日の殆どを工場で過ごしている。
清十郎が、西中さん親子の話を聞いて思ったのは
さっちゃんと親の関係は、
【同じ家に住みながらも、心の距離は果てしなく離れている】
「ねえ、さっちゃん! 私、この商品宣伝するよ」私も匿名だし、ここなら全然恥ずかしくないし」
竹内と安井は、さっちゃんのファンになったみたいで、
さっちゃは元気よく笑顔で答えた。
「ありがとうございます! 」
さっちゃんは、もしかしたら、このままでいいかもしれない。少なくとも、今は…
「ところで、さっちゃんは引きこもり知り合いいる?」
安井が話の流れを読んで聞いた。
さっちゃんは、仕事上女の知り合いは多いが、男(ゲイを含めて)の知り合いは殆ど居ないのだそう。ゲーム時間の殆どを、ロボットと過ごしていたからである。
さっちゃん
「そういえば、初めてこのゲームをやったとき、ダンジョンから飛び降りようとして、止められたことあったの。魔法のマントがないと駄目だからと、それでテレポートで下の街に降ろして貰ったのだけど、その人ちょっと変わってて自宅警備員(引きこもりの総称)を仕事にしてるって言ってた。 あと、『プレイヤーキラーが魔法のマントを奪い暗殺してくるから魔法のマント入手は諦めた方がいい』『人口削減政策を国がしてるかもしれないから、気付くことがあったら教えて』と言われ、友達登録しました。」
清十郎は、さっちゃんから、アカウントを受け取った。アカウントにはハンドルネーム『藤井』が記載され
職業欄は『西洋騎士レイピア使い』となっている
レイピアとはフェンシングで使う様な細い剣であり、 レイピアによる剣術の基本は突きである




