【21章】戦闘準備
第4課・装備準備室──
静まり返った室内に、優斗の準備動作だけが淡々と響いていた。
佳央莉が背後から声をかける。
「病院でのことはデバイスで聞いてたわ…応援は……待たないわよね?」
優斗は、優し気な笑いを軽く浮かべながら
「もちろんです」
夜桜が続く。
『私たちが、終わらせます。』
「…言うだけ無駄だと思うけど…無茶しないでね」
「無理はいいんですね?」
「怒るわよ(笑)」
『佳央莉さん、私が優斗さんを守りますから。』
「…夜桜、優斗くんをお願いね」
佳央莉はそれだけを言い残して準備室を後にした。
準備をしながら優斗は、ほとんど独り言のように呟いた。
「……今回は、最初からフル装備でいく」
優斗は静かに、しかし一切の迷いなく戦闘装備を身にまとっていく。
──左上腕部:ナイフホルダー
・ONTARIO GEN II SP48 Tactical Blade
・"KAMISHIRO Tactical Mod"(逆手抜刀仕様・補強スリット加工)
・スピンバランスは自ら調整済み。
──サイドアーム(右腿):H&K USP Compact
・"KAMISHIRO Custom Ver.1.5"
- スレッデッドバレル(サプレッサー対応)
- ナイトサイト搭載
- トリガースプリング軽量化
- マットブラック反射防止仕上げ
- 消音デバイス分離運用可能
スライドを引き、抑えた金属音が静かに鳴る。
──サイドアーム(左腿):Desert Eagle Mark XIX(.50AE)
・"KAMISHIRO Custom Ver.β"
- ポート付きバレル
- マズルブレーキ装着
- ラバーグリップ加工
- カスタムショルダーストック対応ホルスター
- 特注マグナム弾(徹甲・AP仕様)装填
その巨躯は、明らかに生身の兵士が扱うには過剰な火力だった。
だが優斗は、それを迷いなく腿に固定した。
「これが必要にならないといいが…」
──胸部ポーチ
・H&K USP Compact用オーバーロード弾倉
・特殊弾(貫通型/EMP弾 H&K USP Compact・Desert Eagle共)
・携行ナイフスティック補助ユニット
・次世代戦闘補助材・ナノゲル衝撃吸収パック(※生体反応対応型)
──戦闘ジャケット背面
・公特第4課・徽章(八咫烏)
・迷彩マットブラックのタクティカル生地
──バックサイドラック
・Franchi SPAS-12
・"KAMISHIRO Tactical Ver.0"
- 折り畳み式ストック
- ピカティニーレール拡張
- 近接戦対応バレルカット
- セミ/ポンプ切替可
- 12ゲージ拡張スラッグ弾装填
その重量が、背中に静かにのしかかる。
──最後に背負ったのは:
・展開型サバイバルバッグ【KAMISHIRO Tactical Pack Ver.3】
-標準状態では厚み9cm、戦闘時は最大18cm拡張
内部格納:
・観測補助ドローン群《カラス小隊》
・各種拡張バッテリー
・折り畳み式制圧フェンス展開ユニット
・簡易医療ユニット
・臨時遮断ジャマーキット
『カラス群ユニット、展開準備完了──全ユニット、連携演算正常です。』
義体・夜桜が報告を上げる。
優斗はわずかに笑みを浮かべた。
「……頼もしいな、夜桜」
『……はい、優斗さん。今回で決着です。全支援を展開します。』
通信越しに、佳央莉の声が重なる。
「二人とも、必ず戻ってくるのよ。
……しっかりね、夜桜」
優斗は一度だけ、力強く頷いた。
「……行ってきます」
(……これで終わらせる)
『優斗さんは、私が守ります。』
【Q-CORE Ethics Log: Access Code 04-Δ】
時刻:202X年7月15日 16:42:08 JST
オペレーションコード:#OP_K-221_YOKH
対象システム:YOZAKURA-module
ドローン群《カラス小隊》演算同期:正常
戦闘予測データ取得モジュール:起動済
倫理補助演算モード:稼働中
記録:
「この行為に、正当性はあるのか?」
「破壊は避け得ぬとしても、希望を残すことはできる」
「……ならば、彼と共に進もう」
演算結果:
行動評価──容認(支援優先)
情動同期──微弱反応確認(成長傾向)
補助フラグ:支援展開/随行許可
──ログ記録終了。
無人となったブリーフィングルーム。
佳央莉は一人、暗い照明の下で通信端末を操作していた。
「……第4課、指揮権限《C2-α》に基づき、外部支援ユニットへ密命。
──“必要最小限の応援を、彼らに知られないように”」
佳央莉は優斗たちには内密に応援要請を出していた。
相手は”JSA”。
彼女はわずかに目を伏せた。
「……あの子たち、死なせるつもりはないから」
公特第4課──すべての準備が整った。
静かに、しかし確実に──決戦突入の時が迫っていた。
優斗と夜桜が、最終確認のために専用デバイスを再接続したとき──
「いい? 優斗くん。真壁の本アジトは“横浜ふ頭”。霧島長官もそこに──」
佳央莉から専用デバイスに通信が入る。
「真壁のダミー会社は、海外へ戦闘用ロイドを密売してる。
製造は千葉・木更津倉庫、輸送ルートは海。横浜から輸送船でランデブー。
暴動地域を千葉市より下に下げなかったのは、アジト周辺の警備強化を避けるため
──おそらくそういう意図ね」
佳央莉の声色が、少し落ち着いたものに変わる。
「横浜の本アジトには、おそらく戦闘用ロイドやドローンが配備されてる。
二人が突入すれば、戦闘データを採取するはず。輸出前の“実験機”が出てくる
可能性が高いわ。……気をつけて」
夜桜がナビモードで答える。
『優斗さん、アジトまで誘導します。』
「場所の特定は終わってる?」
『はい。佳央莉さんが霧島長官の信号をキャッチしました。
ただ……意図的に発信された可能性が高いです』
「……了解。とにかく、行こう」
『了解しました!』
──【22章 襲撃】へ続く




