{第24話} 鉛色の日常
凌三高校校則
其の四、年に二度の部活動審査会で不適とされた部は、強制解散とし、その部に属するものは一年間それに準ずる部の作成を禁ず
鉛色の空。俺は、気が滅入りそうなこの天気が嫌いじゃない。紫外線に焼かれると、体力の減りが著しく加速するからだ。俺の嫌いな光を、雲は見せないようにしてくれる。
そんなどうでも良いことを考えながら、俺は大原女の住む高級マンションを視界にとらえていた。大原女もこちらに気付いたようだ。
パァン
「あぶね!」
俺は大原女から放たれたプラスチック製の弾丸を間一髪のところで避ける。
大原女はその後も、無言で数発撃ち、カチ、カチ、と弾が無くなったところでようやく止める。
「おい!藪から棒になんなんだよ。地味に痛いぞこれ」
「ほら、あんたも私を撃ちなさい」
俺の決死のクレームも華麗にスルーされ、ガバメントを模したらしい松ぼっくり銃を大原女は俺に渡してくる。
「習うより慣れろよ。実戦がが一番。これからはお互い隙を見つけたらいつでもどこでも撃っていい事にしましょう」
また勝手に新しいことを始める大原女。だが今回の取り組みに関しては賛成だ。なぜなら
「お前を撃っていいんだな?俺、手は抜かないぞ」
こいつに合法的に仕返しができるということなのだから。
(俺の高校生活を狂わせた罪、その身をもって償わせてやるぜ)
俺の魂胆を知りもしない大原女は俺を正視して動かない。受けて立つという事だろう。
ガバメントの装弾数は七発。他の銃に比べると少ないが、昔米軍で正式採用されていた程使い勝手は良い。これならいけるぞ。
「俺は男女平等、アファーマティブアクション断固反対派なんだ。お前のその命、貰い受けるっ」
初弾、まず俺は咲の胴体めがけて銃を放つ。次弾は少し遅れて右方向へ。当たれば万々歳だが、左に避けても俺のガバメントからは逃れられない。
ところが大原女は、避けるどころか俺に向かってくる。
(何がしたいんだこいつ。近づけば近づくほど銃というものは当てやすくなるんだぞ)
大原女の真意が分からず動揺する俺だが、まず初弾が大原女に命中しそうになるのを見て、落ち着きを取り戻す。しかし、腹部にあたる直前!こいつは身をバレリーナのようにひねり華麗に避けてしまった。
(まずい!こいつが相当運動神経良いことを忘れてたぞ!)
慌てて四発目と五発目をそれぞれ大原女の体の端を捉える程度のところに発射し、6発目を大原女の額にめがけて発射する。確実に逃げ場を無くさせ、俺は勝ちを確信する。
「あんた、やるわね」
そうつぶやくと大原女は、リンボーダンスの要領で体を小さく折り曲げ、流れ作業のように俺の銃を奪い去ってしまった。
ガバメントを回転させながらご満悦な大原女。ここまでの芸当ができるのは身長のおかげもあるだろうが、言わぬが仏だ。
「負けたよ。完敗だ」
潔く負けを認める俺。今負けようとも今後は打ち放題なのだ。せいぜい慢心していろ。
「あんたって、結構理論的というか、アクションに必ず意図があるのがバレバレなのよ。だから先読みがしやすくて助かったわ」
「お前はなんであんななに運動神経良いんだよ」
いくら先読み出来ようとも、人類の叡智である銃を相手にあそこまで大立ち回り出来る奴なんてそうそう居ないはず、俺の疑問に大原女はぼそりと呟く。
「……姉以外には、何事もあまり負けたことが無いからよ」
「つまり姉妹揃って天才のバケモンという事かよ」
「天才って言葉、好きじゃないの」
「なんでだよ」
「裏にある苛烈な努力を見ようとしない、怠け者の言い訳にしか聞こえないからよ。さあ、行きましょう」
そう言い放ち大原女は歩き出す。大原女の心には、なにか、強烈な何かが巣食っているようだった。
「いったた…」
結局授業中、休み時間、はたまたトイレ中、どのシチュエーションでも狙われ続け、蜂の巣にされてしまった。俺の弾は全て避けられ、途中から練習にならないと文句を言われる始末だ。
今は昼休み。俺は一緒に学食に行くつもりの大原女対策として、圭と豪も引き連れて四人で学食を食べていた。これならそう易々と銃は撃てまい。
俺のパーフェクトプランを知りもしないバカ二人は、大原女さんに興味津々なようで質問攻めを食らわしている。こいつらはやはり素晴らしい。
「ミス大原女よ、汝は我が盟友黒木歩とどういった関係なのだ」
「確かに俺も気になるぜ!だってこいつが掛け布団借りパクしないようにこのクラス来たんだろ?」
「あゆ、黒木君とは家が近くて、ご両親に良くさせてもらってるの。壱組に来たのも黒木君がいれば安心かなって」
「ぶっ!」
「だ、大丈夫か歩!」
あまりに大原女の猫かぶりが面白くって、吹き出してしまう俺。こいつ、よそ行きだとこんな仰々しい喋り方になるのか。というか、花と俺の関係をそのまま言っただけじゃねえかこれ。
バレたらどうする気なんだ。
隣の大原女は俺の脛を思いっきり蹴りつつ、外面は崩さない。こうなるとあのバカ二人はもっと踏み込んでくるはずだぞ。
「でも実際、お前らってあの昼休みに起きた血戦?の時もくっついてたし、不審者集団にお前らが絡まれてるのも結構な人が見てたし、もう公認カップルってかんじじゃないのか?」
ぶっこみ過ぎだが、こいつは色恋沙汰が一番の弱点だからこの位いった方が面白いものが見れそうか。
「わ、わたしと歩が、こ、公認…?」
絶句した大原女は、猫かぶりを忘れるほど動転しているようだ。こちらに目を向けじっと見つめてくる。
(こいつの瞳は何か魔力があるのか、引き寄せられるぞ)
こいつの赤面が伝播したのか、俺の顔も熱いぞ。なんだこれ。
俺と大原女が赤面したまま見つめ合っていると、俺のスマホが鳴った。それで目が覚めたのか、俺らは同時に目を逸らす。なんだこのラブコメは。要らないぞ。
「誰からなのだ、黒木歩」
圭も気になるその相手は
黒木修一郎
俺のおじさんだった。
ついったしてる@suiren0402desu
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