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隣の席の目堂さんは髪の毛に蛇を飼っている ―そして僕はトマトジュースを飲む日傘男子―  作者: ひゐ
第二話 僕しか知らない彼女のこと(知ろうと思ったわけではない)
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第二話(02) ご近所怪異


 * * *



 教室に戻って、目堂さんから預かったノートをとりあえず確認する。受け取ってしまったものは仕方がない。


 ぱらぱらめくれば、丁寧な字がページに綺麗に並んでいる。写真が貼ってあったり、絵も描いてあったりするが……目堂さんは絵があまり得意ではないらしい。


「犬……ってよりも……いや何の動物かわかんないよこれ」


 手足はぐにゃぐにゃ、目はどこを見ているのかわからない。頭ばかりが大きい『犬』の絵に、僕は目を据わらせる。

 絵に関してはさておき、良く調べてある。隣町のそのまた隣町まで足を延ばしたこともあるらしい。行ける場所は行ってみる、というスタンスで調査してきたみたいだ。


 こんなことがまとめられたノートが、十数冊……。ふと、昨日泣きじゃくっていた目堂さんを、思い出してしまう。

 目堂さんは、本当に必死で、できる限りのことを尽くして仲間を探していたんだ。


 ……でも、これに僕が付き合う理由は?

 あんまり変なことして目立つと、正体がばれるのでは? さっきだって、ちょっと目立ってしまった。もし目立ちすぎて、何かのきっかけで正体がばれたのなら――。


 ――幼い頃に見た、吸血鬼の映画を思い出す。憤る人間達。当たり前だ、吸血鬼が人を喰い殺したのだから。だから吸血鬼は人々に恐れられ、同時に恨まれ、果てに日光の下に連れ出されて……。


 退治という名目で、殺された。

 悪い奴を殺すのは「殺害」と言わない。「退治」とか「討伐」とか、そういう呼び方で、殺される。


 我に返って頭を振る……冷静に考えろ、目堂さんは「危ない」。何が危ないって、ほっておくと誰かに正体がばれるかもしれない。


 もし目堂さんの正体が人間にばれたら、僕に飛び火する可能性はないか?

 ならば僕が彼女を見張ると同時に、見守らないと。僕自身を守るためにも。


 あと、目堂さんは普通に可愛いし……。


「校庭でいちゃついてた人、だ~れだ!」


 突然背後から声がする。考え事をしていた僕は、驚いて跳び上がった。けれども聞きなれた声だったから、溜息を吐いて振り返る。


 男子生徒がそこにいた。茶髪は癖があるらしく、よく跳ねている。髪と同じ色の瞳は丸っこくて大きい。人懐こそうな印象がある。実際に彼は人懐こくて、性格も明るくて、よく笑っているタイプだった。


 井伊澄醍(いいすだい)。僕の友達。賑やかだけど、悪くない奴。


「おうおおう、どしたの急に~目堂さんと仲良くなっちゃって~くぅ~抜け駆け?」


 一年の時も同じクラスで、二年になっても同じクラスだった井伊は、動きがいつも大げさだ。腰に手を当てて仁王立ちしたかと思えば、いやらしい笑みを浮かべる。


「見てたのかぁ……? そういうのじゃないし」

「校庭にいましたぁ。いやぁまさかキューがそんな男だったとは……」


 悪者みたいな顔をして、井伊は眉毛を動かした。まさか井伊に見られていたとは気付けなかった。校庭には、いないように思えたけれども。

 と、井伊はずいっ、と。


「で、そのノートなに? 新しい趣味?」

「あっ、これは、その……勝手に覗くなよ!」

「お~……もしかして、お化けとか妖怪とかUMAとか探しちゃう系? 『狐月山(こげつやま)の迷い道』ねぇ……」


 僕は慌ててノートを閉じようとしたものの、その言葉にページに視線を向けた。確かに『狐月山の迷い道』とタイトルがついている。


 これはこの町では有名な伝説だ。町のすぐ横に「狐月山(こげつやま)」という小さな山があるのだけども、そこは非常に迷いやすい山で、だから妖怪の仕業だ、妖怪が住んでいるんだ、と大昔から言われているらしい。


 目堂さんはここの調査にも行ったらしい……が、中断したようだ。『立ち入り禁止のため未調査』。意外に常識がある。


「俺も昔、行ってみたことあるよぉ、肝試しで。狐に化かされるって話だろ」

「……立ち入り禁止じゃないの?」

「看板あるけど止める人いないし?」


 実際、狐月山は、肝試しスポットとして人気だ。小学生の頃、クラスメイト何人かが行ってきた、と盛り上がっていたのを憶えている。みんなは彼らの話に興味津々だった……僕も気になったけれども、聞きに行かなかった。僕は空気でいたかったから。


 僕は……冒険の話に関わりたくなかったし、冒険そのものをする気もなかった。

 でも、耳はいいから、楽しそうな話が、どうしても聞こえて。


「迷った時にどうしたらいいか、知ってるか?」


 いつの間にか正面に回っていた井伊が、似合わずシリアスな顔をする。


「そんなのあるの? ていうか、山道が入り組んでるから迷子になるってだけじゃないの?」

「話によるとぉ、目を瞑って、辺りに注意するといいんだってさ」


 井伊は人差し指を立て、自分の眉間に持って行った。瞼を閉じる。


「心の目で見るって奴さ!」

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