佐奈夜 郭 B
俺は復讐を断念した。一時的に。
平野はほぼ最強の存在である。ゆえに平野の弱点を見つけようと思う。何年かかってでも。
学校の帰り道、後ろから男性の声がした。
「庭坂愛結を誘拐した」
俺は慌てた。
「っ、誰?ハンター?」
俺は尋ねる。男性は
「どちらでもない。佐奈夜郭とでも名乗ろうか?」
そう言って彼は俺に紙を握らせる。
「平野ユヒトに渡しとけ」
1枚の紙切れ、白紙だった。
「じゃあなっ」
そう言った瞬間、男性の気配が消えた。
「っ」
後ろを向くが誰もいない。
俺はとりあえず、庭坂に電話をかける。
だが、なかなかつながらない。それもそうだろう、一応確認のために電話をしたが、やはりアイツは誘拐されてた――はずだが、電話は繋がった。
「もしもし、庭坂?」
「え?あ?三羽人?どうしたの?」
庭坂の声だ。
「え、ああ。今何してる?」
「何してるって、家だけど?」
……家?では佐奈夜と名乗った奴は庭坂を誘拐してない?だが。
「ついでだけどさ、三羽人あのさ、今度遊びに行くけどいい?久しぶりに三羽人の親にも会いたいし――」
……まるで、俺の両親が死んだのを知らないみたいだ。コイツはまるで、
「平野ユヒトって知ってるか?」
「え?誰それ? 」
何も知らないのだ。ならば、これはどうだろうか?
「そうか、それより5月末にカラオケ行ったよな。そこ行こうぜ?」
「あー、あそこか。いいよ、前回のメンバー?」
……それは覚えているらしい。
つまり、俺の両親が殺されたこと。平野ユヒトの存在――ハンターに関する記憶が全てない。
「今回は変えるか、あ。そうだ隣のクラスにさ――」
ひとまずはしばらく様子をみよう。




