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{第36話} 黒木歩は、いつから

凌三高校校則


其の六、次期頭取は年内に現頭取が指名、もしくは選挙を行うものとする。単一の部に所属する者が生徒の過半数を占める場合、頭取と部長の合意の上、二陣営での一騎打ちも可能とす



 「勝ったのか…」


15分とは思えないほどの濃密な時間が過ぎていた。


プツンと集中力の切れた俺は、その場にへたり込み、いつの間にか雲が消え去った夕焼け空を見ていた。


「うお!」


「歩!勝ったわよ!私たち勝ったんだわ!」


そんな俺とは対称的に元気が有り余ってるらしい大原女は俺の腹に跨り、肩をつかんでありえない速度で振ってくる。


「ホントに静かにしてくれ。疲れて今にでも寝ちゃいそうだ」


「情けないわねー。ほら立って、式則式則生徒会長の方行くわよ」


そう言ってちっこい手を出してくるので、遠慮なく使わせてもらう。


「ま、待てお前ら」


松本部長は、困惑を隠しきれない様子で俺らを引き留める。


「なんで最後、俺の弾は出なかった?」


「射出口を覗いてみてください。それで、全てが分かるはずです」


「⁉こ、これは弾丸?いつこんなの…」


松本部長は2発の弾丸を取り出す。


「大原女がやったんだからお前が説明しろよ」


「それは最後、私が部長に弾を撃った時に入れたの。あなたを狙ってると見せかけて、本当はあなたの重機関銃を狙ってたの」


こいつの神業にほとほと呆れる俺と、顎が裂けそうなほど驚愕する松本部長。


「栗田を倒してから、部長を削るのは歩に任せてたわ。だから、私は歩の補助役に徹しただけ。

私も、その、歩を100%信じてたか」


大原女が、顔を真っ赤にそう呟く。俺の返事を待つように。


「あれは、松本部長を惑わすために言っただけで深い意味は無いぞ」


なぜかガーンと効果音が出そうな程ショックを受ける大原女。そんな俺らの夫婦漫才を知ってか知らずか、式則生徒会長の集合アナウンスがかかる。



 全員集合したは良いが、生徒会の面々がなぜか顔真っ赤にこっちを睨んでいる。


「俺なんかしたか?」


「あんたの不審者フェイスを本能的に警戒してるんじゃないの?


そうでないことを祈りたいが、どうなんだろうか。


「えーゴホン。これより、血戦の結果発表に移らせていただきます」


式則生徒会長が話始める。


(俺は、これで…)


「残機の総量が、凌三ぶっ壊し部は17、松ぼっくり解体部は3なので、この勝負、凌三ぶっ壊し部の勝ちとなります!」


パチパチパチパチパチ


俺ら以外の全員から拍手を受ける。栗田に関しては涙ぐんでいるぞ。ちょっと悪いことした気分だな。


「これにより、松ぼっくり解体部は一か月の部活停止と、2名の凌三ぶっ壊し部への所属が決まりました。事務手続きを凌三アプリでしておいてください」


「分かりました」」


「それと、それぞれの部長から何か一言あれば頂きたいです。まずは松本部長から」


松本部長は頭に巻いたタオルを外し、スキンヘッドを露わに話始める。


「我は多くは語らないが、お前らが我に勝った以上、この学校を今より良い形にすることを賭けてみるのも悪くないと感じている。我らの戦術を良くぞあそこまで打ち破ったものだ。それに、黒木殿の言う通り、俺には栗田を信じる気持ちが足りなかった。栗田、すまない」


「いえいえ!あの残機の差で勝てない私が未熟者なだけですって。だから、もっとお互いの事を知っていきましょう?私、たとえこの部が無くなっても部長に着いていきます」


(なにやら重い愛の告白に聞こえなくもないが、まあどうでも良いか)


「では次は大原女部長から」


さっきからチラチラ俺を見ていた大原女は、覚悟を決めたようだ。深呼吸をして話始める。


「私は、今までずっと一人で全部を解決するのが全てだと思ってたわ。だけど、今回の血戦を通じて、仲間を信じて背中を託す大切さが分かった。私ひとりじゃ絶対に乗り越えられない勝負だった。それ位あなたたちは強かった。でも勝てたのは歩、あんたのお陰よ。こんな私に着いてきてくれてありがとう」


「しょうがないだろ。俺はお前が……なんでもない」


「な、なんなのよ!あんた途中で言葉切る事多すぎて凄い気になるんだけど!」


「いつか言うから黙ってろ!」


「あんた、部長に向かってその態度。矯正しなきゃダメかしら」


「はいはいはーい。大原女部長ありがとうございました。これで血戦は終了なので解散ですが、黒木君はちょっと残ってね」


式則生徒会長は俺にそう言い、この戦いは完全に決着した。


式則会長は黙って屋上の際まで歩き出したので、俺も黙って付いていく。


「咲さん。あなたは別に来なくても良いのに」


「この下っ端の監督権は私にあるのでお構いなく」


「あらあら~」


なぜかついてきた大原女とそんな話をした後、式則さんは気まずそうに俺に向き直る。


「あのね黒木君。凄い言いにくいんだけど、インカムで連絡取れるじゃない?

あれって初期設定のままだとこちらにも音が聞こえるの。大体の人は切ってるんだけど、黒木君知らなかったみたいだから、その、色々咲さんに言ってたこと全部聞いちゃった。ごめんなさいね」


(ま、じかよ…)


「おい大原女、なんで俺に教えてくれなかったんだよ」


「だだだってそんぐらい誰でも知ってると思って!あんたがそんな馬鹿だとは知らなかったから!」


くどくど俺らは言い合いをする。こんな言い合いもなんだか懐かしい。


「まあまあ二人とも、もちろんあなたたちの個人情報は他に漏らさないから安心してね?」


「まあ、式則生徒会長は大丈夫だと思いますけど」


「うんうん。それにしても、二人っていつから付き合いだしたの?お姉さん気になるな」


(は?)


俺の脳がそのことに関して一切の思考を禁じる。俺と同様完全なショート状態になった大原女。沈黙が場を支配する。


「だってあんな連携、心からその人の事信じてないと出来ないわよ?」


「あ、あのー」


「いや、あwたtのわたいshちたちちうくいあてえるわけうずあ」


解読不能な大原女の抗議により俺の脳も覚醒する。


「落ち着け大原女!」


「ハッ、誰がこんな根暗ですぐ気絶して口ではネガティブなのに意外と頑張ってくれて…」


「ええと大原女さんや?」


何を言おうとしてるんだこいつ。


「ごめんなさいね。あなたたち色々凄いっていうか、普通あそこまで出来ないからおばさん勘違いしちゃった」


「全くですよもう。大体俺、そういうの作る気一切ないから大丈夫ですよ。何が大丈夫かは分からないですが」


「え、歩あんた…」


驚いたように見つめる大原女。


「ん?どうしたよ」


「何でもないわ。それより明日の朝、海に集合して」


「いきなり話が180度変わりすぎだろ。めんどくさいし嫌だよ」


「い、良いから!来なかったら個人情報ばらまくわよ?」


そうだった。こいつには強力な切り札があるんだった。


「もう分かったよ。行けばいいんだろ?」


俺はこの子に逆らえない。


この子から逃れる最初で最後のチャンスすら自分で棒に振った俺の馬鹿さ加減が笑えるな。


「そうよ、寝坊するんじゃないわよ」


「へいへい」

俺らのやり取りを黙って見ていた式則生徒会長はなにやらドン引きしていたがすぐに仕事人モードに戻る。


「はい、お話は以上です。事後処理は我々でやっておくので帰ってもらって構いませんよ」


「ありがとうございます。それではお先に帰らせていただきます」


「あ、咲さん。敵は手強いですが意外と押せば行けたなんてこともあるので、頑張ってくださいね!」


俺を見ながら大原女にアドバイスする式則生徒会長。大原女は大原女で顔を真っ赤にしながらこちらを睨んでいる。なんなんだよ一体。


(ま、とりあえず一件落着かね)




ついったしてる@suiren0402desu

未来のあなたはコメント残すよ


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