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{第3話} 一件落着?

凌三高校校則


其の三、年末の校則審査会では凌三会と生徒会、甲乙が校則草案を提出可能で、丙を含む全会一致で可決とする。頭取会と甲は拒否権を有す




 「ここだ、着いたぞ」


ローカルスーパーであるユニバースを背に信号を渡り、田園と宅地が囲んでいる見晴らしのいい歩道を少し歩くと、俺たちは目的地である藤野生花店に着いた。


「何ここ、ただのお花屋さんじゃない。まさか薔薇でも買いに来たって言うんじゃないでしょうね?」


勘だけは良い大原女の疑問


「そのまさかだ。お母さんが穂乃花ちゃんに頼んだものは、父親への薔薇だったんだ」


俺が解を口にしたのを遮るように


「あ、分かったわよ!その薔薇で押花でも作るのね⁉」


「違う…と思うよおねえちゃん」


「え⁉」


二人のコントのような会話が始まりだす。


「アホピンクは置いといてだな、普通にプレゼントするんだよ。転勤祝としてな。贈り物としてあげる赤いメモすら必要ないなにかなんて薔薇ぐらいのもんだろ。おそらく穂乃花ちゃんは、管理に困らない程度の薔薇が買える五千円位を渡されたんじゃないか?それを穂乃花ちゃんはなにか豪華な食べ物を買うもんだと勘違いしてしまった。てのが今回の真相だ。」


「確かに五千円ぴったりある…」


コト、コト、コト


聞き慣れたスニーカーの音


(まずい、奴が来た)


「あれ、歩ちゃん?こんなところで…ってこの子は隠し子ですか⁉そうすると隣にいる方は美人の新妻。あは、はははははははっははっは。」


この妄想癖のある黒髪おさげで日本人らしさ溢れる主張の乏しい、しかし整っている顔つきをした女は俺の幼馴染の藤野花だ。生花店を営む両親に愛されて育てられ、家が近く昔からよく藤野と遊んでいた俺にも藤野両親は良くしてくれていた。今でもたまに料理を俺に届けてくれる両親に似た良い奴ではあるのだが、俺と関連の薄い情報を勝手に繋げて暴走する困ったやつでもある。特に女性関係はだめらしい。なぜかフリーズする大原女のことはとりあえず置いといて、そんな花への状況説明に努める。


「おい花、この二次元至上主義の俺がこんなやつと結婚しているわけないだろ。仮にしていたとして子供の年齢的に小学校の頃こいつが生んだことになるぞ」


完全にフリーズした大原女。第三の不審者こと俺の幼馴染、藤野花の登場に理解が追い付いていない穂乃花ちゃん。なにやら考え込んでいるご様子の花。三者三様の反応に場の納め方に窮する俺。となかなかカオスな状況になってきた。


「いや、戦国時代では若い娘を政略的に結婚させることもあったんだよ!」


「ここは西暦二千十九年のバリバリ現代だ!意味わからんこと言いだすな。」


ここから押し問答がしばらく続くので割愛し、状況説明後…


 「なるほどねー、放課後にあんたが外うろついているのもそういう訳ね。まあ半分冗談だと思ってたけど。じゃあその咲?ちゃんとは別に何ともないんだ、まあ天パで猫背でこの世の悪を詰め込んだようなあんたの人相じゃ結婚どころか彼女も無理よね。」


花は心底ほっとしたように、後半は俺の罵倒を交えながら納得してくれたようだった。


「そういうことだ。ほら、大原女もフリーズしてないでなにか言ってやれ」


ブラウン管テレビを叩く要領で俺が大原女の頭を小突く。


「ハッ、そ、そうよ!誰がこんな焼却炉でも処理しきれないで永遠に残り続けるようなゴミと似た何かとそういう関係になるのよ!」


ツインテールを逆なでさせ俺にお返しパンチを食らわせながら全力拒否する大原女とその罵倒をうなずきながら聞く花。


(俺ってそんなに終わってるのか…)


内心そこそこ傷つきつつ、早く帰るため話を進める俺。


「俺はやるときはやる男とだけ、伝えておこう。それより薔薇を早くこの子にあげてやってくれ」


「はいはーい。このおじさんに連れまわされて大変だったね、あとちょっとだから待っててくれる?お金も貰えると嬉しいな」


「うん、これ樋口。この人がいなかったら、帰れなかったからいい人。」


かがみながら心からの笑顔で穂乃花ちゃんに話しかける花。俺らとは大違いの圧巻の子供慣れだ。そういえばこいつ、時々近所の児童館にボランティアとして赴いていたような気がするから、そこで培われた技能なのかもしれない。


「この値段じゃ五本買えるけど、サービスで一本プラスしてあげる!ちょっと待ってて」


目を輝かせながら店内に入る花を見つめる穂乃花ちゃん。あいつは本当ににこういう人心掌握が上手い。無意識なんだろが、わざわざ損することを迷いもせず提案できるのは花の良いところでもあり悪いところでもあるだろう。少なくとも俺にはできん。


ふと大原女のほうを見ると、何か考え事をしているようだった。


(こいつ、こんな顔もできるのか)


深い意識の底に沈んでいる彼女の姿は、傾きかけた陽光を受けて、まるで彼女から発せられた光のように、鋭く、眩しすぎるほどに照り輝いていた。


(やっぱり、こいつ)


俺は俺らしくない事を思いかけ、思考を無理やり現実に戻した。


ついったしてる@suiren0402desu

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