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【42章】暗転

第4課・管制ルーム

佳央莉は夜桜に通信で確認を入れる。



「ところであなたたち、脱出は順調なの?」



『はい! 真壁の逃走用通路はもうすぐ終わりそうです。出口までもうすぐ──』



「了解。……その出口付近にクラウン、回すわね。予定座標送っておいて」



『お願いします!』


 

佳央莉は通信終了後、座標をセットし、クラウンを管制ルームから

AIドライブモードに変更させた。


その後、少しだけ苦虫を嚙み潰した顔で



「JSAの応援、呼んだの無駄になっちゃったわね……

あとで何て言おうかしら……」



──



真壁本拠地・非常通路



優斗が左肩を押さえながら、小さく呟いた。



「……やっと出口か。長い夜だったなぁ……」



『ほんとですね。真壁に逃げられたのは残念ですけど……』



「いや──絶対逃がさない。必ず捕まえるさ」



その目には、再び鋭さが宿っていた。



──



原潜ひのもと・管制室


「三笠も撃破されたか……しかし時間稼ぎにはなったな」


真壁は顔色を変えることなく、本拠地爆破コントローラーを握る。

ゆっくりと起爆スイッチに親指を乗せた。



「さて……これでさよならだ神代優斗……フフフ……ハハハハハハ!」



──



真壁本拠地・地下1階



『優斗さん!やっと出られますね!』



「ああ、とりあえず戻るけど、すぐに真壁追跡するぞ」



『えー……あんなにがんばったあとなんですから、少し休んでからでも──』



「そんなこと言ってる間に真壁はどんどん逃げちゃうだろ」



『そんなこと言ったって優斗さんケガしてるんだから無理はだめですよっ!』



「もう治った。大丈夫」



『そんなすぐ治るわけないじゃ──』



その時、夜桜の義体内アラートシステムが突如反応した。



『!?優斗さん伏せて!』


「え?」



──ボゴオォォォォォォォォン



突然床下が盛り上がり、そのまま爆発した。



『優斗さん!』


「ぐっ……!」


優斗は胸のポーチからナノゲル衝撃吸収パックを引き抜き展開する。

パックは一瞬にして優斗の体を包み込んだ


が──


「ぐあああっ!!」


爆風で飛んできた鉄筋がパック展開より一瞬早く、優斗の右目に深々と

突き刺さった──


視界が、赤に染まる。

声にならない痛みが、意識を白く染めた。



──



第4課・管制ルーム

 


「……三尉、応答してください」

「……こちら管制、状況は?」

「……三尉?」


 

第4課の管制ルームで、佳央莉は一人、焦り始めていた。

静かにモニターを覗き込む。


 


──ノイズ。


──モニターが一瞬、揺れた。


 


「バイタル……ロスト?……JSA部隊、全員の反応が……消えた」



佳央莉は言葉を失ったまま、画面を見つめていた。


 

映像の向こうには、崩れ落ちた地下通路──

瓦礫、塵、そして、沈黙。


 

──映らない。


誰の姿も。



佳央莉は、小さく息を吐いた。



「……無駄になっちゃったわね、本当に」



その目は、ただ真っ直ぐに冷たかった。



──



『──優斗さん!?』


爆風が止み、わずかに舞っていた粉塵がゆっくりと沈んでいく。

夜桜は、崩れかけた床の中で倒れた優斗の元へと駆け寄った。



『……優斗さん、しっかりしてください……優斗さん……!』


 

右目からは、鮮血が滴っていた。

呼吸は浅く、意識も朦朧としている。


 

夜桜はすぐに義体の応急処置プロトコルを起動した。

止血材を展開し、衝撃で歪んだ瞼をそっと持ち上げる。



『右目──破損、視神経断裂の可能性……脳の一部に損傷あり……』



夜桜の動きは冷静そのものだった。

だが、その声は、僅かに震えていた。



「……な……にが……お……き……」



優斗がかすかに声を漏らした。



『もう大丈夫です!しっかりして!』


夜桜は優しく、けれども確実な力で優斗を支えながら立ち上がる。


しかし──


夜桜の義体も実は無傷ではなかった。



先程の戦闘での腹部亀裂が応急修理状態になっていたが、爆発の影響で

亀裂が開いてきていた。


「パワーダウン……優斗さんを連れて歩くには、もうもたない……」



あきらめかけたその時



その背後で、微かにエンジン音が響いた。


──キィィィ……ッ


瓦礫の奥から、自動運転された優斗のクラウンがゆっくりと滑り込んでくる。

無人のまま、助手席のドアが自動で開いた。



『佳央莉さん……』



優斗の専用デバイスから佳央莉の音声が流れる。



「こっちは準備完了。すぐ離脱して。そこ、長くは持たないわよ」



夜桜は頷くと、優斗の体を抱え上げ、助手席へと慎重に乗せる。

シートベルトが自動で巻かれ、夜桜はその横にそっと腰を下ろした。



「目が……」



優斗の右目は完全に潰れていた。



夜桜は優斗の手を静かに優しく握った。


 

『大丈夫です。きっと元に戻ります。』



夜の港へと向けて、クラウンが静かに走り出す。

崩れた施設を背に、光も音もなく──。


 

その車内に、言葉はなかった。

ただ、傷ついた青年と、彼を守るように座るAIの少女がいた。



そして、夜桜の視界には──

血で赤く染まった手と、まだ温かい優斗の体温が、確かにそこにあった。


 

──【43章 偽りの守護神】へ続く



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