{第25話} 黒木歩と死について
凌三高校校則
其の五、その他学校の運営は生徒会を中心として、それに連なる会が行う。会と名の付くものは決闘の対象外とし、学校生活に関する請願への許認可権は生徒会に帰属す
俺は学食裏の人気のないところに移り、電話に出る。
「やあ、何の用だよ」
「よう歩!元気にしてたか?」
このおじさんは基本的にテンションが高くて煩わしいが、恩人ではあるので無下には出来ない。
「ああ、ぼちぼちやってるよ」
「まだ帰宅部でブイブイ言わせてるのか?」
「いや、最近は出来てないな」
(あいつのせいでな)
「あ、修一郎さん聞きたいことがあったんだ。なんで俺をこの高校に入れたんだ?普通高校だと思ってたのに全然違うじゃないか」
俺の推薦を勝手に組んでいたこの人に、真意を聞こうとする。
「そうか、やっぱり気付いたか。じゃあなんかの部活に入ったってことか?」
この人はやはり、簡単に思考の底を見セない。ここは普通に答えるか。
「ああ、ある女に連れまわされて、凌三ぶっ壊し部なんて部に所属していることになってるよ」
「……………」
修一郎さんは、何かを考えているようだった。長い沈黙が続く。
「お前をそれに誘った奴は、誰だ」
「え?大原女とかいう暴力女だけど」
「やっぱり、こうなったか」
意味深な発言をする修一郎さんだが、なにを考えているか皆目見当もつかないぞ。
「お前は、その大原女さんをどう思ってるんだ」
「なんでそんなこと」
「いいから。俺はお前の学校事情が知りたいんだ」
なんなんだ一体。
「そうだな。独断専行で、俺の意志なんて考えたことすらなさそうで、たまに神妙な顔になる、奇妙な女だよ。でも……やっぱり何でもない」
俺は何を言おうとしたのだろうか。あいつのことになると、たまに思ってもいない事を言いそうになってしまう。
「そうか、良い友達を持ったんだな」
「全然良くはないが」
「お前がそこまで言える人と出会えたのは、きっと偶然じゃないはずだ」
要領を得ない、抽象的な発言ばかりの修一郎さんは、熱でも出てるのだろうか。
「だから、この学校での出会いを大事に生きろ。それが俺の、人生の先輩としてのアドバイスだ」
「へいへい、切るぞ」
「ちょっと待て歩、最後に一つだけ。お前はまだ、死にたいか?」
「ああ、俺は、早くあの人たちと一緒になりたいよ」
「そうか。今はまだそれでもいい。じゃあ、またな」
俺の返答を諫めるでもなく、怒るでもなく、修一郎さんは電話を切った。普段とは違う、シリアスな雰囲気だったがどうしたのだろうか。彼について、俺は知らないことが多すぎる。
ザザザ!
(リスでもいたか?)
教室に戻ろうとする俺の耳に、草むらが揺れる音が入った。音の出所に行くと、微かにだが、金木犀の香りがしたような気がした。
(いや、まさかな)
修一郎さんとの電話を終えて教室に戻ると、大原女はなにやら熱心に本を読んでいた。
ついにこいつにも読書の素晴らしさが伝わったのかと覗いてみたが、“銃の命中率を上げる方法”なる見出しが見えた。そうだった、こいつには風情が無いんだった。
俺が主人公席に着くと、熱心に読書をしていた大原女が本越しにチラチラ覗いてきた。うざったがったが、無視して大原女のベレッタM92Fを警戒しつつ、俺も銀河鉄道に乗り現世から離脱するとしよう。
「ねえ」
そんな一人の楽しみを無慈悲に大原女は奪い去る。
「なんだよ。今俺は本と対話してるんだ。お前とは話せない」
「あんた、一回カウンセリングとか受けたほうが良いと思うわ」
(やっぱり聞かれてたのかよ)
「盗み聞きは良くないぞ」
この倫理観ゼロ女に言っても無駄だろうが、一応注意する。
「だって気になるじゃない。修一郎さんって前言ってたあんたの親戚の人よね。あんたって、いや、過去を詮索されて気持ちのいいものでは無いわね」
「ああ、俺は俺の家の事を他人に話す気は全く無いからそうしてくれ」
そういうと俺は本に目を戻し、大原女もなにやら松ぼっくりベレッタをいじくり回し始めた。
ついったしてる@suiren0402desu
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