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{第2話} 歩の閃き

凌三高校校則


其の二、部への所属人数で甲乙丙丁と等級が決まる。

甲・三十人以上で校則審査会での拒否権と血戦の強制開始権

乙・十人以上で部室の所有又校則審査会への校則草案提出権

丙・五人以上で正式な部となり、部活棟使用の優先権を有す

丁・五人未満では前記の権利を有せず



俺が住んでいる凌三市は、青森県の東部に位置している、太平洋に面した人口十万人に満たない小都市だ。これといった特徴はないが、穏やかな気候で、積雪量も他の都市に比べれば少なく、自衛隊駐屯地として貰った補助金で様々な公共施設が揃っている住みよい街だ。


俺ら三人が出会った噴水近くの交差点の向かいに位置しているスーパー前のベンチで、俺ら三人は作戦会議をしていた。俺はなぜか立たされた。名前を穂乃花と言うらしい子供の話によると、出張に行く父親を安心させるために、母親に頼まれておつかいに来たため、引き返したくは無いとのことだった。


「んー困ったわね、おかあさんが作るもの言ってたりしなかったかな?」


「外で気を付けることと赤い何かについて言われたけど、買うものはなにも…」


「そっかー、どうしよっか」


「…」


俯く穂乃花ちゃんに話しかけるピンク女が、困ったように眉をひそめ、思案する顔になり、こいつも俯いてしまった。と思ったら急に俺のほうに非難がましい目を向けてくる。表情が百面相のように変わって忙しい奴だ。しかし俺も早く帰りたいので、最も早く解決する方法を考えているのだが、情報が限りなくゼロに近いせいでほぼお手上げ状態だ。


(周辺情報から漁っていくか)


「あー、穂乃花ちゃん。お父さんはなんで出張するんだ?」


「…自衛隊のひとだから、他の自衛隊に行っちゃうらしいの」


「お父さんは優しい?」


「怒るときもあるけど、いつもほめてくれる。」


「お母さんはここに残るの?」


「うん、にんぷさんだから。パパを引きとめてたんだけど、むりだったみたい。パパはえいてん?ってほのかに教えてくれた。」


「家に住んでるのは三人のほかにいる?」


「おばあちゃんとおじいちゃんがいる」


(なるほど)


事の全体が脳裏を仄かに照らしかけたとき、俺の意識は強制的に現実に引き戻された。


「ちょっと歩、神妙な顔して大丈夫?今の問答で何か分かったの?なら教えなさいよ」


いきなり呼び捨てのピンク髪が、立ち上がり俺の顔を下からアメジストのように光る綺麗な目で覗き込んできた。


「まあな、あとちょっとで帰れそうだ。それよりお前は顔が性格と違って無駄に良いんだからあんま近づくな、目の毒だ」


俺が初対面から気になっていた距離の近さを理由とともに指摘すると


「な、なななあんたかわいいって私に言ったの?この私に?ふごおおおおおお!」


ツインテールをM字に変形させ百面相どころか千面相もあるんじゃないかと思わせるほど顔を変化させながら、真夏の太陽の如く全身をを真っ赤にさせピンク女が言ってきた。


「そ、相対的に整っていると俺は感じたってだけだ。他意はないぞ。いいから落ち着けって」


「お、おおおおちつけないわよっ、そんなの初めて言われたし…」


両手を胸に寄せながら、M字を解除しながら俯き加減につぶやいた。


「お前なら挨拶と同じノリで言われ慣れていると思ったんだけどな」


俺はこいつを一目見たときから、画面から出てきたかのような、そんな雰囲気をまとっている子だと感じていた。それを正直に言っただけだったんだが、これはオタク用語でいうところのツンデレというやつか?現実でお目にかかれるなんて意外と悪くない日かもしれない。


「ゴホン」


動揺を打ち消すようにわざとらしい咳ばらいをするピンク女


「と、とにかく、あんたはこれから変なこと言うの禁止!びっくりするんだから。何が分かったか早く教えなさいよ」


穂乃花ちゃんが不審者を見る目でつきでピンク女をみつめていたことにようやく気付いたのか、今までの醜態を隠すように仕切り出した。


「まず結論から言うぞ」


生唾を飲む一同。


「穂乃花ちゃんは、母親に夕食ののお使いを頼まれていないんだ。」


今日二度目の沈黙。


「どういうことなの?しっかり説明しなさいよ歩」


なぜか少し態度が軟化したような気がするピンク女とそれに同意して首を振る穂乃花ちゃん。


「ああ、ピンk、大原女にもわかるように言うとだな、お母さんは、穂乃花ちゃんにメモを書くほどではないある一つの物のお使いを頼んでいたんだ。」


「ある一つの物?それってもしかして赤いなにかを指しているの?」


勘が鋭い大原女。


「その通り、今までの話を整理すると、穂乃花ちゃんの父親は転勤する。母親は引き留めようとしたようだけど、最終的には納得して見送ることにした。「えいてん」、つまり自衛隊内での地位がその転勤に伴って上がることを父親に説明されたからだな。母親が付いていかなかった理由は、妊娠しているし、お爺ちゃんとお婆ちゃんがいるここに残ったほうが育児の面でも安心だからだ。ここまでの経緯は合ってるかな?穂乃花ちゃん」


「多分合ってる。ときどき言葉がむずかしかったけど。」


俺に慣れてきたのか、咲への警戒度が上がったのか、少し俺に心を開き始めているようだ。


「まだ年端も行かない大事な我が子を、一人だけでスーパーにお使いに行かせると思うか?子供にとっては広くて手が届かない商品もたくさんある魔境のようなところに」


「それは確かにそうだけど、じゃあある一つの物って結局何なの?」


至極当然の質問をした咲。


「早く帰りたいから、とりあえず俺についてきてくれ。ここではない場所に答えがある」


「それってどこよ」


訝し気な咲の瞳。


「まぁおれの顔見知りの店だ。答えは着いてからのお楽しみでいいよね?穂乃花ちゃん」


「た、たのしみ」


(俺の体調は…問題なさそうだな)


ようやく帰れる兆しが出てきた俺は帰宅できていないことへの拒否反応を体が出していない事に安堵しつつ例の場所に、二人を引き連れながら歩きだすのだった。あいつがいない事を願って。



ついったしてる@suiren0402desu

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