第2話 お礼はクッキーと… (改)
麗奈と別れ、家に帰宅した俺は、自室のベッドに倒れ込んだ。
「うぁー……なんで、助けちまったんだろう……いや、人を助けるのは“いいこと”なんだ……でも……」
もやもやしたまま、突然頭の中に悪夢のような声が鳴り始めた。
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「……あいつ、麗奈さんを助けたらしいぜ……」
「マジかよ。あの子に近づきたくてやっただけじゃね?」
「……私、あの時、助けられたなんて思ってないから……」
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被害妄想が加速する。
「……もう終わったわ、俺の学生生活……いや、自分を信じろ……落ち着け……!」
自分に言い聞かせるように呟いたが、不安は拭いきれなかった。
次の日――。
いつも通りに学校へ行き、教室に入り、自分の席に座る。
「……大丈夫だ……特に噂もない……俺は生きてる……!」
と、安心していた矢先――。
「……昨日は、ありがとう」
突然、麗奈が目の前に現れた。教室の空気が一瞬、止まる。
「これ……お礼になるかはわからないけど……あげる」
差し出されたのは、可愛らしいラッピングが施された紙袋だった。中には、小さな小袋の中にくま型の手作りクッキーがぎっしりと詰まっている。
「そんな……わざわざお礼なんて……俺、たいしたことしてませんよ……」
思わず恐縮してしまう俺に、麗奈は少し顔を赤らめながらこう言った。
「……後で感想聞かせて。……それから……なんでもない。じゃあね」
そう言って、彼女は去っていった。
教室がざわつく。クラス中の男子の視線が、一斉に俺に刺さる。
「……あぁ……これは…なるべく関わらないようにしよう……周りからの視線がキツイ……」
周囲の目が気になりすぎて、思わずため息が漏れた。
昼休み。
俺は、いつもの“風の当たる屋上の角”に向かった。誰も来ない、俺だけの秘密基地。
ひとつ、言い忘れていた。
俺――藍新 凛は、どこにでもいるような存在――そう、“陰キャ”である。
しかもただの陰キャじゃない。宇宙が大好きな“ネガティブ系・不思議ちゃんタイプ”の陰キャだ。
「……とりあえず、クッキーでも食べてみるか……」
袋を開けると、ほんのり甘い香りが漂う。ひとくち口に入れた瞬間――。
「うお……なにこれ、めちゃくちゃうまい……今まで食べたクッキーの中で一番かもしれない……!」
俺は夢中でクッキーを口に運んだ。
「……すごいな……勉強も運動もできて、料理も上手いとか……日野方さんはなんでも出来るんだな。いいなぁー」
そのとき、袋の底に何かが触れた。名刺サイズの紙だった。
「……なんだ、これ?」
手に取ると、そこには11桁の数字が並んでいた。ハイフンもないし、明らかに普通の文字じゃない。
「……まさか宇宙人からの暗号か……? いや、これは……」
俺の頭に、ある“仮説”が浮かぶ。
「もしかして……これ、電話番号……? まさか、そんな……!」
妄想が、爆発した。
放課後。家に帰り、ベッドに寝転がる。
「やっぱり……一回だけ試してみるか……」
気になって仕方がなく、スマホにその“謎の数字”を打ち込む。
「頼む……つながるなら、日野方さんか宇宙人にしてくれ……!」
祈るような気持ちで、発信ボタンを押す。
――テュルルルル……テュルルルル……テュルルルル……
やがて、電話の向こうから声が聞こえた。
「……もしもし? どちら様でしょうか?」
俺の鼓動は、音を立てて加速した。