表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
27/52

【22章】襲撃

横浜・ふ頭方面 ──夜


ホワイトにブラックのアクセントが入った優斗のクラウンが、街灯の少ない

海沿いの道を静かに滑っていく。

助手席には義体・夜桜が控える。


その外見からは、これから“戦場に向かう者たち”には見えない。


「……後方、ついてきてるな」


『はい。民間偽装型ドローン、6機。照準収束中です。』


「……EMPいこう。後方だけでいい」


夜桜が助手席のサイドコンソールを開き、小型モジュールに指を滑らせる。


『EMPユニット作動──発射まで、3秒。』


パシュッ!


後部下部から青白い光が円状に拡がり、静かに破裂した。

ドローンたちは、制御を失い、火花を散らして次々と墜落していく。


だが、沈黙は長く続かない。


前方──コンテナ群の間から、量産型の警備用アシストロイドたちが現れた。


「前も出てきたか。……夜桜、止めて」


『了解。』


クラウンが急制動をかけ、滑り込むように停止する。

優斗は無言で車外に出ると、後部トランクに回り込んだ。


──「カチリ」──


トランクが静かに開く。


中に格納されていたのは、公特仕様のHK416D。


HK416 "KAMISHIRO Urban Raid Custom"


11インチバレル


マグニファイア付きホロサイト


サプレッサー非装着


前後バーティカルグリップ


高圧スラッグマガジン仕様



優斗はHKを無言で手に取り、肩に担ぐ。

そのままボルト操作、マグチェック、前傾姿勢。



夜桜は反対側からMRADを引き抜き、分解状態からの迅速な組立を開始。


──フレームロック。

──バレル接続。

──スコープ起動。

──.338 Lapua Magnum装填。


音は最小限、動作は精密。

それはまるで、精密機械が二体、同時に稼働したかのようだった。




コンテナの隙間。

無数の金属音。

──動く影。


量産型警備用ロイドが、反応するように姿を現す。

優斗はHKを肩に担ぎ、その場で滑らかに装填・初弾送り込み。

その動作に、無駄な所作は一切なかった。


『優斗さん、前方にロイド8体。中距離に3体、ライフル所持です。』


「任せろ。制圧する」


──ダダダダダッ!


HKが唸る。マズルフラッシュが夜の倉庫街を照らす。

優斗は膝をつき、低姿勢からの速射で正確に1体ずつ潰していく。


反動が肩に食い込むたび、指先の感覚だけが研ぎ澄まされていく。


仕留めきれなかった2体が、なおも突進してくる


夜桜は後方車体横に伏せる。

照準ライン、補正完了。風向きを計算する。

その動作は、もはや機械ではなかった。



──ズドン。

──ズドン。



銃声が波音に吸い込まれ、ロイドが爆ぜるように崩れ落ちる。



『……残存ゼロ。全機、沈黙確認。』


優斗は一度だけ、息を吐いた。



彼らは銃をトランクに戻し、クラウンへ乗り込む。

再び走り出したその背後に残されたのは、残骸になったロイドと砕けた破片の山、

焦げついた鉄と、夜風に漂う硝煙の匂いだけだった。



──【23章 第4課、南へ】へ続く

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ