{第15話} 協力者X
凌三高校校則
其の五、その他学校の運営は生徒会を中心として、それに連なる会が行う。会と名の付くものは決闘の対象外とし、学校生活に関する請願への許認可権は生徒会に帰属す
翌朝。昨晩の小雨の影響か、鏡のような雨粒が町全体を覆い、普段より彩度が幾分か上がって見えるようだった。世界が、綺麗であろうと努めているような、そんな気さえするほどに。
時刻は七時五十分。覚醒しきれない頭で俺は大原女の家に向かっていた。
(時間には余裕があるな)
軽快に飛ばし、五分前には大原女の家に着いた。遅刻をしたら何されるか分かったものでは無いからだ。
(ん?あいつ、何してるんだ?)
大原女が住むマンションの前で何やらスマホで自撮り?をしながら髪を直している大原女。準備する時間が無かったのだろうか。真ん前からの俺の接近にも気づかずに呑気なものだ。
「おい、なにしてんだよ。行くぞ」
俺は大原女に目もくれずこいつに合わせて自転車を降りて学校に向かおうとする。
「あ!あんた居たなら言いなさいよ!」
小走りで俺の隣に来る大原女。
「お前、朝時間が無いならもう少し遅くてもよかっただろ」
前髪を下ろしている大原女に俺は文句を言う。
「ちょ、違うわよ!私は十時に寝て六時に起きてるのよ?今のは、その、たまたま風で髪が変になっちゃったから直しただけで」
大原女の必死の反論。
「その生活習慣は、背を伸ばすたm、いや、なんでもない!」
ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ
回らない頭で余計な失言をしてしまう俺と、ツインテールをDNAのように交差させながらこちらに迫る大原女。
(本気でまずい…)
パターンCの観測に驚いてる場合じゃない俺は、適当に褒める作戦を開始。ラノベではこれがツンデレキャラに効いていた。
「そのー、お前、今日は前髪下ろしてるのな。可愛くていいと思うぞ!」
俺は距離をとりつつ早口で口をつく。
歩みを止める大原女。急に後ろを向きしゃがみ込む。
「お、おいどうしたんだよ」
「あ、あんた。本気でそう思ってる?」
(前髪のことか?)
「あ、ああだからあんま怒らずにな」
そう答えた途端、一気に大原女の怒気領域が消える。そしてこちらに顔を向けずに歩き出した。
(わ、分からん。これはもう怒ってないのか?)
そう思い顔を見ようと試みるが、絶対にこちらには向けない。危害を加えられないなら良いかと、俺も隣で歩みを始める。
「昨日のメッセージはなんだったんだよ」
「昨日あんたが送ってきた校則、“単一の部に所属する者が生徒の過半数を占める場合、頭取と部長の合意の上、二陣営での一騎打ちも可能とす”て部分が少なくとも私が入学するまで無かったのよ」
「どういうことだ?」
いつもならその綺麗な目で俺の目を見ながら話す大原女が、相変わらずそっぽを向いて話し始める。
「つまりね、校則審査会を経てなされるはずの校則の追加が、それを通さずに行われた。これが意味することは何か分かる?」
俺に振る大原女。こいつはなぜか先生ぶって他者に結論を振る癖があるんだよな。
「それを出来る人がただやったんじゃねえの」
「二十九点よ、歩」
「地味に赤点にするのやめろよ。じゃあお前はどう考えたんだ」
「あんた、私にこの学校をどうやって壊すのかって言ってきたわよね」
「ああ、お前がノープランで驚いたな」
「そう、正直に言うと、私もどうすればいいのか具体的なプランがある訳じゃなかったの。なのにこの項目が、私が入学してから追加された。都合が良すぎるとは思わないかしら?」
大原女の推論を聞く俺の脳裏には、すぐにこいつの姉さんの事が思い浮かんだ。その俺の考えを見透かしたように大原女が発言する。
「姉では、ないはずよ。昨日のCCCとの騒動で誰か権力を持った私の事情を知っているかもしれない、姉に近いけど姉に忠義がある訳ではない人物だと私は踏んでるわ」
「その線も、考えられるな」
「ええ」
しばしの沈黙。姉が関係していることについて語るこいつの目はひどく沈んでいて、普段の輝きを失っていた。だが、こいつは切り替えの鬼だ。
「まあなんにせよ、これではっきりしたわね。あたしらは血戦で勝って勝って勝ちまくって、全校生徒の半分、百八十人を革命結社の部に入れさせてしまえば姉と直接対決が出来るってことよ!頑張るわよ!歩!」
「俺はまだ正式に手伝う訳ではないけどな」
これは、言っとかなければ駄目だろう。今でも俺は、平穏な暮らしを望み続けている。
「そこは理解しているわ。だけどあんたには、上手く言えないけど運命を感じたの」
大原女は、そらし続けていた顔をこちらに向け、ライフルのようにまっすぐ、俺を打ち抜く。
(ほんと、ずるい奴だよなこいつは。こいつの数々の不条理も、この目を見るだけで、なぜか許せてしまうんだ)
今度は俺が目を逸らしながら
「おだてても無駄だぞ。負けたらこの関係も終わりだ」
「今はそれでも良いわ。でもあんたはね、絶対に最後は私の隣にいるはずよ」
「何を根拠に…」
俺の言葉を無視して大原女は走り出す。
「お、おい!」
「とりあえず私が最初に血戦をする部を見つけるから、あんたは今日帰っても良いわよ。手伝いたいなら、手伝ってもいいけど」
大原女からの神のような申し入れ。受け入れない手は無い。
「いや、もちろん帰る。一人で頑張れよ」
「…あんたならそう言うと思ったわ」
なぜか不機嫌になる大原女。
そのまま大原女はこっちを振り返らず、走り去ってしまった。
ついったしてる@suiren0402desu
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