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隣の席の目堂さんは髪の毛に蛇を飼っている ―そして僕はトマトジュースを飲む日傘男子―  作者: ひゐ
第四話 廃墟探索って趣味は興味深いけどデートってどうなの?
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第四話(02) ママ・ドゥーサ


 * * *



 目堂さんの家は、別に魔女の屋敷という感じもなく、ごくごく普通の一軒家だった。けれども僕は、インターホンを押そうと指を伸ばして、そこで止まっていた。指が震えている……いやだって、改めて考えてみたらおかしくないか? えっ、僕、目堂さんの家に泊まるの? 母さんや父さんには「友達に家に泊まる」とだけ言ってきたけど、えっ、女の子の家だよ?


 いつまでも僕が押さないでいると、約束の時間が過ぎていたからだろう。


「あっ、キューくんっ! なんだ、ちょうどついたところだったのね、家の場所、わかんないのかと思った! ほらあがって!」

「あっ、あっ、目堂さん……」


 がちゃん、とドアが開いて、目堂さんが出てきた。制服姿でもなく、私服のゴスロリ風なものでもなく、ラフな格好だった。蛇も隠れることなく、にょろにょろ出ている。目堂さんは僕の腕を引っ張れば、そのまま家の中に引き込んだ……ハーブみたいな、心地のいい匂いがする。家の中は綺麗で、僕の家と変わりない。ちょっとかわいいものが目立つくらいだ。


「ママ! この子! この子が吸血鬼の子! すごくない? 学校にいたんだよ!」

「あら~、早織ちゃんのお友達ね、待っていたわよ……」


 キッチンに連れていかれる。コンロの前に、女の人が立っていて振り返る……目堂さんのお母さんだ。顔立ちは目堂さんによく似てる。お母さんなのに、ちょっと少女っぽく見える気がした。若くて綺麗。可愛いエプロンをつけて、手にはお玉を持っていた。


 目堂さんは僕の顔に手を伸ばしたかと思えば、前髪を上げた。僕の吸血鬼の目が露わになる。


「は、はじめ、まして……影山久太郎、です……吸血鬼の、末裔、です……」

「う~わぁ~! 本当に『普通の人じゃない人』ね! いつも早織がお世話になってますぅ。早織の母です」


 目堂さんのお母さんは、笑うと幼く見える。でも髪型だけは大人っぽい。本当はすごく長いんだろう黒い髪を、何だか複雑な形にまとめている。編み込むような形で、艶のある黒いリボンが中に見える。と、それがもぞもぞ動いて――髪の毛の中から、蛇の頭が二つが出てくる。ちろちろ、舌を出す。


「あっ……蛇」

「私もメドゥーサの末裔なのよぉ……早織ちゃんの言ってたこと、本当だったのねぇ。私や早織ちゃん以外にも、こういう人がいるって……」

「んもー! ママ、あたし何度も言ったじゃん! 本当だって!」

「ごめんねぇ、ママも見たことなかったから……でも、疑ってたわけじゃないのよぉ」


 口を尖らせた目堂さんに、目堂さんのお母さんは申し訳なさそうに笑った……なんだかとっても仲がよさそうに見える。ちょっと、面白い。

 目堂さんのお母さんは、コンロへ向き直ると鍋をかき混ぜ始める。おいしそうな匂いがする、何の料理だろう?


「久太郎くぅん、ゆっくりしていってちょうだいねぇ……パパにも紹介したかったけど、今日は残業らしいから、明日の朝に会って欲しいわぁ」

「あっ、そうそう、キューくん、念のため、トマトジュース買ってあるから、必要になったら言ってね!」

「そ、そんなことまで、わざわざ……」

「ほら……ってあれっ?」


 ぱかっ、と目堂さんが冷蔵庫を開ければ、そこにはもうコップ一杯分残っているか残っていないかの、トマトジュースのペットボトルがあった。


「ママ飲んじゃった?」

「ママは飲まないわよぉ? お友達のために買ってきたんだから……」

「ということは――愛佳(あいか)!」


 目堂さんの声が響くと同時に、物陰で何かが動いたのを、僕は見た。誰かが廊下に隠れている。

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