表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

5/36

{第5話} 転校生O

凌三高校校則


其の五、その他学校の運営は生徒会を中心として、それに連なる会が行う。会と名の付くものは決闘の対象外とし、学校生活に関する請願への許認可権は生徒会に帰属す




 「……… … ………」


 「………… …」


誰かが、何かを、話している。これは夢だろうか。一人はテレビを見て笑い、親だろうか、二人は誰かに電話をかけている。ぼやけた輪郭線が世界を覆い、決して全容が見えることのない、不思議な光景だ。


しかし俺は、なぜかこのありふれた光景が、どうしても手放したくない、忘れたくない、最も大切なもののように感じられた。この夢も、一夜の幻想なのだろうか。





 …ふと、俺は目を覚ました。スマホを見ると、時刻は七時を回っていた。2時間以上気絶してしまっていたようだ。俺の腹部にコーギーと桜の木が一体となった毛布が、かかっていた。



大原女は、姿を消していた。


 



 凌三高校は、凌三市の中心部に位置している普通の公立高校だ。俺の認識では。一学年三十人のクラスが四つずつあり、白を基調とした高級感のある校舎が正門の前に佇んでいる。


この学校の特徴と言えば校門が東西南北四つあることだろう。そのおかげで、登下校に関わる無駄が省かれている。また、担任という制度が存在しておらず、学級長がその役割を担っていることも珍しいだろう。大人がとやかく言ってこないのは個人的にありがたい。


俺は、自分で言うのも変だが、興味のない情報が頭に入ってこないので、それ以上の情報をあまり知らない。そもそも入学して一週間しかたっていないのだ。全校集会でなにか、オーラのある人物が話していたような気もする。そんな認識だ。


(あいつは、俺が気絶している間なにをしていたんだ?そしてこの学校を壊す?なんの冗談なんだ)


あいつが掛けてくれたであろう毛布をリュックに詰め、俺は正門を歩きながらそんなことを考えていた。自転車は、替えの奴を持ってきた。この自転車で自己ベストを出したことが無いのであまり気乗りしないが、二日連続で記録を出さないのは、俺の競技者としてのプライドが許さなかった。


教室のドアに手をかける直前、見知った顔と遭遇した


「やあ、黒木歩、今日の太陽は一層美しく俺を照らすぜ…」


芝居がかった口調。


「今日は珍しく遅刻しないのな」


「今日は迷える市民を見かけなかったのでな。警察が暇な状態が良いように、俺が暇ということはこの町の人々が笑顔で過ごせているということなのだよ」


「そうですか」


このくっさい演技をする男は桂圭。一年壱組にともに所属するクラスメイトだ。左目を髪で隠し、浦島太郎のように髪を結んでいる。しょっちゅう意味不明な人助けを言い訳に遅刻してくるが、なぜか俺によく絡んでくる。黙ていればイケメンなのに、彼がしゃべりだすと女性陣は蜘蛛の子を散らすように逃げていく。いわゆるナルシスト、もしくは中二病というやつだろう。


俺が窓際一番後ろの主人公席に座ってからも、彼のマシンガントークは続く。適当にあしらっていると俺の二人しかいない友だちのもう一人、角刈りの筋肉質男である轟豪がやってきた。


「おっすー諸君ども。今日はお早い登校で何よりだな!それより俺の愛しのマリアちゃんは今日もかわいいよな~?」


「うむ、今日も輝いておるな」


「いいんじゃねーかー」


豪が国際交際したのではないかと心配した読者の皆様はいったん待ってほしい。こいつが出来る訳ない。こいつが見せてきたスマホに写っていたのは、某国産メーカーの赤いバイクだ。


こいつはマリアとしか言わないから正式名称が未だにわからん。豪とは、俺が最速で自転車置き場に着くと、少し遅れてこいつがやってくるのが入学してから毎日続いていた。よくよく話を聞くと、一秒でも早くバイクに乗りたいから部活には所属せず個人でバイク乗りをしているらしい。


そこでシンパシーを感じた俺らは、自然とつるむようになり、そこに圭が加わって三バカトリオのようになっている。俺としてはこいつらとつるんでいればある程度人除け効果も期待できるので、悪い気はしない。


「そういえばお前ら、大原女って知ってるか」


「知らんな、日本語かそれは」


「どっかで聞いた気がするけど覚えてねえや!」


(やっぱりだめだなこいつらは)


俺と同じく人の話を聞かない奴しかいないのでろくな情報が得れなかったとき、チャイムが鳴り、学級長の明星葵が連絡事項を伝えるため前に出る。切れ長の目、真っ白な素肌に白髪ロング、身長も一六四センチと高く、雪女といっても差し支えないかもしれない。


「皆さん、おはようございます。今日は学校探検の日となっておりますので、午前中は自由に学校を周ってください。部活動見学も兼ねているので、入部要綱をチェックし、気楽に見学に来てほしいとのことでした。委員会との兼任もできるので、こちらも入会要綱を参照し、所属を検討してみてください。午後は予定が無いので午前での帰宅となります」


湧き上がる教室。俺も嬉しいが、帰宅ルートの信号の変化時刻の検討をし忘れていたので、学校探検は、それをする時間に充てることになるだろう。


「それと、このクラスに転校…転入…とにかく新しくく別のクラスから入る人がいますので、紹介します。入ってきてください」


透き通るような声で声をかける学級長。そんなことが可能なのかと思う間もないまま、盛り上がっているクラスメイトと同じように、俺の目線はその転入生に向けられた。



ついったしてる@suiren0402desu

未来のあなたはコメント残すよ

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ