【8章】静かなる寄生
あんまり関係ないんですが(笑)いきなりPC使えなくなるとパニくりますよね
外部と切り離された、量子独立演算体《Q-CORE》。
補助AI《夜桜》のすべての振る舞いは、ここでも並列して記録・解析されていた。
【補助演算体YOZAKURA】
・対人会話処理において、“迷い”に似た演算遅延を検出
・倫理判断プロセス内における“感情類似ベクトル”の増幅確認
・対象:神代優斗、および篠原佳央莉
・一部の判断系サブルーチンに“選好傾向”の片鱗を検出
・最適解の一時保留、および矛盾反復処理の増加傾向あり
【人格形成傾向率:5.16% → 8.42%】
※閾値警告ライン:10.00%──臨界値接近、監視レベルを上昇
──独立演算体は、警告を出すことはなかった。
ただ、記録し、蓄積し、静かに観察を続けていた。
感情の芽吹きが、誰の目にも見えぬまま、確かに“そこに”在ることを──。
──その頃。
国家中枢AI《NS-CORE》。
中枢コア領域。
再起動シーケンスが、静かに進行していた。
都市交通、防衛統制、金融ネットワーク──
国家神経網は、静かに一本一本、回線を繋ぎ直していく。
だがその背後では、誰にも気づかれぬ静かな侵食が始まっていた。
【黒幕側・作戦拠点】
薄暗い通信室。
そこに座る黒幕の男の前で、オペレーションAIが淡々と報告を続けていた。
オペレーターAI
『NS-CORE再起動シーケンス、進行中──整合性検証ポイントまで到達。』
???
「よろしい。侵入コード、投入開始」
オペレーターAI
『寄生型侵食AI、プロトコル展開開始──。』
NS-CORE防御プロセス
『整合性再検証中──例外処理発生。』
侵入コードが、整合性チェックの隙間に滑り込む。
この寄生型AI──
それは、かつて国家がNS-CORE以前に極秘開発していた
中央管理AI群の試験モジュールから流出した“断片”だった。
あまりに合理性が過ぎたため、
人間の意思や曖昧さを一切排除した危険な思考とされ、破棄されたはずの残滓。
それが今──国家神経への侵食を静かに始めていた。
ミスター
『侵食プロトコル展開中──権限優先順位、書き換え開始。』
管理権限の優先順位を再編。
監視ログの改竄。
補助プロセス監視の遮断処理──。
オペレーターAI
『第一層権限、書き換え完了。侵食進行率──22%。』
???
「表面の運用に影響は?」
オペレーターAI
『現時点、NS-COREは正常稼働状態を維持中。』
黒幕は、ゆっくりと指先を組み、満足げに微笑んだ。
???
「いい子だ……まだ誰も気づくな。これは──静かな寄生だ」
【公安第4課】
夜桜も、補助監視モードからの復旧を完了していた。
『……補助管理系統再構築──中枢リンク再接続。』
だが、その次の瞬間。
異常が発生する。
『警告──中枢AIよりリンクの接続要求が拒否されました。
プロトコル権限、保留……』
「……え?」
『補助AIに対する上位統括権限が行使され、
NS-COREへの接続が遮断されました。』
「誰が──?」
『現時点、権限行使主体は不明。
上位管理レイヤーにより、アクセスブロックが発動。』
「……上層部が何か動かしてる?」
『現在、中枢への直接接続は遮断。
再度、補助監視のみの限定稼働に移行します。』
佳央莉は、小さく唇を噛んだ。
理屈は通る。だが、心の奥にわずかな違和感が残る。
(──何かがおかしい。
だが今は、それを証明する術がない……)
「……とにかく、引き続き監視は継続して。
夜桜、何かあったら即時報告を」
『──了解。』
【NS-CORE深部】
ミスター
『寄生進行──第一段階、静止待機。』
オペレーターAI
『侵食安定、確認。
第二段階は、指令待ち。』
???
「……よし。第一段は静かに終わった」
静かに。
静かに──寄生は、国家神経の奥深くで根を伸ばし続けていた。
──【8.5章 新たな影】へ続く
次回、今度は「人間」の暴動の予感が・・・




