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あなたが落としたのは、金の斧? それとも銀の斧?



 先日、晩御飯を食べていたとき、母がこう言いました。


「誕生日のことやけど、ケーキ現物か、ガス代12月分免除かどちらがいい?」


 ……そのどちらかを天秤にかける以前の問題で、たとえわたしがいい大人だからって誕生日プレゼントがガス代免除なんてあまりに即物的だよ、母よ。オレっち、心に風穴開いちゃったじゃないかー。ケーキ現物って言い方も、なんつー味気のない。ガス代を2倍払ってでも、わたしはケーキが食いたい。っていうか、その質問をされるなら、むしろ何もないほうがいい。

  と、母に返しました。


「それもそうやね、いや、失敬失敬」

 と故・植木等さんのような調子で片手で拝んでいました。


 なんか、合理主義と経済自由主義の論理がじつに端的に表れた言葉だと思いました。経済活動における意思決定を最大限個人に委ねるという行為を、誕生日を祝うという観念的だけれどきわめて根源的な人間の感情に伴う営みでさえお金で相殺そうさいしようという思考・あるいは世相によることから出る、またはそのことが裏付けされる言葉だからです。

 確かに、相殺するという行為は合理的であるといえます。祝う側としてはプレゼントを選んだり買いに行ったりする手間を省けますし、祝われる側もガス代支払というお金が絡む己の義務から解放されるわけですから。時間とお金が等価として交換され(なにかと忙しいため時間を惜しむ母とガス代を支払いたくないわたしの利害の一致)、プレゼントの譲渡に伴うお互いにかかるリスクは最小限に抑えられます。とても効率的ですね。

 ですが、せっかくの人間の営みとしては何とも無味乾燥ではありませんか。現代社会の無味乾燥部分を誕生日くらいは目にすることをまぬがれたいものです。 


 金の斧がケーキだとしたらですね、現物そのものはなくていいから、お祝いの気持ちがほしいですね。いくつになっても、誕生日を親から祝ってもらえるというのは有難く嬉しいことです。



そもそもガス代免除は銀の斧に成りうるのかという根本的な問題もある。

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