{第9話} 転換点②
血戦規則
其の三 、血戦で敗れた部は勝利した部が提示した条件を遵守し、加えて一か月の部活動停止とす
「お前、どん位俺の秘密を知ってて、それをどうする気だ」
「まあ私の目を引いたやつを言ってけば、帰宅RTA、あれ作ったのってあんたなのね、アプリをインストールしていろいろ登録すれば、あとは自動計測ってかなり競技として画期的よね。ルール設計も放課後のチャイムが鳴ってから事細かに不正ができないように作られてて感心したわ」
「おい、俺が作成者ってなんで分かんだよ」
「あんたネットでいろいろ噂あるからそうじゃないかと思っていっただけよ。ほんとに作成者なのね。やるじゃない」
頭をなでようとして赤面してやめる大原女。
「お前に素直に褒められると気持ち悪いな」
「い、いいじゃない。私って、素直なの」
ウィンクをする大原女。正直可愛い。
「あとはそうねー。あ、さっきも言ったあんたのラノベ。名前なんだっけ。
“俺の幼馴染が指名手配になっちゃったので一緒に逃げてみました”みたいなやつ。あれ、百万部売れてて凄いじゃない。私にはあんまり良さが分からなかったけど、ヒロインはツインテールでかわいかったわ。そん位かしら。
まあ大体のあなたのネット活動は知っちゃったわね。私に協力しないともしかしたら、てことはあるかもね。まあ協力してくれれば良いからね。さあ、あんたはどうするの」
四面楚歌の状況。俺の帰宅RTA毎日継続はほぼ不可能になったうえ、平穏な生活ももうこいつの問題が解決しない限り無理なのかと、あいつが転入してきた時点で覚悟はしていた。
(もう、やけくそだな)
「分かったお前の申し入れ、受け入れてやるよ」
「ほ、ほんとに?ほんとに良いの?」
自分からここまで俺を囲い込んできたくせに、俺が協力する決断をしたことが信じられないようだ。だが俺も馬鹿ではない。
「その代わり一つ条件がある。最初にする血戦で負けたり、相性が悪いとお前が判断したらそれで終わりだ。あと、俺の発作、詳しくは言えないけど予兆があるんだ。
それが来たら絶対に俺を解放させろ。それが飲めなきゃ、俺は家に引きこもり二度と学校に行かない」
「ええ、まあそれは飲むわ。流石にあんたの学生生活を壊すまで拘るつもりは無いし。私も常に一人だったから、結局協力しないほうが良いってなるかもしれないものね。そしたら一人で頑張ってみるわ」
「お前ってたまに常識的ってか普通だよな」
「私はいつも普通よ。あんたの前だけなんだから。おかしくなっちゃうのは」
(ん?こいつってやっぱナチュラルツンデレだよな。枯れ果てた俺じゃなきゃいまので惚れてるのかもしれないな)
「まあひとまずよろしく。部の名前は決めているのか」
「もちろん考えてるわ。その名も…」
噴水外周の座るスペースに立ったかと思えば、なぜか俺を指さしながら
「凌三ぶっ壊し部よ!」
と、高らかに宣言するのであった。
(だ、だせぇ、センスが漫画ちょっとかじり始めた小学生だぞ)
でも当人は満足げな表情をしているので、本人が良いなら良いかという気になってきた。
「あんたはそうね、副部長にしてあげる」
「そりゃどーも」
「もう少し感謝を表しなさいよ!」
沸点が異常に低い大原女。だがこれにも俺は慣れてきたんだ。
「大原女部長の仰せのままに」
芝居がかった所作でそれっぽい動きをしてみる。それが効果覿面だったらしく
「そう!あんたはそうしてれば良いの。ついでにあんたのひねくれしわしわ体質もあたしが直してあげるわ!」
一瞬にして機嫌を取り戻す大原女。良かったね。
俺はこの活動にやる気を出したわけじゃない。だけど、一回ぐらいこいつに協力するのも悪くないと思わされただけだ。一回だけ。こいつの活動に付き合ってそれで終わり。そうすれば彼女も諦めがつくだろう。
噴水のそばで揺れ動く君は、笑顔のせいだろうか。出会ってから一番の輝きを見せていた。俺の抱いていた先の見えない不安を忘れるほど可憐に。正門から続く道に植えられた桜が、彼女と呼応するように、揺れていたせいなのかもしれない。
ついったしてる@suiren0402desu
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