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【37章】禁忌

※本作は作中の表現に暴力性や差別的言語を含む場合があります

「おのれ…第4課……絶対に許さん…

まだ使う予定ではなかった……だが、こちらも最善の手を打たねばならん」



──真壁は電話をかけ始めた。



やがて電話に出た相手は、電話口の向こうで真壁に捲し立てる。


「ヘイヘイ、ミスター真壁。私はBrownellsのバイヤーじゃないって

言ってるだろ。

夜寂しくて連絡してきたんだったら本国から来てるNight Escort2,3人

呼んでやるぞ、普通の電話回線でな」



「これは失礼…ただちょっと急用でしてね」


「ついさっき車2台も都合してやったのにまだ何かあるのか!?こっちはこれから

Cxxxkと、いつドンパチやるかで大忙しなんだよ。あまりイライラさせて

くれるな!」



真壁はわざとらしく、ゆっくりと告げる。



「大佐……"ひのもと″を動かします…」


「What the hell, are you outta your fxxkin' mind!?

あれはFAO Schwarzで売ってるおもちゃじゃないんだぞ!?

国際問題をわざわざ作り出す気か!?」



「あれはG7の間ではとっくに暗黙の了解になってますから、ご心配なく。

これから横須賀の″下水”に通させていただきますよ…」


「Oh,MyGOD...

FAO Schwarzのおもちゃだけでなく、あれも使うのか!?

あれはBxxxhの股座みたいに気軽に開けっぴろげられるもんじゃないぞ!

私は本国になんて言えばいいんだ!」



「まぁ、お気持ちは分かりますが…ひとつよろしくお願いしますね」



大佐と呼ばれた男は、叩き切ろうとした受話器を握り直し、タバコにゆっくりと

火を点け、椅子に座り直した。



「…ミスター真壁。ビジネスといこうじゃないか。私もただで″はいそうですか”

って訳にはいかない。君の作ってる"いかついドール″たち、10体で手を打とう。

最近、中東方面も騒がしいもんでな…これで私も本国に顔を立てられる」



「さすが抜け目ないですな。分かりました、10体用意させましょう。

近中遠、どれを御所望ですかな…」



電話を切った後の大佐は上手く丸め込まれたことに腹の虫が収まらなかった。

火の点いたタバコを灰皿に捻じるように押し付けた。



「あのFxxxin' Japめ…ウォール街のエリート気取りか……

ミスター霧島もとんでもない男を紹介してくれたものだ…

彼の口添えがなければあんな男に…!」


大佐は忌々しそうに次のタバコへチェーンスモークした。



真壁は”商談"を素早くまとめるとオペレーターAIに改めて命令を下す。



「ここから葉山港までのルートを割り出せ」



『了解。……逗葉新道から国道134号線に続くルート…ほぼ一直線のコースです。』



逃走ルートの割り出しが終わったと同時に新たに命令を出す。



「フッ…切り札は一枚とは限らないのだよ…

海神(わだつみ)"起動――」



『了解。第三海堡跡、レールガンユニット《海神》──起動準備に入ります。』





夜の東京湾は静かに、穏やかに月明りに照らされていた


はずだった――



――ゴオオオォォォォォ……





夜釣りに出ていた船の釣り客は、ありえないものを見つける。



釣り客の一人が月明りに照らされた海面を指差した。



「…なんか海から出てきてないか?」



「気のせいだろ。こんな海の、ど真ん中に何が――」



次の瞬間、客たちは顔を見合わせる。



「何か海から出て来るぞ!」



そして船は突然左右に激しく揺れる。



「なんだあれ!なんだあれ!」



静寂を突き破るように突如、渦巻が発生する。

そして……突如発生した渦巻に、ただの釣り船は抗えるはずもなく、

水面に落ちた一枚の枯葉の如く吞み込まれていった。





穏やかだった海域に白い水しぶきが上がり、突如建造物が浮上してくる。

白い飛沫の間から突き出した砲塔は、濡れた岩のような装甲を滴らせながら、

ゆっくりと姿を現した。

海面に映る影が一瞬揺れ、まるで海そのものが何かを吐き出したようだった。



海神――海の神の名を冠した第二のレールガンは、

第三海堡跡に突然姿を出現し、天高く聳え立っていた。

その姿は、封印を解かれた神殿の奥から、双頭の海神がゆっくりと

這い出すように──天へとその砲塔を向けていた。



「こいつまで今、使う事になるとは……

いいだろう……第4課。私の合理が支配する、この地上から完全に

抹殺してやろう」



第三海堡はすでに役目を終えて海中で眠りについていた。

その”墓場″とも呼べる場所に真壁は新たな建造物を築いていた。



真壁は顔色ひとつ変えること無く淡々と指令を下す。



「目標――第二海堡」



『了解。軌道修正+20度。射角調整-30度。第一砲塔発射臨界まで6000秒。』



「エネルギー充填――120%」



『射出時のエネルギーにより砲台が劣化します。予想連続使用可能回数2回。』



「構うな。120%だ」



『了解。エネルギー充填120%。』



──グゥオオオオオオン……



海神は不気味な起動音と共にエネルギー密度を上昇させていく。



「まずは……不要なものを焼却だ」



──【38章 神の一撃】へ続く


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