ホーム⑤
ホームの城内案内の翌日、銀翼亭に結局議長連全員が泊まったので、朝食のあとに送り出しをした。送り出しとは言っても、世界樹の若木の前まで連れて行き、転移の指輪のレクチャーをしただけだったりするが。
メランはパラダイム・テクニカルの本社のある共和国首都へと帰って行った。他の4人も転移して行ったが、大きな企業を持つメランとは違い身が軽いのか、各々の家に荷物を取りに飛んだだけで、午後には戻って来るらしい。
ザスカリ曰く「こちらの方が設備も揃ってますから」との事。そんなわけで、それぞれ常駐させる職員や執事やらメイドやらを選別するのでと寮やら家やらを頼まれた。
…住むのは構わないが、家賃はもらうぞ。
まずは議長連の家を配置。これはスラフの家と俺の家同様に、若木の周辺に設置した。因みに仲間外れにするわけにはいかないので、メランの家も配置している。
その後、少し離れた所に3階建てのアパートを3棟配置した。こちらは規模もそこそこあるのでエレベーター付にしてある。1棟につき30世帯は入れる。
「3棟で90世帯か…店とか必要になるなぁ」
独り言を言いながら操作をしていると、練兵闘技場で訓練をして汗だくのカレンがやって来た。
「お店を配置しても、肝心の店員がいないんじゃ意味なくない?」
それは確かに。
「なら、ドルイドかゴーレムでも配置して店番させればどうよ?」
いつの間にかセレナがクッキーを齧りながら後ろに立っていた。
「それはいいかもしれないが…仕入れとかはどうするんだ?
「生ビールの自動生成機と似たような設備はないの?自動で商品を作って出庫するようなやつ。ここは元々がゲームの中にあった島なんでしょ?」
カレンの言うとおりだ。あったかも知れない。
「ぷにこ、そういう設備ってあったっけ?」
「はい、御座います。ただ、住人が100人を超えないと制作できなかったと思います」
俺の肩の上に座るようにして捜査を見ていたぷにこだったが、立ち上がるとモニター前へと飛び上がり、操作アイコンを眺めている。
「あー…じゃあ議長連中が来てからじゃないと無理か。なら先に港の整備でもするかな」
操作アイコンの中からそれらしき形の物を探すと、軽く指でタッチをする。すると現在の港…飛行艦の発着場が大写しとなった。
「現在はグリフォン1隻を停めるのがやっとの状況ですが、そのままで宜しいのでしょうか?」
「住人以外は港からの出入りにすれば治安も保てるか…」
「はい。それに指輪は希少性を保った方が良いと思えますので、現在渡している人達以外の住人への配布は控えた方がいいかもしれません」
「確かにネ。悪用でもされたらたまったもんじゃないわよネ」
うんうんとカレンが頷きながら言うと、セレナも同意しているようだった。
「そうすると、グリフォンクラスが3隻停まれる規模で――」
「マスター、更に帝国の旗艦クラスが停まれる桟橋を1つ追加した方が、後々良いかもしれません」
「帝国旗艦クラス!?あれって確か全長1,3キロメートルあったんじゃなかったか?」
「はい。今後の拡張も踏まえて必要になるかと思います」
「今後の拡張って…まあそれだけ大きな桟橋があれば、何かの役には立つか…て、そうなると2キロ以上の桟橋かぁ…」
整備ドックまで揃えると、物凄い規模になりそうだ。仕方ない。島の前半分の大きさをもう少し広げよう。
港の整備を始めたら、結局島全体を大きくしてしまった。そこで後ろ半分には主要道だけ作成した。あとで他にも多くの人が住むようならば、家屋は沿道に建てていけばいいだろう。
他には何も安全柵を講じていなかった島の周囲には、城のような外壁を施し、その外壁には幾つかの砲門も設置した。この砲門に関しては世界樹の機能にはなかったので、俺のスキルマスターの能力の一つである『エディットモード』で作成して設置した。モノは、グリフォンに装備されている物と同等のものを複数装備させている。
外壁自体から防御バリアも発生してるし、これで攻防共に強力な要塞だ!!
…ん?あれ?俺は何を目指しているんだ??
「また随分と物々しくなりましたな」
使用人や部下達を連れて戻って来たザスカリの言葉である。…御尤も。やり過ぎたよ。
その代わりと言ってはなんだが、世界樹の周辺を公園化した。ホームの操作パネルは、公園の木々のうちの一つに擬態している。
「馬鹿でしょ?あれこれやってたら、先端から一番奥まで15キロメートルくらいになってるし」
うむむ。カレンの言葉が胸を貫く。
「ビイトに自重しろと云う方が無理なのは、幼馴染のカレンがよく知っている事でしょ?今更じゃないの?」
セレナさん?言い方…。
「ふっほっほ、マスター達は仲が良いですのう」
あ、ホムランもホームに常駐する使用人や職員を連れて来たようだ。バトルハンマーの見間違うほどの大きなハンマーを肩に背負っている。鍛冶ギルドの職員は皆立派な髭を生やしているが、何人かは一応女性らしい。俺には見分ける事は出来ないけれども…。
残りのルールリとシュテンは、完全に日が落ちた頃にようやく到着した。ルールリは使用人達に大量の素材を運び込ませ、シュテンはご自慢の武具を運び込んでいた。
てか、どいつもこいつもフットワーク軽すぎじゃないのか?




