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連盟大会議②

 会議は些細な議題から始まり、その後に難題が待っている。この日の難題は、あまりにも多岐に肥大化した商工ギルドを分散分業したいと云うメランの申し出だった。


 この世界の商工ギルドは商売に関わる事業主達を支えるギルドである。農林、水産、工業、銀行禁輸、薬師ギルドなどを管理しているのも連盟商工ギルドだ。

 ただ、工業に関しては鍛冶ギルドや錬金ギルドも絡んでいる為そんなに負担はないらしい。同様に薬師ギルドも錬金ギルドや魔法ギルドが絡んでいるのだが、その専門性に問題があり、ただでさえ役割分担の多い商工ギルドは薬師ギルドを支えきれなくなってきているそうだ。


「以上の事を踏まえ、出来れば薬師ギルドを商工ギルドから独立させたいと思っているのだが、ギルド議員及び各ギルド支部長達の意見も聞きたい」

 メランは資料を投影するモニターの周囲から椅子を降ろし、元の位置に戻ると深く溜息を吐いていた。


 スケア帝国の進軍によって各国はダメージを受けた。それは精神的にも政治的にもそうであっただろうが、身体にダメージを受けた者は相当に多い。その為、医療に関わる者達の多くがこの2~3週間寝ずに働いていた。そしてそれを裏で支えていたのは商工ギルドだった。


 しかし、商工ギルドが支えているのは薬師ギルドだけではない。爆撃によって田や畑、工場なども被災しており、海も少なからず汚染されてしまった。そんな状況下である為、薬師ギルドを商工ギルドが支えきる事は困難であると云う事だった。




 メランの溜息が伝染したかのように、会議場のあちこちから溜息が聞こえる。どうやら薬師ギルド独立の議案は通りそうだ。

 そんな中、スッと一人の支部長の手が挙がる。


「薬師ギルド独立の件は構いませんが、その現在最も多忙を極めるであろう責任者には、どなたを推挙されるおつもりか?」

 挙手した支部長の視線が連盟議員達の周辺を行ったり来たりすると、それに合わせて議員達の視線が泳いだ。そりゃー、そんな現在絶賛多忙中のギルドの責任者なんて、誰も嫌だろうな。


 メランはコホンと軽く咳払いをすると、会議場の出入り口に視線を向けた。


「一応、今まで連盟商工ギルド薬師部の責任者をその椅子に据える事も考えたのだが、先頃ビイト様のあとにその適任者が降臨なされている。その方にお任せしようと思っておる」

 え、まさか…


「ヒムカイ博士、どうぞご入室ください」


 ニコニコしながら入室してきたセレナはいつもどおりの白衣姿ではあったが、その高身長とスタイルの良さから、妙な威厳を放っていた。そして伊達メガネが妙な説得感を出している。


「皆様、私が只今ご紹介に預かりました、セレナ・ヒムカイであります」


「おお、あれが噂の博士か」

「なんたる威厳」

「六番目に新設されるギルド議長にふさわしい」


 …確かに向いてはいるだろう。なにせ俺と同じブラックな環境に居たんだからな。


「皆どうであろうか?新たな議長として、これほどの人材はいるであろうか?否!このお方以外におるまい」

 メランが聴衆を煽るようにすると、万雷の拍手が会議場に鳴り響いた。俺はそれを少し呆れたような表情で見つめていたのだった。そしてこれで、第6のギルドとその議長の誕生は決定した。





「で、その薬師ギルドの部屋を増設すればいいんだな?」

「そうそう。あと、今ある私の研究棟も多少広げてよ」

「わかった…。ただし、こうなったからには他のギルド同様に家賃を徴収するからな」

「いいわよーん。今最も多忙な職種らしいから、どうにでもなるしー」

「てかセレナ、お前ってば薬品関係に詳しかったっけ?」


「いんや」

 あっけらかんと答えるセレナに、思わず俺は口に入れた酒を吹き出してしまった。


「はあ?!なのに薬師ギルドの議長なんて何を考えてるんだよ」

「別に~、アーカイブを覗けるからどうにでもなるっしょー」


 なんてお気楽なんだ。そんなにブラックな環境がお好みなのか?

 大会議の後、銀翼亭のカウンターでセレナと酒を酌み交わす。俺の目の前には、勿論昼間のうちに注文しておいたガーリックステーキがあり、セレナの前には唐揚げと刺身…完全に呑みの肴だな。


「ビイトさん、いらっしゃい」

 リサが普段着で俺の右隣に座ると、カウンターの向こうのスラフはニヤっとしながらリサにメニューを渡した。

「兄さん、今日もお客さんで賑わってるのにいつまでカウンターで休んでるのよ?」

「いやいや、今日は看板娘が不在なんでね。代わりにビイトの相手をしていただけさ」

「スラフ~~!看板娘ならウチがいるニャー!」

 あ、藪蛇だな。


「すまんすまん!アーニャ怒るなよ~」


 怠惰な店主は、こうして厨房へと退散していった。いくらファシアナが居るとは謂え、サボりすぎだろ。


「おや?そういえばカレンが居ないな?」

 いつもならリサが俺の横に座った途端に暴れだしているんだが、今日はその姿が無い。


「ああ、確かシュテン氏と練兵闘技場で色々実験したい事があるとか言ってたかなぁ」

「セレナさん、では今日は私がビイトさんを独り占めですね!」

「そうはいかないと思うけどねぇ?」


 セレナがそうして視線を入口に向けると、ガヤガヤと入口の方が騒がしくなった。


「ビイト様!それにセレナ博士!私も混ぜて欲しいだわさー!」

「コラ、ルールリ。貴様はもう少し慎ましくは出来んのか!それよりビイト様、例の構造材についてなのですが――」


 今日も気付けば議長連中に取り囲まれ、セレナとルールリの飲み比べやら、議長達の愚痴聞きやら…なんだかんだで俺の環境も、未だにブラックなのかもしれない。


 俺はただ、ゲームのように面白おかしく過ごせれば、それでいいんだけれどね。

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