卑屈で嫌味な男、の段
好きなタイプは? と聞かれれば、多少返答に迷うことだろう。そのときの自分の価値観、優先している事柄、生活形態などによって、それは時として変化するだろう。しかしながら、嫌いなものは一貫して嫌いであり続ける、とまでは言い過ぎだが、これに関しては譲れないことがある。譲れないって、そりゃお前の都合だろ、なんて言われちゃ、情緒もへったくれもありませんがね。
そして、奇特にもこのぼやぼやジャーナルに目を通してくださっている、そこの御仁。何も貴兄のことではありません。男性一般を一括りにしているわけでもございません。どうか、誤解召されませぬように。
――――――こんな男がいます。
「気にしていないよ」
と言いつつ、折に触れてわたしの失敗を引き合いに出す。
「俺にはこんな実績がある」
と自慢した直後、
「でもアイツに比べればどーせ俺なんか……」
とやさぐれはじめる。
「君は俺からしたら理想の女性だ」
と持ち上げるくせに、
「でも結婚はできない」
と理解不能に嘆く。
ちょっとよろしいか。
わたしは君のような卑屈で嫌味な男が一番嫌いだ。君がわたしにどうして欲しいかなど、手に取るようにわかる。
「あのときは本当にごめんね、わたしができないせいでとても迷惑をかけたね。ずっと反省しているんだよ」
「そんなことできるんだ、すごいね! でも自信をなくなさいで、あなたは誰よりも頑張っているし、あの人には、あなたのようなことはできないよ!」
「……そうなんだ、どうしよう、うれしいのにすごく残念だよ、かなしいな……。わたしってあなたにとってそんなに魅力ないのかな……? どうしたらもっと魅力的になれる? わたしに教えてくれる? あっ、やだ、泣きたくなんかないのに、勝手に涙が出ちゃったよ。き、気にしないで本当、ぜんぜん大丈夫なんだからっ。わたし努力する、あなたに釣り合うように頑張るんだからっ」
などと言って欲しいのだろう、そうだろう。どこの少女マンガだ、どんなサクセスストーリーのヒーローなんだ、お前は。っていうかわたしは関西人だ、こんな言葉でしゃべらへんって相場は決まっとんねん!!
実際のわたしの返答。
「あー、そんなこともありましたネー」
「まあ、なるようになりマスよ」
「それはどうもオメデトウゴザイマス」
同期だけれど、ぜんぶ敬語で返しました。