表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
13/52

【ご案内あり】【1章】暴動に突き立てる牙

※以前プロローグ〜第3章までを1話にまとめて投稿していたものを

 話数ごとに分割しました。

 本文に大きな変更はありません。

 すでにお読みくださった方は第4章からお読みいただければ問題ありません。


【プロローグ】


牙を授かりし者たちの詩 ─進化する機械に揺らぎと花束を─



この世界には、戦いしか知らない“詩人”がいる。

殺しの技術、タバコの匂い、硝煙の熱──


すべてをその胸に宿して、それでも彼らは生きる。

牙を授かった者たちが綴るバラード。


牙を授かりし者たちの詩 ─進化する機械に揺らぎと花束を─


《AIの奴隷になるか、AIをパートナーにするか──》



***



埼玉県・第3エリア──暴動拡大の震源地。


街の機能はすでに崩壊し、無人のAIタクシーがボロボロになって

歩道に乗り上げていた。


周囲には火の手が上がり、誰もが逃げ惑う“戦場”と化している。




優斗(ゆうと)は、防護ジャケットに腕部端末を固定しながら

クラウンクロスオーバーに乗り込んでいた。




クラウンのスピーカーから、イントロのハイテンションドラムソロが鳴り響いた。

「HOT FOR TEACHER」──優斗のテンションが静かに上がっていく。




優斗のクラウンは『4課特別仕様』になっている。


防弾ガラス、ランフラットタイヤ、チタン合金製ボディにケブラー繊維を

織り込んだ内装。


エンジンはハイブリッド機構は同じだが、排気量は5ℓにアップされている。


そして”OSIRIS-K4”ミニサーバー搭載。


これにより優斗のクラウンは、優斗の“AIバディ”、夜桜(よざくら)による

完全自動運転が可能だ。






ほどなくして現場に到着した。




太腿のホルスターにはH&K USP Compactと、腰にサブのショットガンが控える。


左腕上腕部にONTARIO GEN II SP48も仕込んだ。




耳元には専用デバイスに接続されているイヤホン。夜桜とのリアルタイム接続は

常時オンだ


メガネを外し、ダッシュボードの上に儀式のように置く。赤い女性向きの

デザインだ。


優斗はこのメガネを愛用しているが戦闘時には置いていくことにしていた。






突入前、夜桜のアバターが優斗に向けてわずかに微笑を浮かべた。

今は活動的なポニーテールに髪をまとめている。


小首を傾げる仕草はまだ健在だが、反応は人間の表情に近づき始めていた。



佳央莉(かおり)さんから通信が入る。


「ゆ──じゃなかった。神代警部補(かみしろけいぶほ)、夜桜、聞こえますか?

その近辺には”NS-CORE”の予備施設があります。作戦遂行には充分

注意して下さい」



「そうだったんですか…何か、きな臭いですね」



「今は暴動を止める方が先よ。優斗くん達は無理しないで調査報告を

お願いね」



『状況確認は私が行います。大丈夫です。』


夜桜も佳央莉さんからの通信に答える。






暴動拡大の震源地まで接近、街並みはすっかり変わり果てていた。


アシストロイドとドローンだと思って油断していると危険だ──



『現場周辺の治安指数、臨界付近まで低下中です。AIアシストロイド

複数体が暴徒化、破壊行動を継続中。さらにドローン型物流AIも

一部暴走を確認。空間混乱指数は予測以上です。』



「つまり──まさに地獄絵図ってやつか」



『表現解釈:一部妥当です。』



優斗は苦笑し、ショットガンの固定具を一度確かめた


これまでの暴動とは明らかに質が違う。AIの「道具」たちが完全に

"兵器"へと化けていた。




前方では既に制圧行動中の機動隊の隊列が見える。


だが上空では暴徒化した物流ドローンが螺旋を描き、機動隊車両に

突入する



爆発音が響き、火花が散った



「夜桜、遮蔽ルート提案」



『推奨進入ルート提示──右方裏通りを経由し、中央施設へ接近可能です。

ただし周囲に4体の暴走AIアシストロイド存在。

装備武器確認:鉄パイプ、金属バット。』



「……散歩がてら相手してやるか」



優斗はクラウンのドアを開け、無言で拳銃を抜いた。


眼前では──ロイドたちがこちらを認識し、無音のまま、異様な“静けさ”で

近づいてくる。


本来は介護・運搬用だったはずのロイドたちが、今は暴徒の先兵と化していた。



「夜桜、支援は任せた!」



『随時情報更新を行います。十分ご注意を。』



一体目が突っ込んでくる。



優斗は冷静に膝を落とし、関節部めがけて発砲──

着弾した弾丸が関節のアクチュエーターを砕き、ロイドは転倒する。



だが背後から二体、三体が連携して迫る。


優斗は反転しつつ、拳銃から腰のショットガンへと素早く切り替えた。

至近距離、トリガーを引く。


轟音とともに二体目の胸部が砕け散る。

残骸が路面に転がった。



『追加接近個体──上空より物流ドローン2機接近。』



「ほんと、サービス満点だな……」



物流ドローンが急降下しながら進路を取る。機体下部には火炎瓶のような物体が

吊り下げられていた。


優斗は即座に建物の陰へと滑り込み、カバーから迎撃体勢に入る。



「夜桜、迎撃ルート!」



『カバー射撃ポイント維持。安定弾道、確保可能です。』



優斗は撃ち上げるように狙撃した。



一発目──プロペラユニットが弾け飛ぶ。


二発目──機体中央のリチウム電池を直撃。パシッと乾いた

破裂音と共に白煙と火花が噴き上がる。

わずかに遅れてバッテリーパックが膨張、内部ガスが逃げきれず


破裂──


細かな破片と炎が周囲に散り、吊り下げられていた火炎瓶が衝撃で砕け、

液体が炎を上げながら飛び散った。



『残存敵性AI、残り1体。戦闘継続可能です。』



「任せろ──片付けは得意だ」



優斗はわずかに息を整え、呼吸をひとつ沈めた。


(──堂島さんが教えてくれた呼吸。今なら、使いどころがはっきり分かる)


そして、最後のアシストロイドへと駆け寄った。




接近戦──

ロイドが振り上げた金属バットをかわしつつ、優斗は素早く左手のナイフを

引き抜く。


関節部を斬り裂き、駆動系に刃を突き刺す。

バチン、と火花が散り、最後のロイドも崩れ落ちた。



「──よし。クリアだな」



『エリア内暴走AIの鎮圧を確認。次の指示をお待ちします。』



優斗は煙の向こうを睨みながら、短く息を吐いた。



「まだだ──本番はここからだ」







瓦礫と焦げた煙が漂う路地──優斗は警戒を緩めずに進む。


いつもの愛銃


腰にはショットガン


腕にはナイフ


耳には夜桜からの音声が静かに流れ続ける



『神代警部補、前方にAIアシストロイド2体、暴徒化を継続中。破壊装備所持。』


歩道の先──暴徒化したAIアシストロイド2体。

さらに、上空には違法改造されたドローンが螺旋を描いて旋回している。



『ドローンに小型爆薬搭載を確認。危険です。』



「迎撃ルート、誘導頼む」



『右30度。遮蔽物あり。散弾射撃有効範囲内です。』



優斗は指示通り、素早く遮蔽物へ身を預けた


ショットガンを構え──

ズドン、と至近距離からの散弾が大型アシストロイドを吹き飛ばす



『1体撃破確認──ドローン接近速度上昇中。』



優斗は即座に拳銃へ切り替え、急降下してくるドローンの回転軸を正確に

撃ち抜いた。

破壊されたドローンは制御を失い、炎と共に地面へ落下した。



優斗の呼吸音が乱れるたび、夜桜のアバターはまるで息を合わせるかのように

わずかに眉を寄せていた。


冷静な報告の裏に、彼女自身も「怖さ」に近い何かを感じ始めているのが

読み取れる。




残るアシストロイドも突撃してくる。



ナイフを抜き、わずかに身を捻って右肩から組み付く。ロイドの関節部へ

刃を突き立てた。


内部駆動系統が破壊され、敵は沈黙した。



『戦闘区域内、敵性AI完全無力化を確認。』



「ふぅ……こんなもんか」




近県からも機動隊員を回してくれたおかげで、周囲では機動隊による制圧も進み、

暴動は鎮圧に向かっていた。



各AIデバイスにはリモートIDの発信が義務付けられているが、

今回の違法パッチによりリモートID信号は遮断されていた。

破壊された機体の回収は難航しているが、破損したデバイスを回収・解析すれば

所有者の特定自体は容易なはずだ。



──それにしても、暴動の規模が小さすぎる気がする。



あれだけフェイク動画をばら撒き、違法パッチやプロンプト汚染が出回っていた

にも拘わらず、AIアシストロイドやドローンの数が少なすぎる……。



「もう残弾も心許ない。あとは機動隊に任せて俺たちは引き上げた方が

よさそうだ」



『神代警部補、体力が平時の55%まで低下中。肉体的にそろそろ限界と

推測します。』



「そうだね、ちょっと無理しすぎたかな」



『メンタルとバイタルは引き続き安定、後10分ほど戦闘続行可能です。』



「ここで無理するより、ちょっと気掛かりなことが出来たよ。帰還しよう」



『かしこまりました。』



そこで帰還しようとした優斗に、突然夜桜が今までと違って意志があるような

様子で話しかけた。



『……優斗さん、今回の件──私、嫌です……データでは説明できない違和感……

嫌な予感がします。』



その声は震えていた。感情と論理の狭間で、夜桜の何かが軋んでいるのが

分かった。



優斗は驚きながらも静かに頷いた



「俺もだ。これは単なる暴動じゃない。間違いなく誰かが意図的に仕掛けてる…」



空を仰ぎ、ゆっくりと呟く。



「──ここまでは茶番だ。誰かが仕掛けてるなら……

こっちも、牙を突き立てるしかないな」



『はい──私も、ご一緒します。』




──暴動は沈静化に向かっていた。

だが──その背後には、まだ深い闇が横たわっていた




──【1.5章 道具か、パートナーか】へ続く

一応、軽く設定を紹介しておきますね。




夜桜:主人公・神代優斗の相棒AI。アバターは中学生くらいの女の子の姿で、わりとしっかり者です。




NS-CORE:日本全体の中枢管理を担っているAI。お役所よりは賢いです。




Q-CORE:NS-COREに直結している量子コンピュータ。本編でちょこちょこ出てきます。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ