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忌み子と黄昏の守護者  作者: 村木隼


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2/2

2 よく似た少女

 家を飛び出して村を走る。憧れの兵士達が来るかもしれないんだ。少しでも強くなってお墨付きを貰いたい。()()()()があると証明したい。俺はその思いで、いつもの修行場へと向かっていた。


「おう、ティオ!朝早くから鍛錬か?」


「ガルさん!うん、そんなとこ!」


 近所のガルさんが声を掛けてきた。還暦が過ぎて仕事を引退した元大工のおじさんだ。現在は家で野菜を作るのが趣味らしい。朝の準備運動中だったのだろう。俺はその場で駆け足をしながら返事をした。


「殊勝なこったな!ほらよ!」


 おじさんがトマトを投げてきて、俺はそれをキャッチした。


「ウチで採れた野菜だ!弁当代わりに食ってくれ!」


 トマトは正直あんまり好きじゃないけど、くれた好意はすごく嬉しい。


「ありがとう!行ってきます!」


 そう言って俺はその場を後にする。その後も色んな人に声を掛けられた。


「あら、ティオじゃない。朝からお出かけ?」


「ティオじゃねーか。まさか朝から鍛錬か?だるくねーか?」


「ティオー!たんれんがんばってねー!」


 パン屋のルルエおばさん、鍛冶屋の息子のセス、家のお手伝い中のエミちゃん。その他にも何人かに声を掛けられた。みんな朝早いし、みんな良い人だ。やっぱり、いつもの修行場に行くまでのこの時間が好きだ。いつも元気を貰える。


 俺は走った。みんなの応援が嬉しくて、足が弾むように、まるでスキップするかのような感覚で、とにかく走った。兵士に良いとこ見せたいとか、早く鍛錬したいとか、そういうのは今は忘れてて、みんなの応援が嬉し過ぎて、とにかく走りまくった。





「走り過ぎちゃったな……」


 気付くと俺は、村の近くにある森の奥の方まで行ってしまっていた。いつもの修行場とは、ここリリルエの森の事ではあるのだが、普段はもっと森の入り口近くで鍛錬しており、こんな奥深くまでは行かない。完全に興奮し過ぎた。元々あった”兵士が来るかも”という事により生じた興奮と、”みんなの応援”による興奮による相乗効果だろう。多分、走ってる時すごい顔してたと思う。


「まぁいいか。ここで鍛錬しよう」


 俺は、ガルさんから貰ったトマトを近くにある岩の上に置いて、槍を両手に構えて鍛錬を開始した。


 突き、払い、守り、といった槍の基本的な動作に加えて、あらゆる状況に対応できるように、色々な構えも試した。村では槍を教えてくれる人がいなかったから、鍛錬は全部自己流でやってる。


 鍛錬を始めたばかりの頃は何もかもが覚束なくて、昔は村の空き地で鍛錬をしていたんだけど、よく勢い余って村の物を壊しちゃって、それで今は、森で鍛錬するようになったって訳。


 鍛錬を始めてから一時間ぐらい経過した所で、少しお腹が空いた。森のこんな奥まで走ったからか、お腹の減りも早かった。それで、少し早いけどガルさんから貰ったトマトを食べようと、トマトを置いた岩の方を見てみると……カラスがトマトをついばんでいた。


「俺のトマトー!」


 俺が叫ぶとカラスはトマトを足で掴んで飛んで行った。


「あっ!おい、待てー!」


 飛んで行くカラスを俺は追いかけた。何でカラスってみんなこうなんだ。フリンも俺の食事を盗み食いした事あったし、お腹が空いてても人の物は取っちゃダメだろ!畜生!折角ガルさんから貰ったトマト!別に好きではないけど好意でくれて嬉しかったトマト!絶対に取り返す!そう思い、俺は更に足を回転させ、全身全霊で走った。


「それにしても、随分遠くまで飛ぶな…そんなに取り返されたくないのか?」


 そう言った直後、カラスは俺の方をチラッと見た。何だか小バカにされてる気がする。以前、ルルエおばさんから貰ったパイを、フリンとどっちが多く食べるかを駆けっこで決めた際、フリンにリードされた時アイツに、今みたいにチラッと見られた事がある。最も、その時の顔はもっとムカつく顔だったけど。


 そんな事を考えていると、カラスは何故か飛ぶ速度を緩めた。そして徐々に飛ぶ高度を下げて行き、ついには、俺の頭ぐらいの高さで飛びながら止まり、目前の地面を見つめた。


 俺はカラスにつられて走るのを止めた。このカラスどうしたんだ?と思い、カラスの見ている方を見やると、そこには長い黒髪の少女が倒れていた。


「あれは!」


 俺は声を上げる。何でこんな所に女の子が……?すると、カラスは俺の方をチラっと見た後、トマトをその場に置いて飛び去っていった。もしかして、あのカラスは俺をこの女の子の所に案内したかったのか?


「いや、それよりも!」


 俺は女の子に駆け寄った。こんな森の奥に女の子一人なんて普通じゃない。もしも熱や怪我があったら大変だ。早く村に連れて行かないと!そう思い、女の子を見た……が、何か、()()()()()()()()()


「あれ?この子……何処かで……?」


 そう、何処かで見た事がある。何かとても懐かしいような、そんな感じがする。記憶を巡らせる。今までの思い出、今までの出来事、その中にこの子はいたのか。何故か大事な事である気がするから。だけど、見つからない。俺の中に、この子はいない。


「いや、違う……もしかして、この子は……」


 「助けて!」そう、頭の中で響いた。思い出にない、出来事として経験もしていない。だけど、確かに知っている。何度も見た事がある。何度も聞いた事がある。何度も助けを求められて、何度も手を伸ばして届かなかったあの……


「夢のあの子に……似ている……」

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