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知ったかぶりは幸せにならないと思った、の段



 知ったかぶりをしても何のいいこともなく、それどころかリスクを被ったという話です。

 あれはもう十何年以上も前。わたしが中学生だった時。国語のテストの問題で、「芥川龍之介の作品で『杜子春』以外に、三つの物語作品を挙げなさい。」というものがあったのです。

 で、結果からいうとわたしは『父』という作品を解答の一つに書いたんです。で、それは間違いだったんです。『父』は自伝的小説であって、物語作品とまではいえないものだったのです。

 テストの答案用紙が返ってきたときに、問題の解答欄の横に国語の先生の文字で、「『父』は、芥川の体験談を素にしたもので、問題文で指している物語作品には当てはまりません」というような意味のことが書いてありました。


 ゴ、ゴゴ~~ン……。と頭の中に鈍い音が響き渡ったと思います。ショックでした。配点は憶えていませんが、貴重な一点か二点を失うはめになりました。

 なぜわたしは『父』を挙げてしまったのでしょう。作品名は知っていたものの、『父』を読んだことがなかったからでしょうか。いいえ、そうではありません。なまじ読んでいただけに、「ふっ。わたしは何でも知ってるんだぜ」という非常に不遜ふそんな心持ちで問題に向かったのです。ええ、アホでしたね。

「マイナーどころな作品を知ってるだなんて、わたしって通だろ?」という得意のもと、紙よりも薄っぺらい知識を披露したがために、本来取れるはずの点を自ら失ってしまう愚行を犯したのです。はい、アホですね。


 いまだに憶えています、自分の書いた解答を。『蜘蛛の糸』、『鼻』、『父』です。

 もっとメジャーな、『羅生門』とか、『トロッコ』だとか書いておけばなあ、と悔やまれてなりません。


 下手なことはしないに限る。幸せにならないどころか実害を被るという教訓を得ました。人はこうして大人になってゆく……。


 


中高の国語の教科書、全部とっておけば良かったなあ……。絶対に今役に立つ、とつくづく思う。

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