{第28話} 輝きを失った世界で
やかまし女は咲ちゃんが転入したときに出たな
血戦規則
其の二 、血戦の審判は生徒会が主導で行い、公平な審判を下すこと。血戦中、本校則を破るか、相手が生命の危機に晒される恐れがあると審判が判断した場合、違反者の属する部を三か月の部活動停止とする。二度違反した場合、違反者の精査の後、その者へ一年間隔離室への更迭を課す
翌日の金曜日朝、相変わらずの曇り空。
昨日の朝大原女から共有された血戦のルールを、俺は視線が痛い教室で振り返っていた。
・二対二で三十メートル四方の障害物が多数設置されたステージで行う
・時間制限が十五分あり、頭に当たったら三点、それ以外は一点として両陣営の合計得点を計測
・個人体力が二十あり、それが尽きれば強制的にゲームオーバー
(こんなもんか)
ルールの予習がひと段落つき、俺は隣の席に目をやる。大原女は今日は出席しないらしい。
昨日あんなことがあったのだ。思うことが色々あったのだろう。
「あのさー黒木?君だっけ。昨日の大原女様とのやりとり、あれってどういうこと?」
やかまし女が俺に話しかけてくる。ほぼ全員の目線が俺に集まり、非常に不愉快だ。弾避けのあいつらもいないしどうしたものか。
「別に。お前には関係ない」
「あんた昨日も思ったんだけど、その言葉遣いどうにかなんないの?」
「礼節を欠いても構わない相手にしかしないからどうでも良いな」
何故だろう、頗る虫の居所が悪い。今までの俺なら華麗なスルーか圭へのバトンタッチなどとことん逃げに徹していたのに。
「あんたね!それどういう意味よ!」
やかまし女が喚く。酷く煩くて、脳に響く嫌な声だ。これ以上話したら俺が何を言うか分かったもんじゃない。
「お前、一回顔と声を見直したほうが良いぞ。じゃあな」
そういって俺は、相手の非難も教室中のあらゆる人間の罵倒も無視し、図書館へ向かった。
(今日はずっとここにいるか)
俺は心の安らぎを求めて、歩みを進めた。俺が望んだ平穏は俺の手によって壊してしまった。こんな合理性に欠ける行動をするなんて、全く俺らしくない。
図書室に着くと、なぜか図書委員会である海淵紫苑の姿があった。俺が来るといつもいるが、なんだか不気味だぞ。
「よーす」
「おはよう」
挨拶をすませ、俺は品定めに移る。
(何にしようか。俺のこの内なる竜を討伐するのには何の本が適しているのか)
俺が一冊一冊吟味していると、海淵がこちらをじっと見つめている。
「どうしたよ、お前のおすすめは今気分じゃないから読まんぞ」
「黒木君、最近全然図書室来ない」
「今週は忙しかったんだよ。あ、あと昼に学食行ったからかな。あそこ百円でビュッフェ食べ放題で凄いぞ」
「知ってる。大原女さんと、いつも一緒にいるんでしょ」
こちらに向いた海淵の視線が、非難の色を帯びていた。
「ああ、あいつの部活に付き合わされてるからな。今日は休みだが」
「黒木君、大原女さんと一緒に登校してるし、昨日だって相合傘で帰ったし、大原女さんは、黒木君を拘束しすぎだと思う」
海淵にして珍しく感情の籠った発言に、俺も同意する。
「ああ、俺も迷惑してるんだ。あいつの女王様っぷりには」
「じゃあ、今の部活辞めて一緒に図書委員しようよ。黒木君も本好きだし、分からないことは私が教えるし」
濃い青色のサイドテールを揺らしながら俺に急接近する海淵。一世一代の告白のような緊張を彼女はしているようだ。
「いや、俺は帰宅部が良くて…」
「あの女の方が、良いの?」
(話がかみ合ってないぞ。なんなんだよ一体…)
「いやだからお前らどっちとかいう問題じゃなくて、俺は帰宅部が良いからそれで言うならどっちも嫌だ」
俺の発言中にスカイブルーの瞳がどんどん陰っているのを観測したが、だんだん正気に戻ったようだ。
「いや、やっぱり何でもない。大原女さんのことが嫌になったら、いつでも私を頼ってね」
(????)
「お、おう」
様子のおかしい海淵に戸惑いつつ、俺は本のセレクトに戻った。
「久しぶりの定時帰宅だな」
家に着いた俺はそう呟く。四日ぶりの待ちに待ったRTAは、あまりいいタイムは出せなかった。やはりブランクだろうか。 なんだろう。うまく言葉が出てこない。脳に霧がかかったよう、だ。
ついったしてる@suiren0402desu
未来のあなたはコメント残すよ
黒木の学内評価は最底辺だね。平穏とは程遠いや。




