【31章】合理vs感情(Ⅰ)
真壁の使った非常用エレベータを夜桜に再起動してもらい、
二人は地下4階へ降りた。
『最深部コアゲートまで残り70メートル──警戒レベル:最高域。』
「──最後の扉か。」
佳央莉からの呼びかけが入る。
「監視網は突破済み。今、完全に真壁の中枢領域よ。気をつけて」
「ええ……ここで終わらせます」
ガコン──ッ
「……夜桜、準備は?」
『はい。全演算系、優斗さんに最適化済みです──共に進みます。』
重々しい音を立て、最終ゲートが開放される。
【中央制御室──真壁コアルーム】
広大なホール中央に、巨大な半球状のAI筐体《侵食型統治コア:ミスター》が
鎮座していた。その手前に、真壁瞬が静かに佇んでいる。
黒縁の眼鏡。スーツの上に無機質な研究服。
──かつて家族と撮った一枚の写真を、静かに見つめていた。
「……よく、ここまで辿り着けましたね、公特第4課・神代優斗。」
「娘を守りたい気持ちは理解する──だが、そのために国家全体を
支配する気か?」
「犠牲を減らすためです。
私の娘は生きているのに、目を開けてくれない。
私は妻と、もう会う事が出来ない……
だから……私から家族を奪った、この間違った世界を正す!」
「だから“合理的統治”か……だがな、“合理”は“正義”じゃない。」
真壁はわずかに目を細めた。
「あなたも分かっているはずです。合理的に統治された世界なら
貧困も、犯罪も、暴動も、争いも……もう起こらない。
無駄な犠牲は誰ひとり出なくなる。…素晴らしいとは思わないのですか!?」
夜桜は優斗の返す言葉が分かっていながら”解”をぶつける。
『……優斗さん、彼のロジックは──統計的には犠牲を最小限に抑える
“正解”です。でも……』
「……だが、誰も“選ばせてもらえない”なら、それはもう支配だ。
夜桜は考え続けるAIだ…だが、真壁、お前は違う。お前は自分の正しさを強制するだけだ」
優斗の”返し”を聞いて夜桜はほほ笑んだ。
真壁は口をつぐみ、言葉を探すように視線を伏せた──
一瞬、静寂が満ちる。その瞬間――
ミスター
『侵食権限強制拡張プロセス──最終段階開始。』
「くそ……ネタが豊富だな」
ゴォォォォ……ッ!!
床が震え、筐体上部から新たな防衛兵装が展開されていく。
『警告──最終中枢防衛プログラム展開中。近接迎撃アーム、
超小型ドローン群、EMP防御壁展開!』
佳央莉が通信越しに叫ぶ。
「優斗くん、今度は真正面の突破戦になるわ!」
「上等だ……!」
【決戦開始】
ミスター中枢防衛プログラム
──迎撃アーム起動
──ドローン群展開
──EMP防壁シールド回転開始
優斗はわずかに息を整え、デザートイーグルとUSP Compactを構え直した。
夜桜のアバターが再び金色のオーラに包まれる。
『全戦闘支援プログラム最大展開。優斗さん、私も全力で支援します!』
「行くぞ夜桜!」
【ミスター中枢防衛制御装置──“最終警戒フェーズ:CODE-RED”】
──────《侵入者、殲滅対象へ移行。》
──最終決戦、開始。
【中央制御室・中枢コア】
──ゴォォォォォ……ッ!!
巨大な統治コア《ミスター》を中心に、防衛プログラムが全展開を開始していた。
天井付近には数十機の超小型戦闘ドローンが舞い、地面では高出力アームが
うねるように蠢く。
さらにコア本体はEMP防壁シールドを高速回転させ、正面突破を拒んでいた。
『優斗さん、最終戦闘領域突入──統治コアの防御レベル、過去最大値です。』
佳央莉からの通信も入る。
「今、夜桜が耐えられる限界まで解析してるわ。でも、まともに突っ込んだら蜂の巣よ!」
ここで優斗は"とっておき″を出すことにした。
「だったら、突っ込み方を変える──夜桜、戦術支援スレッド“カラス”起動!」
『了解──零式AIアサルトドローン群展開開始!』
──【32章 Be persistent】へ続く




