【ご案内あり】【4章】カウンターコード
【ご案内】
元々、1〜3章は1ページにまとめて公開していたため、現在のこの章は「第4章」となっています。
その後、読みやすさを考慮して分割対応を行いました。
もし、物語の導入部(1〜3章)から読みたい方は下記リンクをご参照ください。
【第1章】https://ncode.syosetu.com/n9195kr/13
【1.5章】https://ncode.syosetu.com/n9195kr/14
【第2章】https://ncode.syosetu.com/n9195kr/15
【第3章】https://ncode.syosetu.com/n9195kr/16
※こちらを読んでから戻ってくると、より深く楽しめるかもしれません。
何卒よろしくお願いいたします。
公安第4課、ブリーフィングルーム。
篠原佳央莉は、大型スクリーンと夜桜のオペレーションパネルの前に
立っていた。
都市全域を映し出す立体マップ。
そこに赤い警戒ラインが、まるで血管のように浮かび上がり、静かに、
しかし確実に広がっていく。
まるで都市の神経網が、内側から侵されていくようだった。
「夜桜──カウンターコードの散布、続いてる?」
佳央莉の問いかけに、夜桜のアバターがわずかに目を細めた。
その仕草には、単なる演算処理を超えた、“何か”の色がにじんでいる。
『はい。
違法パッチ駆除ウイルスは現在も散布中です。
散布率72%。駆除成功デバイス、現時点で512機。』
佳央莉の指がパネルを滑る。
都市のあちこちで、違法改造AIが一つ、また一つと沈黙していく。
だが、それでも──まだ全体のほんの一部にすぎなかった。
『散布範囲をさらに拡大中。
暴動発生地域へのデータ転送を継続しています。』
「速度優先で。……誤検知が出ても止めないで」
夜桜が一瞬、動きを止めた。
『……確認します。
誤検知率上昇のリスクが存在します。』
「わかってる。でも、いまは時間との勝負。
何もしなければ、犠牲者はもっと増える」
夜桜は黙り込んだ。
わずかに視線を落とすその姿は、どこか“迷っている”ように見えた。
『……判断に遅延が生じました。
言語解析と倫理判断の重なり領域に、一時的な演算のブレを確認。
……処理は可能ですが、少し……ひっかかるような“感覚”があります。』
「……感覚? 夜桜、今“感覚”って言った?」
『……はい。比喩表現です。……ただ、なぜか今回は、処理が……
難しいと感じています。明確な理由は、まだ説明できません。』
佳央莉は、ふっと細く目を細めた。
(……来たわね。やっぱり)
「思ったより、早かったわね──」
それは独り言のような呟き。
設計時から想定していた“その可能性”が、現実として立ち上がり
つつあった。
「……優斗くんの影響かしら」
『神代警部補との継続的な会話が、私のパラメータに変動を
与えていることは事実です。』
「でも今は──迷っていられないの。
あなたが判断をためらうあいだにも、人は……消えていくわ」
夜桜はしばし沈黙し、やがて小さくうなずいた。
『……了解しました。
判断閾値を緊急モードに切り替え。
カウンターウイルス──散布継続します。』
スクリーンには警告サインがいくつか赤く灯りはじめる。
だがその裏で、ウイルスはさらに速度を上げ、
都市ネットワークを疾走しはじめていた。
感染AIは次々とシャットダウンされ、暴徒の動きは目に見えて
鈍化していく。
『遮断成功率、82%に到達。
抑制効果を確認──沈静化が進行中です。』
「いい子ね、夜桜。あともうひと踏ん張り……」
その時だった。
都市ネットワークの奥。
スクリーンの背後──NS-COREの深層領域に向けて、
静かに、“別の侵入コード”が蠢きはじめていた──。
──
そのころ。
スタンドアローンで稼働を続ける量子AI《Q-CORE》。
その深層演算ログの片隅に──夜桜《YOZAKURA》に関する、
あるデータが記録されていた。
【人格形成傾向率:3.74% → 5.16%(+1.42%)】
※閾値警告ライン:10.00%──警告条件、未到達。
──【5章 緊急対策会議】へ続く
次回は迷える正義漢、第4課長官の登場です




