表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
49/52

【43章】偽りの守護神

原潜ひのもと・観音崎灯台下



優斗たちが本拠地脱出に成功した頃、ひのもとは気づかれることなく

観音崎灯台下まで進行していた。



「三笠の時間稼ぎは成功のようだな……

よし──ハープーン発射。目標、海神(わだつみ)



『了解。UGM-84ハープーン、魚雷発射管より装填開始。

目標第三海堡跡、海神。』



真壁は艦長席に深く腰を沈める。背後のターミナルが淡く点灯していた。

ただ機器の駆動音と、AI《天照(あまてらす)》の応答音だけが響く。



──



第4課・管制ルーム


「今度はなに!?」


優斗を搬送中の夜桜が異変をキャッチしていた。


『観音崎灯台付近に単艦艦影あり。これは……未登録潜水艦のようです。

識別不能。』


「次から次に……また真壁ね……」


佳央莉は観音崎灯台のカメラを素早くジャック、周辺を注意深く見渡す。



「このあたりよね……倍率変更、っと──

──!?なにあれ!……まさか軍用潜水艦!?」


佳央莉は慌てて海神を起動した。


「なんであんなものが出て来るのよ……」



──



原潜ひのもと・管制室


『ハープーン魚雷発射管装填完了。発射シーケンスに移行します。』


真壁の眼鏡に光が反射する。

その口元に、ふっと笑みが浮かぶ。



「私の最高傑作だった……だが、敵の手に渡すくらいなら。

──“神”にも、弔いは必要だろう」



──



第4課・管制ルーム


「海神チャージ30秒完了、威嚇になればいいわ。

照準合わせ、正確さは後回し!速さで勝負よ!」



──



原潜ひのもと・管制室


『ハープーンミサイル発射チューブ加圧──

燃焼剤安定──安全ロック解除。

ハープーンロックオン完了。発射許可待ちです。』


真壁はすかさず指示を下す。

「撃て──」



──ゴゥン……



──バシュウウウッ!!



亜音速ミサイル”ハープーン”が魚雷発射管から発射された。

その“鋼の死神”は、水面を切り裂き低空で海神へ向け一直線に進む。




──



第4課・管制ルーム


「先に撃たれた!?こっちも発射よ!」



──ドゴオォォォ



海神からもチャージ30秒に短縮された砲撃が放たれた。



「真壁のやつ……ハープーンなんかどこから……!

海神への到達時間、15秒後!」



──



原潜ひのもと・管制室


「フッ……光学迷彩開始。同時に急速潜航」


『了解。光学迷彩、急速潜航共に開始。』



ひのもとは一瞬で姿を消した。同時に水中へ潜航を開始する。



「よし、次は……」



次の標的を第三海堡遺構に設定し、トマホークを叩きこもうと画策するはず

だったが──



──



第4課・管制ルーム


「消えた!?」


佳央莉はひのもとが一瞬で消えるのを目撃していた。


「光学迷彩……真壁の技術力じゃ、あんなもの造れないはず……」


佳央莉が呟くと同時にひのもとから放たれたハープーンが海神に

到達、砲台底部から爆発を起こした。海面が火柱に包まれ、施設全体が

一瞬で沈黙した。


一方、海神からの威嚇射撃は明後日の方向へ飛翔していった。



紅蓮の炎となり、燃え滾る火柱となった海神を、佳央莉はモニターで越しに

見つめる事しかできなかった。

その炎は、夜空を押し返すように立ち上り、やがて崩れるように海面へと

吸い込まれていく。



「今回は、してやられたわね……」



砲台の輪郭が海の闇に溶けていくと、管制室には冷却ファンの低い唸りと

機器が時折吐く短い電子音だけが残った。



──



原潜ひのもと・管制室


「キャッチされた…あの大佐め、余計なことを…」


真壁は天照を通じて、ひのもとが何者かに存在をキャッチされたことに

気づいた。


「ここまでか。現海域を離脱、外洋へ向けて出航」


『了解。ひのもと外洋へ向けて出航。』



真壁は艦長席へ座り直す。



「今回は私の負けだ……しかし!Project Mは……私の合理は終わってはいない!

そして……

神代優斗を葬れたか、この目で確かめられないのが心残りだが、

公特第4課……必ずこの手で叩き潰す!」



──



──真壁の原潜“ひのもと”が、光学迷彩で海中へと消えた。


モニターには、何も映らない。

ただ、遠くで波が崩れる音がマイクに拾われ、かすかにスピーカーから漏れていた。


佳央莉はしばらく、穏やかに月明りを反射する海を画面越しに見つめていた。

爆炎の余熱がまだ残るような気がする。


――そんな錯覚の中で

やがて、誰に言うでもなく──ぽつりと呟く。



「……私たち──あんなのと戦って……勝てるの?」



その声には、皮肉も、怒りもなかった。


ただ、圧倒的な戦力差を見せつけられた“現実”だけが、そこにあった。



──【44章 目覚めたら】へ続く


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ