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{第16話} 乗り物三竦み

凌三高校校則


其の六、次期頭取は年内に現頭取が指名、もしくは選挙を行うものとする。単一の部に所属する者が生徒の過半数を占める場合、頭取と部長の合意の上、二陣営での一騎打ちも可能とす



 凌三高校は一般高校のような授業をしない。

週に5日6時間目まであり、各授業は45分しかなく先生はあくまでのその補助。こんなんで大丈夫かと不安になるかも知れないが、参考書を中心とした受験知識をダイレクトに詰め込むような授業スタイルは、頗る効率がいいし、すぐに帰れるので不満は無い。生徒一人が主導となってこの高校の学習指針を作り上げたという噂すらあるらしい。そのおかげで、去年の進学実績は鰻登りに改善したんだとか。


(こいつの姉さんってやっぱとんでもない奴だよな)


と、世界史の善悪二元論がうんたらかんたらを聞きながら隣に目をやると、授業なんてお構いなしにパソコンで恐らく初回の血戦相手のリストを作っている大原女が目に入った。


(やっぱり黙ってると最高に可愛いのだがな)


と、参考書を解き切った俺が見ているとそれに気づいたのか大原女がこちらを見てくる。


「な、なによ」


不機嫌モードが若干継続してるらしい大原女が作業を中断してこちらに尋ねる。


「いや、順調なのかとね」


「あんたはフランチャイズ店に来る本部のお偉いさんなの?」


なかなかキレのあるツッコミをする大原女。


「まあ、そうね。なんせ負けたら一か月の部活停止になるんだから慎重に越したことは無いわ」


「え、そうなのか」


「あんた、校則昨日見たんじゃないの」


「うん、あったような気がする」


「適当すぎよ」


静かに笑う大原女。心臓に悪い。しかし今はそんな事より一か月の部活停止のほうが重要だ。


負けたら部を抜けられるだけでなくて万が一こいつが食い下がっても、一か月は何もできないのだ。


(お得すぎる…)


「手、抜いたら駄目だからね。私、分かるから」


作業を再開した大原女が釘を刺す。


(どうせ俺をビビらすためのほら吹きだろう)


「俺がする訳ないだろう」


「したら、スマホ」


「………」


その一言で俺は全力でやらざるを得なくなった。やはり悪魔だ。


「昼は私、用があるから一人で過ごしなさい」


用が無い場合はこいつと過ごすのかとか友達がいないと思われているのかと考え、俺が反論しようとした瞬間、


「そこの二人、授業中です。静かにしてください」


と、学級長である明星葵の澄み渡る声が響くのであった。教室ではまた、ヒソヒソと噂をする声が聞こえた。その声に少し不快になり、俺は、ラノベを片手に二次元の世界に入り込んだ。


  


 十二時過ぎに授業が終わり、俺は豪と圭の三人で食堂に行き、食後に外をプラプラ散歩をしていた。南中高度が最大になり紫外線が肌を刺す。しかし春の紫外線は機嫌が良いので心地良い。


「うむ、なかなかの味だったな。我が絶舌ぜつぜつも喜んでいたぞ」


相変わらず何を言ってるか分からず舌を出す圭に、


「あの食堂はどのくらいの人間が入れるんだ?一万人ぐらいは入れそうじゃないか?」


と馬鹿丸出しの発言をする豪。俺には二人も友達がいるのだ。誇っていいだろう。


こいつらが難関らしいここを突破したのが不思議でならないが、まあどうでも良いか。


「おい、なにか、鳥がざわめいていないか?我の神耳しんじが囁いているぞ」


周囲を警戒するように見渡す圭。幻聴が聞こえるなんてもうこいつも手遅れかも知れない。 


「確かにあっちの方に人が集まってる気がするぞ!イベントか?」


集団幻覚にかかったと思って一瞬焦ったが、どうやら騒ぎがあるのは本当らしい。


「興味ないからもd」


「行くぞ!歩!お祭りだ!」


「うむ。天が囁いている」


バカ二人に手を引かれて強制的にグラウンドの方に連れていかれた俺は、異様な光景を目にした。




 (竹馬とセグウェイと一輪車…?)


 三つの移動手段に乗って男女三人がグラウンドの200メートルトラックで競争しあってた。それを取り巻く観客たちもとても盛り上がっているようだ。しかもあそこ、なんか賭けしてないか?それすらも許されるのか。


「これはいったい何なんだよ」


二人に尋ねたが返事は無い。よく見ると観客の中に混ざり応援していた。とんでもない適応力だ。どこからその力は湧いてくるんだ。


呆れていると、竹馬に乗った五分刈りのいかつい男の咆哮が聞こえる。どうやら勝ったみたいだ。皆が集まっている。胴上げまでするのか。


(図書室にでも行くか)


と本棟に戻ろうとすると、急に視界が暗転し、金木犀の芳醇な香りが俺を強制的にその場に釘付けにさせた。


ついったしてる@suiren0402desu

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